その3 デート
一応財布の中身を確認してみる。小銭なら結構あるなぁ。
「俺大体1000円くらいならありますよ」
『なんで高校生なのにそれくらいしか持ってないの?』
「いやぁ・・・なんででしょうね」
『ご両親からお小遣いは?』
「貰ってないな。バイトで稼いでます」
『どれくらい働いてるの?』
「週末の両方働いてて大体月7万くらい」
『なのになんで金欠なの?』
「ふっふっふ、俺にもわからん」
『本当に何に使ってるの?』
「煙草だよ。酒と煙草」
『冗談は顔だけにして』
「酷い!」
『言いたくないの?』
「いや、別に服買ったりしてるだけですよ。この前いい靴買っちゃいましたし」
『ふーん』
「まぁ、口座から下ろせば1万くらいはあると思いますから、ATM探してください」
『いいよ。今日は奢るよ』
「マジっすか!」
『うん、無駄足踏ませたし』
「え、俺1番高いの買うタイプですよ」
『本当に食べたいならいいよ』
「やったぁ!」
フードコートに行き、スガキヤのラーメンを買う。山重さんは注文できないから俺が2杯買ってきた。
「はい、お待たせです」
山重さんは手を合わせた。俺も一応いただきますと言う。
「んーやっぱうまいなぁ」
山重さんは何も言わずに黙々と食べてる。おいしいのかどうかは表情からは判別できない。俺はメンマを山重さんの方に入れた。山重さんは首を傾げた。
「や、俺メンマ好きじゃあないんですよね。歯ごたえが嫌いで。あげます」
山重さんはぺこりと頭を下げ、また食べ始めた。
「んじゃ、トレー下げてきますね」
両方のトレーを返し、席に戻る。
『じゃあ、帰ろっか』
「早くない?せっかく遊びに来たんですし遊びましょうよ!遊ばないと損ですよ!」
『じゃあ何するの?』
「なんでもいいですよ!」
『・・・私、友達いたことないから遊ぶってのがよくわかんないの』
「じゃ、案内しますよ!目の前のあれが自動販売機、お隣がゴミ箱、少し離れてあれが休憩用の椅子です!」
また蹴られた。痛い。
「なんで蹴るんですか!案内してるのに!」
『案内じゃあなくて、それは介護だから。失礼しちゃう』
「あはは、ばれましたか。じゃ、ゲーセンか本屋、服屋さんのどこに行きたいですか?」
『本なんて読むの?』
「はい、結構」
『最近読んだ本は?』
「えーっと、ベタですけどハムレットですね」
『・・・1番好きな本は?』
「んー・・・ざんねんないきもの辞典ですね」
『・・・私は本、少しだけ好きだよ』
「少しだけ?」
『うん、暇つぶしになるから』
「じゃあなんで少しだけなんですか?あ!わかった!Z世代だから活字が嫌いなんだ!」
また蹴られた。痛い。
『違う。みんな喋れるからだよ。物語に出てくる無口なキャラって言ったって私みたいに喋れないわけじゃあない。だから暇つぶしとしては好きだけど、好きじゃないな』
「んなこと言われてもなぁ」
『本が好きなら何かいい言葉で慰めてよ』
「や、俺本好きじゃあないですよ」
『え』
「だって山重さんが本嫌いなら、俺も別に嫌いでいっかなって思いましたもん」
山重さんは少し固まってから、また俺の足を踏んだ。痛い。
『じゃあいーや。ゲーセン行こ』
「ゲーセン行ったことあります?」
『ない』
「ぷぷっ」
今度は肩パンされた。あんまり痛くないや。
「じゃ行きましょか。こっちですよ。お箸持たない方」
『私左利き』
「知ったうえで言ってますよ。そんなに俺は馬鹿じゃあない」
箸もスマホも左手で持ってたら誰でも気が付く。山重さんは何かを打とうとスマホの上を指が彷徨ったのち、結局蹴られた。まったく。




