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第13話 誘拐事件(1)

 こうして俺は可愛らしい、呪いの品を受けとった。



 この品の安全な保管場所を考えないといけないのと、もうすぐ昼だということもあって、俺は下山を決めた。





「あいつは……」


 一人寂しく、山道を歩いていると、聞こえるはずのない足音が耳に届いた。



 もしかしたら、魔獣の類かもしれない。

 俺はあわてて木の陰に身を隠した。



 本当に魔獣だったらどうするか。

 その想定を5つか6つ組み立てていたところ、現れたのはある意味で膜うよりも厄介な存在だった。



「あれは確か……」



 シャルティおつきの執事見習だ。

 名前は忘れた。



山道を歩く、そいつは明らかに挙動不審だった。


 時に地面を這い、きょろきょろと周囲を見渡し、クンクンと鼻を鳴らす。



 しかも、その手に握られているのは……。



「まさか、シャルティのパンツ!」


 以前、偶然、そう本当に偶然、着替え中のシャルティの部屋に突撃し、着がえを目撃したから間違いない。




「へ、変態だぁ!」



 どうする、ここでとっちめるか……?

 そしたら確実に秘密基地の場所がばれる。

 だが、このやばいのを野放しにするほうが危険ではないだろうか。


 いや、でも……

 あんな変態と関わりたくない。ついでに、顔を覚えられるのも怖いし。

 シャルティを見捨てるべきか。


 いや、気絶だけさせて、俺の権力で家から追い出すべきか……。

 これまでコツコツと稼いだ使用人からの好感度が吹き飛ぶが……。




 もう仕方ない。

 後ろから殴りつけ、気絶させるべく動いたのだが……。



 そいつが手にもっているものを見て、止まった。

 男の手には紫色の花が握られていたからだ。




 俺はフリーズした。

 その間も、刻一刻と男とシャルティに近づいているというのにだ。



 もしかして、これって、そういうこと。

 だとしたら、俺は止めていいのか。


 いやでも、シャルティが危険かもしれないし……。



 そんな時だった。




「どういうことだ」



 男が道に迷った。

 確かあそこは、俺が机を抱えて歩いていたせいで、どこか通りやすい場所がないかとぐるぐる回ったポイントだ。



 なるほど、あいつは鼻でシャルティを追っているんだな。

 だから、ここでは追跡に苦労している、と。



 最終的に、その使用人は荷物をいったん置いた。



 これはチャンスだ。

 手に持つをチェックして、危険物があれば天誅をくらわしてやる。



 身を低くして、俺はカバンの中身を覗き見た。




「こ、これは……!」



 見て驚愕した。

 そこにあったのは純愛物のエロ本ではないか!



 頑張れよ、兄弟。

 俺はグッドサインを出して、この使用人の恋路を応援することを決めた。


 後、勝手にエロ本読んでごめん。




 夕食時。

 俺はマナー講師の指導の下、絶対に必要ないだろと思える煩雑な手順を守り、食事を口にしていた。



「おい、シャルティはまだか」


 それでも、もう我慢できなかった。

 あえて、食事中は静かにという、前世でも守っていたマナーを破った。




「そうですが」


 明らかな異常事態だというのに、これである。

 この家の娘が、昼間っから行方不明なんだよ!




「そういえば……、シャルティのおつきの執事を見たか?」



 ならば周りをと思い、恐らくは一緒にいる執事見習について聞く。



「ゴドーですか。見ておりませんが」



 どうやら、2人はまだ屋敷に返ってきてないらしい。

 昼食時は偶然だと思った、しかし、夕食時になってもいないとなると、何かあったのではと考えてしまう。



 もしかしてだが、本当に告白したのか?


