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全滅したパーティーを救うため、二周目は未来の知識で俺TUEEE……するはずが、敵が本気出してきちゃった件。  作者: 久喜崎


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第50話「開戦の鐘」

ズシン、ズシンという、大地そのものを揺るがすような巨大な地鳴りのような足音が、サンクトゥリアの巨大な北門へと一歩、また一歩と着実に迫ってくる。

 夜闇の地平線を完全に埋め尽くすような、数万にも及ぶ無数の赤い眼光を持つ教団のアンデッド兵士たち。そして、彼らを完全に従え、その後背の真ん中に不気味なほど聳え立つ、無数の死体の腐肉で作られた分厚い鎧を全身に纏った巨大な『五柱』——腐敗の巨漢。


 その常軌を逸した異様な姿と、風に乗って押し寄せてくる吐き気を催す強烈な死の腐臭は、城壁の上でのんびりと見張りに立ち並んでいた神殿騎士たちの間抜けな鼻先と視界にも、ようやく残酷な現実の恐怖として届いた。


「な、なんだアレはッ! 信じられん、城壁の向こうに地平線が真っ赤に光るほどの……大群だと!?」

「冗談じゃない、あれのすべてがアンデッドの群れ!? 王都からのあの薄汚い冒険者の連中が言っていた『五柱と軍勢の総攻撃』は……本当にただの事実だったのか!」

「だ、誰か早く鐘を鳴らせ! 全軍、今すぐ寝ている者を叩き起こして一秒でも早く戦闘配置につけェェッ!」


 深夜の美しい聖都の静寂を暴力的に切り裂くように、警鐘を知らせる大聖堂の巨大な鐘が、鼓膜が破れるほどの音量で狂ったように連続して乱打された。

 だが、彼らのその動きはあまりにも鈍く、遅すぎる。

 鐘の音でベッドから飛び起き、慌てて重い鎧を着込んで槍や弓を震える手にする神殿騎士団が城壁の上に駆けつける頃には。すでに敵の足の速い先鋒数千体は、城壁の真下、すぐ手前の大きな窪地のすり鉢の地形の場所まで、凄まじい勢いで暴力的に雪崩れ込んできている。一度彼らが壁に取り付けば、この街の防衛は一瞬にして物理的に崩壊するだろう。


「おいおいおい、レイド! 上の騎士団のお偉いさん連中、やっと手際悪く慌てて動き始めたみてえだぜ!」

 最前線で一人で大盾を構えて待機していたガルドが、城壁の上のパニック状態の騒ぎを背後へチラリと振り返って見て、心底呆れたように嘲るように笑った。

「あいつらの寝ぼけた防衛の準備が終わって矢を射掛けてくるまで、俺たち四人だけで派手に露払いをして、目を覚まさせてやるか!」


「ああ。——ガルド、敵の群れの第一波が窪地に密集したぞ! 今だ、起爆しろ!」


 レイドが鋭い声で冷徹な合図の声を叫んだ、まさにその瞬間のことだった。

 事前にガルドが泥だらけになって、窪地の広範囲の地中に密かに何重にも埋め込んで隠していた、数百個の最高級の『爆炎晶』が。窪地に密集したアンデッドの群れが一斉に踏み抜いたど真ん中で、まるで火山の噴火のごとく一斉に全て火を噴いた。


 ドォォォォォォォォンッ!!!!!


 漆黒の夜の空を、一瞬にして昼間の真っ赤な太陽のように染め上げる凄まじい巨大な火柱と大爆発。

 爆心地の超高熱と風圧により、大地が粉々に砕け散る。巻き込まれた何層もの腐肉とアンデッドのバラバラの骨の破片が空高く無惨に何十メートルも吹き飛び、強固な陣形を組んでいた先鋒のアンデッド数千体が、悲鳴を上げる間もなく一瞬の光の中でただの黒い消し炭の灰へと形を変えて消滅する。


「お見事! さすがは私のリーダーね! 敵の第一波、完全に消滅! さあ次、生き残りは私が掃討していくわよ!」


 城壁の高いその上の縁から、下を見下ろしていたリーネが、美しく光る白樺の杖の先端を空に向けて高く掲げた。

 大爆発の残した凄まじい黒い煙と熱波を、巨大な風の魔力で自らの陣地に巻き込むようにして。彼女の放った魔法は、巨大な複数の『竜巻の刃』として城壁の外側で恐ろしい速度で荒れ狂いながら発生する。

