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全滅したパーティーを救うため、二周目は未来の知識で俺TUEEE……するはずが、敵が本気出してきちゃった件。  作者: 久喜崎


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第46話「次なる戦地への序曲」

突如として王都の要を襲い、多くの命を刈り取るはずだった未知のベルグの街の急襲防衛戦は、レイドたち四人の想定を遥かに超えた神業の連携により、教団側の完全なる想定外の敗北という形で幕を閉じた。

 王都から重装備の近衛騎士団の先陣が数百名規模で息を切らして到着した頃には。二百名近くいたあの人間離れした狂信的な教団の戦闘員たちは、誰一人として逃げることも許されず文字通り完全に無力化されて制圧し尽くされており、街の被害も入り口付近の建物数棟の類焼という、奇跡としか言いようがないほどの最小限の被害に完璧に留まっていた。


「見事だ……たった四人の冒険者だけで、あれだけの規模と練度を持った教団の奇襲部隊を、騎士団が到着する前に完全に死傷者ゼロで制圧しきるなど……。君たちはまさしく、この国の生きる戦神だ」

 瓦礫の中で座り込む四人を見た近衛騎士団の隊長が、自分たちの無力さを恥じるように、しかし深い驚嘆とありったけの敬意の眼差しでレイドたちを深く見つめた。


「よしてくれ。戦神なんて大層な柄じゃないさ。たまたま近くにいて、たまたま俺たちの連携の調子が最高に良かった。……ただ、それだけ運が良かったってことだ」

 レイドは長剣の真っ赤な刀身にこびりついた教団兵の血を、倒れた敵の黒い外套で冷徹に拭いながら、まるで散歩の途中のような素っ気ない口調で答えた。


 だが、彼の胸の奥の心の中には、かつての一周目には決して存在しなかった、確かな強く熱い炎が宿っていた。

 以前までの夜のキメラ戦や魔女戦のように、「俺が一人で未来の運命のカンペを知っているから」勝てたのではない。このベルグの急襲は、完全に記憶にない未知の歴史の一ページだった。

 それでも勝てたのは。その未知の恐ろしい奇襲に対し、仲間たちが誰の指示に頼るでもなく、それぞれが最高の戦士としての一瞬の最善の判断で完璧に動き、自分たちの確かな『個の実力』でこの傷一つない圧倒的な勝利をもぎ取ったという揺るぎない事実なのだ。

 もはや、未来を知らないことは恐れるに足らない。それは彼らの中で、歴史改変による未知の脅威への恐怖を完全に克服し、自分たちの剣と魔法でもってこの先の空白の未来を『自由に創り出せる』という、何よりも強固で圧倒的な自信へと昇華されていた。


 それから数日後。

 王都ギルドの最高機密を扱う特務室へ緊急で呼び出されたA級の四人を、分厚い扉の向こう側で、息が詰まるほど重苦しく冷たい空気がドロリと包み込んだ。


「君たちのベルグでの超常的な八面六臂の活躍には、いくら礼を言っても感謝しきれない。……だが、祝杯を上げている時間はどうやら我々には一秒も残されていないようだ。事態は想像を絶するほどに極めて深刻だ」

 初老の百戦錬磨のギルドマスターは、広い円卓のテーブルの上に大きく広げられた、手書きの古びた巨大な大陸地図の中心を、ペンを持つ手で重々しく指差した。


「ベルグで君たちが生け捕りにして捕らえた教団員の厳しい尋問と、王家直属の優秀な密偵が命と引き換えに持ち帰った最新の暗号報告から。あの忌まわしき教団の『次なる明確な大規模侵攻の標的』が判明した」

「……また別の街ですか。それは、どこです?」

 レイドがソファからいち早く身を乗り出し、机の上の地図を鋭く覗き込む。


「大陸中央部に位置する、大聖堂の聳える宗教都市『サンクトゥリア』だ」


 その神聖な響きを持つ固有名詞を聞いた瞬間。レイドの心臓が、まるで冷水に氷を投げ込まれたようにドクンと嫌な音を立てて、強大な警鐘をけたたましく鳴らした。


 サンクトゥリア。光の大精霊を祀る巨大な教皇座が置かれ、大陸中の何百万人という信徒の純粋な信仰と、大地から噴き出す凄まじい密度の聖なる魔力が一手に集まる、難攻不落の神聖なる巨大要塞都市。

 一周目の血みどろの歴史の記憶において。そこは『五柱』によるこの世界への本格的な絶望の侵攻の第一波を真っ向から受け、内部に数十万人規模の無辜の市民と巡礼者の犠牲者を一度に出し。巨大な白亜の大聖堂ごと、わずか三日と持たずに地図から完全に消滅し、黒い巨大なクレーターの墓標と化した、最悪の悲劇の死の街なのだ。


