その25 ドリーミーノイズ
心臓がバクバク言ってる。なんで佐々木にあんな油断したところ見せたの、私。深呼吸する。もう1回ドアを開ける。
ポケッド漁っても紙もスマホもない。私は少し迷ったけど佐々木の服を摘み引っ張った。
「・・・随分不用心ですね。俺がいそいそと服脱ぎ出したらどうするつもりなんですか?」
『私の鍛えられた足で蹴りあげるよ』
「ひっ、金的は無しっす!」
佐々木をベッドに座らせ、冷蔵庫から・・・なんもないや。閉める。とりあえずコップに水道水を入れて渡す。・・・絶対間違ってるよね。
「あは、ありがとうございます」
何と言わずコップの水を飲みほした。
「んで、ご飯は食べました?」
『まだだよ』
佐々木は立ち上がり、カーテンを開けた。
「どうします?風邪ひくレベルの雨ですけど食べに行きます?コンビニにします?」
『コンビニ』
コンビニで適当にお弁当を1つ買う。飲み物はりんごジュースにしよう。佐々木は缶コーヒーと菓子パンを買ってる。
『それだけなの?』
「あはは、カップ麺もう買ってあるんですよ」
再度部屋に戻り、一緒に食べる。おいしい。
「そー言えば、山重さんって友達がいないって言ってましたよね?」
むっとしてちょっと睨む。
「俺って、友達ですか?」
・・・うん、友達だよ。友達だよ。でも、友達って君に言われると、ザワつく。私は頷いた。
「よかった。しこりが取れましたよ。最近肩こりが酷くてね」
なーに言ってんだか。
「山重さんに話しかける人って居ないんですか?」
箸を置き、スマホを手に取る。不器用だから右手でスマホ触りながら食事はできない。
『いないよ。自己紹介したことないし』
「たしかに、自己紹介ってどうしてたんです?」
『先生は私が話せないこと知ってるから、私が伝えて欲しいことを紙に書いて、先生が代わりに言ってくれる』
「へー」
・・・興味無さそうな顔しないでよ。君が聞いた癖に。
『君みたいに遠慮せず話しかけてくる人は、いなかったな』
「あはは。知り合いに事故で片足を無くした人がいるんですよ。そいつは事ある毎に気を遣うなって言ってたんでね」
・・・君は知り合いが多いんだね。障碍者の友達ってのも、私が初めてじゃあないんだね。
「もちろん、気を遣ってほしいって言ってくれたら使いますよ」
『・・・うん、使ってほしいかな』
「え」
・・・私さ、君の唯一無二でありたいの。気をつけてね。気を遣ってね。スマホを置き、また箸を持った。