 爆炎から生き残った残存のアンデッド兵たちが、その巨大な三つの竜巻の強烈な吸引力に巻き込まれて宙へ無差別に舞い上げられ、空中で互いの硬い骨や瓦礫と激しく衝突し合いながら、文字通り原型を留めない赤い肉塊の破片へと鋭い風でバラバラに分解されていく。


「……す、すげえ……なんだあの規格外の魔法は……」

「た、たった四人の……どこぞの馬の骨とも知れない野良の冒険者たちが。我々が全滅を覚悟したあれだけの恐ろしい数万の軍勢を、たったの数分、たったの一手で完全に……!」

 武器を構えることすら忘れて完全に慌てふためいていた神殿騎士の精鋭たちが、城壁の上からその四人だけの圧倒的な破壊と蹂躙の戦の光景を見下ろして、全員が驚愕に呆然と震えながら呟いた。


「ふふっ。驚いて腰を抜かすのはまだまだ早いわよ、お兄さんたち」

 リーネと同じく、城壁の監視塔から身を乗り出して風を詠んでいたセレナが、三本の銀矢を自らの巨大な弓の弦にギリリと力強くつがえながら、冷ややかに呟く。

「あれはただの挨拶代わりのザコ掃除。私たちの本編のターゲットの本命が、まだ無傷で残っているんだから」


 最初の罠の炎と竜巻が完全に収まり、大量の灰が空から雪のように降るその直後の静寂。

 真っ赤に燃え上がり焦げた窪地の大地の、その砂煙の向こうから——。再びズシーンと、心臓の鼓動を狂わせるような嫌で異常な重低音の足音が響いた。


「グゥォォォォォォォォォォ……ッ」


 炎の熱で焼け焦げたアンデッドたちの黒い残骸を、一歩ごとにメキメキと容赦なく踏み潰し。その巨体から、触れれば肺が溶ける猛毒の紫色の腐敗ガスを大量に蒸気のように撒き散らしながら、身の丈十メートルの『腐敗の巨漢』が、完全に怒りに満ちた異形の姿を濃い煙の中から現した。

 先ほどの『爆炎晶』の最大火力の直撃を軍勢の中心でその身で受けたはずのその巨大な丸太のような足元は、死体の肉を幾重にも重ね合わせたあまりにも分厚すぎる腐肉の装甲の壁によって、信じられないことに全くのノーダメージで傷一つ付いていない。


「……なるほどな。さすがに最高級の爆薬でも、あいつのもっさりとした分厚い肉の鎧の表面にはかすり傷一つつかないか。伊達に神と並ぶ『五柱』なんて大層な名前を名乗っちゃないな」

 レイドが長剣の切っ先を下げて腰を深く落とし、いつでも神速で踏み込めるように強烈なプレッシャーの中で前傾姿勢で身構える。


「おいおいおいレイド! あいつの背中の肉の管から大量に漏れ出てるあの紫色のガス! 上のリーネが展開してくれてるあの風の防御壁がなきゃ、前にいる俺たちも一瞬で肺が腐ってゾンビのお仲間入りだぜ! 息をするのも死ぬほどキツい!」

 ガルドが右腕の大盾の裏で鼻と口元を強く覆いながら、巨体から放たれる圧倒的な悪臭と魔力の威圧感に顔を歪めてしかめた。


「ああ。だがお前が盾でガスを防げるなら、これで騎士団の威張っていた連中も、完全に大人しく安全な結界の中に手出しできずに閉じこもってるしかないだろう。俺たちに余計な外野の邪魔や誤射が入らない分、心置きなくやれて戦いやすいってもんだ」


 レイドは、恐怖など微塵も感じていないように冷たく前を向いた。

 十メートルを超える腐肉の異形の巨人が、その濁った黄色い左右の巨大な眼球を、足元にいる自分たちを殺した虫けんらのレイドたち四人へと、ハッキリと強い殺意を持って向ける。


「セレナ! 作戦通り、まずは神業の射撃であいつの視覚情報から完全に奪え!」


 レイドの大声の叫びの指揮と同時に。監視塔の上から、空気を螺旋状に切り裂きながら放たれた魔法を宿した三本の極太の光の矢が。夜闇の空間を音速で縦に切り裂いて、『腐敗の巨漢』の分厚い顔面にある、黄色く濁った不気味な両眼のど真ん中へと、全くの誤差なく確実に殺到した。


 かつて世界を終わらせた、神聖教団の絶対防衛をたった一体で揺るがす物理的な恐怖の化身に。たった四人という点に過ぎない、王都の誇る最強の反逆の英雄たる冒険者が、真っ向からその首を取りに噛みついたのだ。

 歴史の分岐点となる、苛烈なサンクトゥリア防衛戦が、今ここに真の開戦を迎えた。

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