その10 昼食
ぶっかって来た女の子が立ち去ったのを確認したから舌打ちをする。あーあ。謝ってきたから許したけど何も言わなかったら普通にぶん殴ってるからな。まぁいいや。制服が少しだけコーヒー臭くなっただけだし、いっか。
俺は缶を捨て、もう1つ買う。甘いのは嫌いだからコーヒーはブラック。微糖が甘くなかったこととかないからな。マジで微糖の微の漢字について辞書を引き直して欲しい。
ぼんやりしてたら山重さんがやってきた。
「どもー」
山重さんは手をふにゃふにゃとしてきた。俺は調べたばっかの手話でこんにちはする。山重さんは驚いたように紙にペンで
『なんで知ってるの?』
と書いた。うーん達筆がすぎるな。
「面白そうだからこれだけ覚えたんですよ」
山重は豆鉄砲を食らったというか、飛んできた豆が口にちょうど入ったような顔をした。
「したら食べましょ」
山重さんは頷き、大きめのお弁当箱を開けた。
「おいしそうですね。手作り?」
首を横に振られた。
「お母さんですか」
頷かれた。凄いな。朝練あるから朝早いはずなのによく何品も作れるな。
山重は首を傾げながら俺を指さした。続いて何かを食べるジェスチャーをした。うーん、なにも食べないのかってことかな?
「ああ、俺は金欠で昼ご飯買えないんですよ」
胡乱そうに見られた。信じてくれよー。
「・・・あ、コーヒーら必要経費っす」
呆れたようにラッチパックを手渡された。
「え、いいんすか?」
よさそうなんで有難くいただく・・・いちごかぁ。嫌いなんよな。コーヒーで流し込む。
「今日は放課後練習あるんです?」
頷かれた・・・この人、噛んでる?あんまりにも食べんの早いけど。
「食べるのはやいですねー」
俺も慌てて欠片を押し込む。山重さんは紙に
『教室で1人で食べるのは寂しいからね』
「物悲しいですよねぇ」
適当に同調。
「したらなんか話題とかあります?」
少し考えた後、山重さんは何か書いて慌てて紙をくしゃくしゃにした。
「なーにしてんすか」
ゴミ箱に投げられた紙屑をキャッチ。そのまますぐさま開く。
「・・・恋バナがしたいんですか」
真っ赤になった山重さんが足を勢いよく踏み抜いた。ほんまに痛い。




