その32 愛だとか恋だとか
先生の目を見た。先生は少し考えるように顎に手を当てた。
「じゃあ、佐々木と付き合いたいのか?」
『付き合う?交際ってことですか?』
「そうだな」
『嬉しいです』
「どんな風に嬉しい?」
・・・どんな風?えっと、佐々木と付き合えたら、佐々木は私にくだらない話をして、それを私が聞いて、佐々木が私を抱きしめて、私が抱き返して、それで、その、キスして・・・。
『体が火照る気がします』
先生はインカメのスマホを私に向けた。私の顔は真っ赤だった。慌てて頬を擦る。
「そうだな。体が火照るんだな。じゃあ、俺とお前が友達だとする。一緒に隣に座って映画を観るとしよう。どう思う?」
『・・・不快です』
「待てゴラ」
先生は悲しそうにスマホをしまった。
「じゃ、佐々木と観るなら?」
・・・ショッピングモールの3階、佐々木が少し遅れてきて、ポップコーンを私が買って、佐々木が幼稚だって笑いながらお金を出そうとして、シアタールームに入って、予告を佐々木の軽口を聴きながらぼんやり眺めて、シアタールームが暗くなって、佐々木も誰も彼もが静かになって、それで、ラブロマンスが始まって、喧嘩するシーンで佐々木をチラっと見たら、佐々木と目が合って、慌てて逸らしあって、それで、キスするシーンで、佐々木の手が伸びてきて、私の手を掴んで、そのまま、映画が終わってエンドロールの最中も離さないで、明るくなったら、佐々木が笑いながらご飯行きましょって言って、私が頷いて、掴んだ手は離さないで近くのフードコートに行って・・・。
「・・・そういうことだ」
『先生』
「なんだ」
『これが、恋ですか?』
「さぁな。少なくとも友情と言うには重すぎるな」