 その結果として、話が長引いているだけならいいのだが、もし、あいつも本気なら……。


 俺たちは転生者だ。

 シャルティが話しにくそうにしているから、前世のことは知らない。


 それでも、その内面が年不相応であることに間違いはない。



 つまり、シャルティが前世ですでに大人の階段を登っていたとしても、おかしなところはないわけで……。



 もしも、俺が思う通りの状況になっていたら……。



「あの、ロリコンめ!」



 受け入れようとしたけど、やっぱり無理だった。



「そこ、食事中になんてことを言うのですか!」


「すいません」



 いかん、つい怒りの声が出た。





「シャルティを探しに行かないのか?」



 昼から今まで姿を見せていないのだ。

 もうすでに捜索に向かっているかもしれないな。


 と、思っていたのに、皆が顔を見合わせて、くすくすと笑いだした。




「まったく、シャルティ様が家に現れないというのはよくある事ではありませんか」


「そうだな」



 ごめん。当然知ってますよねって顔してるけど、こっちにとっては初耳です。



「この前など、勉強が嫌だと言って、三日三晩我々から逃げ回り、手を焼かされたものです」


「いくらなんでもアグレッシブ過ぎない!」




 3日。まじで3日間も!


 あいつ何やってんだ!

 いや、シャルティであってシャルティじゃない存在がやらかしたってことは分かるけどさぁ!


 本当に、俺たちってバカ。

 何で悪役なんかに転生したんだよ!





 もう一度家の中を探して、シャルティの姿がどこにもなければ、今度こそ、使用人に無理を言ってでも探しに行こう。


 そう誓い、とりあえず、部屋に戻ると、


「……何これ?」




 シャルティからもらった人形が俺の服をつまんだかと思えば、珍妙なダンスを披露したのである。



 まずは口を押さえ、次に袋の中に入る。

 そのまま袋の中でゴロゴロと回転し、僕の服の袖を握り、ある一点を指さしたのちにダッシュ。


 あら、かわいい。お遊戯会かな。


 素直な感想を口にすれば、手にもっているフォークで足を刺された。解せぬ。




 それからシャルティ人形は何度も何度も、根気強く同じポーズを取ってくる。


 ここまでくると、何かを伝えたいのだという強い意志を感じずにはいられない。


 でも何を?

 こいつのジェスチャーから推理していくか。



「口を押える。

 つまり、しゃべれない状態。

 次に、袋の中。

 これは……拘束か?

 で、袋の中でゴロゴロ……は、拘束されたままの状態ってこと。

 そのまま俺の服をもって走り出すってことは、そうか! 分かったぞ!」



 全ての推理に対して、人形は丸のジェスチャーで正解だと教えてくれた。




「おまえが言いたいことは全てわかった。

 少し待っていてくれ。

 この家の金銀財宝を少しかっぱらっていくから」



 再度人形はフォークを突き刺して来た。

 解せぬ。




「プックックックッ! それでぇ、クロード君はいったいどうしてそんな風に考えつぁんですかぁ~」


 アルテがもはや忍び笑いを隠そうともしない。

 そんなにおかしなことなのか?




「だって、俺たちの最終目標って、この家から逃げることじゃん」



 人形のジェスチャーは、逃げる条件が整ったので、それを実行しようだという意味だと思ったのだが……。




「私の考えは、自分が危険な状態にある、助けてだと思うんだけど」


「それはない!」


 もう、アルテの狙いはわかっている。

 俺の動揺を誘い、無茶な条件を突きつける気なのだろう。



「どうしてないって思うわけ?」


「だって、シャルティのやつ強いし」



 今日、手合わせをしたのだ。

 あの強さから考えて、よほどの困難でない限り打開できるだろう。




「でも残念ね。

 女神としての誇りにかけて断言するわ。

 今、シャルティが危険な状態にあると」


 なるほど……。誇りにかけてねぇ。



「どう、私をそのハリセンでめった打ちにしたことを真摯に謝罪したうえで、もう二度といかなることがあろうと殴りませんと誓ったなら、どこで何をしているか教えてもいいけど」



 アルテは自信満々だ。

 この様子を見るに、嘘やはったりではないのだろう。



「いやいい」


 だが、俺には作戦がある。


「はぁ! あんたの妹の危機なのよ。それなのに、あたしに頭を下げることすらしないなんて、いくらなんでも薄情過ぎない」


「いや、俺にはシャルティがどうなっているのか判明する手段があるんだ」


「いったいどういった手段があるっていうのよ」



 俺は人形に紙と万年筆を渡した。



「そんな、手があったなんて。あなた天才か」


「いや、こんな手があることにすら気が付かない、そっちがバカなだけじゃないかな」



 踊っているときは緊急性を感じなかったからやらなかったけどね。


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