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第15話 誘拐事件(3)

 ――カン、カン、カン!


 鏡の向こうで、まどろみにつこうとしていた村に、けたたましい鐘の音が叩き込まれる。




 結界に引っかかったせいだろう。

 俺たちを野党か、モンスターだと勘違いしているに違いない。

 だとしたら悪いことしたな。




「大変だ大変だ!」


「皆起きろ、来る、奴が来る!」



 と、どこか他人事のように村の様子を見ていたのだが、村人たちの鬼気迫る表情を見て、改めて様子がおかしいことに気が付いた。



 何かを恐れるように、せかされるように、一言でいうならば彼らには余裕がなかった。



(この様子……、明らかに特定の誰かというか、明確な脅威を警戒しているよな)


(そのようね)


(誘拐犯がこの村、もしくはその周辺を根城にしていることは分かっている。

 そういうことだな……)


 人さらいをするような連中だ。

 仮の拠点内で問題をおこしたとしても不思議でも何でもない。


(人さらいのせいで大変なことになっているというのなら、急がないと)


 俺は気合を入れなおす。




「クロード様が、クロード様がやってくる!」


「あのわがまま息子がやってくる!」


「子どもを女を逃がせ」


「本当なのか」


「間違いない、高い金をかけて生み出したクロード様警報が作動したんだから」


「クソ、なんてことだ!」




「「…………」」



 どうしよう、気まずい。


(おっと、みすったぁ! もう私ったら、変な場面移しちゃってぇ)



 棒読み口調で、アルテは可愛らしく舌を出し、鏡の映像を消した。


 こいつにさえ、気を使われたは……。

 俺の膝がぶるぶると震える。

はどうしようもなく震えていた。

 振動を馬が不快に思ったのか、いなないた。思わずごめんと俺は口にする。





「なんと!

 村から人が消えている!

 一体何があったというのだ!」



 ヴィルヘルムさんが誰もいない村を見て叫んだ。




「まさか、本当に事件があったのか……」


「だが、シャルティ様がいなくなるなど珍しいことでは」


「この様子を見ろ。明らかにおかしいだろ」



 衛兵たちは、シャルティが消えたのとこの村の異常な光景を結び付け警戒心を高めた。


 その原因は誘拐犯でも魔物でもなく、俺がここに近づいたからなんだけどねぇ。


 ……ごめんなさい。



 素直に事情を言いたい、けど、言えるか!




「執事長。子供を一人発見しました」



 そんな中、衛兵の一人が逃げ遅れた村人を発見した。



 避難する中置いて行かれた哀れな子だ。

 本来ならば、悲しむべきなのだろうが、この村の中唯一俺を恐れなかった子だ。

 俺としては喜ぶべきなので、どうにも感情がバグる。




「村人たちは……(チラッ)、少し祭りというか、事情があって外に出ている」




 村の少年ケビンは、チラチラとこちらを見てくる。

 事情が事情だし仕方がないよな。

 本当のことなんて言えるはずもない。




 まだ、人形から反応はない。

 つまり、誘拐犯は同じ位置にとどまっている。

 しかし、その状況がいったいいつまで続くのか分かったものではない。



 速く、結界がある場所もしくは、不審者の存在を聞き出さねば。



 ――もう、こいつを脅して聞き出すか。


 一瞬、乱暴な手段が頭によぎった。

 すぐに、ぶんぶんと首を横に振る。



 村人たちが人さらいについて知っているというのは単なる俺の希望だ。

 知っている保証などどこにもない。

 分かっているのも、この辺りにいる程度なのだ。




「村に、誘拐犯がいるかもしれない。

 どこかに避難できそうな場所、隠れそうな場所はないか。

 できれば周辺の地図が欲しいんだが……」



「まぁ、それくらいなら」



 守衛たちにはシャルティへのお仕置きのためといったが、事情を知らないケビンには正直に言わないと動いてくれないだろうな。



 お願いすれば、ケビンは木の枝で地面に村の地図を描いてくれた。



「なるほど、湖に、森。野営にうってつけの場所が多いな」


 ふむふむと、出来上がっていく地図を眺めていく。

 そして、最後に描いたものを見て、俺は目を丸くした。



 なにせ、地図の端っこに、方角を表す方位マークがあるのだ。

 ご丁寧に、北を表すNマークまでついている。




 2人で話をしたい。

 そういって、俺はこの少年ケビンと共に彼の家の中に入った。



「もしかして転生者か!」




「ああ、その通りじゃよ」


 日本語で話しかければ、向こうも日本語を返してくれた。

 この言葉使いから考えるに、かなり年行ってそうだな。

 それなのに、俺より1つか2つ上の年頃子子供になった。

 それを当たりと捉えるのか、外れと捉えるかは人それぞれだろう。




「そっちの事情は知っている、悪徳貴族であるクロードから逃げるためにここら一体から逃げ出したんだよな」


「なぜ知っていると言いたいが、まぁ、それについては推理するだけ無駄か」



 まぁ、超能力がある世界で推理なんて成り立たないしな。



「つまり、この村の避難所を教えろってことか?」


「ああ。いるかどうかは分からないが、ここらで結界をはったか、結界をはった場所にいるかの二択なんだよ」


「なら、一つ欲しいものがある」


「分かった、分かった」


 それがいったいどんなものかはわからない。

 けど時間はない。

 自分にできることなら、なんでも用意すると約束する。




「とはいっても、魔力反応が途切れる場所など……、教会くらいだな。そこについても、皆が避難しに向かったから……」



 そこで俺たちは顔を見合わせた。




「誘拐犯たちは結界が張られた場所に潜伏している可能性が高い」


「そして、今ここの住人たちはその結界が張られた場所に皆で向かった」


 やばい!

 そこを拠点としていたら、最悪死人が出る。



「もうついていると思うか」


「どうじゃろう。真夜中の移動、ばれないように足となる馬も置いている。今からいそいで向かえば、あるいは……」



 俺は黙って話を聞いていたアルテにお願いして、教会の映像を映し出してもらった。

 すると、いた。

 シャルティと誘拐犯はそこを拠点としていたのだ。





 話がまとまると、俺たちは大きな音を立てて、家の扉を押しのけた。



「こいつが妖しい人影を見たそうだ!」


 俺たちは昼間にケインがそいつらを見たという設定にした。




 全力で馬を飛ばす。

 すると、俺の体重が軽いのと、領主の息子ということで、名馬を渡されているせいもあってか、一人先行する形になった。



 本当なら、皆を待った方がいいのだが、時間がない。


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