「教団は、サンクトゥリアの広大な地下の奥底を流れる桁違いの巨大な霊脈の力を強引に反転させて利用し。彼らの崇拝する『虚無の王』という概念悪を一気に現世へ完全に呼び覚ますための、巨大な苗床の儀式を行おうとしているらしい」

「……そうか」

 レイドは無言で、机の下で爪が食い込むほど強く拳を握りしめた。


 来る。やはり来るのだ。

 俺が過去に介入して歴史改変の楔を打ち込んだ影響で、教団の計画のすべての展開が、五年後の最後ではなく前倒しの致命的な『短期決戦』へとスケジュールを歪ませている。一周目ではあの街が滅びたのは数年後の秋だったはずだ。それが今、この序盤の数週間後にやってこようとしている。


「王家の判断は芳しくない。直近の魔女による王都強襲とベルグの被害による騎士団の大幅な戦力損失が甚大であることから、遠く離れたサンクトゥリアへの本格的な大軍隊の援軍派遣を、議会が強く渋っているのだ。都市内部に駐屯する数千の神殿自衛隊の戦力だけでは、あの教団の化け物どもの手加減のない総攻撃を三日と持ち堪えるのは、軍事的な観点から見ても不可能に近いだろう」


 ギルドマスターの苦痛に満ちた言葉が、室内に重く響く。見捨てるしかないのだと、暗にそう言っているに等しかった。


「ギルドマスター」


 沈黙を破り。レイドが、誰よりも静かに、だが何者にも折られることのない絶対的な決意の炎を宿した黒い眼差しで、まっすぐに顔を上げた。


「軍が動けないなら好都合です。俺たち四人のパーティーが最高速の馬で先行します。都市の無能な防衛をこちらで強引に指揮し、教団の総攻撃のすべてを、あの城壁の前で一つ残らず迎え撃ちます」


「しかしレイド! いくら君たちがA級を授与された規格外の英雄とはいえ、相手は国家を滅ぼす規模の軍勢だぞ! たった四人の個人で……」

「大軍勢を動か神殿騎士団なんて遅すぎてただの足手まといになるだけです。四人という最小の点だからこそ、教団の予測を超えて誰よりも速く動ける。防衛の致命的な罠の準備も完璧にできる。少しも心配はいりません。俺たちは……この四人なら、五柱が何人来ようと絶対に負けない」


 レイドの一つも揺るがぬ言葉に、横に腕を組んで立っていたガルドが、腹の底から楽しそうに豪快な笑い声を上げた。

「ガッハッハッ! そういうこった! 俺の新しいこの分厚い大盾がまた火を吹くぜ! ギルドマスターは王都で美味い茶でも飲みながら、俺たちの勝利の報せを大船に乗ったつもりで悠々と待っててくれよな!」

「大船っていうか、荒波のど真ん中に自分から突っ込んでいく穴の空いたおんぼろ小舟の特攻隊だけどね、私たち」

「セレナさん!? なんで出発前に自分たちでそういうあまりにも縁起が悪い最悪の例えを言うのよ!」


 こんな世界の終わりへの絶望的な死地へ向かう話の直後だというのに。相変わらずの調子で明るく軽口を叩き合って心底楽しそうに笑い合う三人の無敵の姿に、ギルドマスターはただポカンと呆然としながらも、やがてすべてを諦め、そして彼らに全幅の信頼を預けるように深く、力強い息を吐いた。


「……わかった。私からこれ以上、君たちのその無垢な狂気と強さを止める言葉は持っていない。ギルド本部も独自の強力なパイプを使い、可能な限りの攻城兵器と莫大な物資支援の馬車を後追いでサンクトゥリアに向かわせよう。……絶対に生きて帰れよ。頼んだぞ、若き王都の英雄たち」


 手短に数日分の野営の準備と最高級の武具のメンテナンスを完璧に整えた四人は、夜が明け切らぬ暁の冷たい空気に包まれた王都アロリアの城門を、見送る誰にも告げずに疾風のように出立した。

 目指す彼方は、大陸の中心に座す宗教都市サンクトゥリア。

 一周目のレイドの記憶では、何十万の何の罪もない命がなす術なく無慘に散っただけの、血塗られた絶望と敗北の地へ。今度は、彼ら四人という小さな、しかし決して消えることのない太陽のような希望の光の矢として、真っ直ぐに運命の心臓を撃ち抜くために向かうのだ。


「ねえ、レイド」

 並んで馬を全速力で走らせながら、風に白銀の髪をなびかせたリーネが、少し大きな声で隣のレイドに話しかけてきた。

「今度こそ……あなたの『五年間の地獄の未来の記憶』の知識がなきゃ、私たちでもどうにもならないような途方もない大化け物の強敵が出るんでしょ?」


「ああ。間違いないなく、あの王都でやり合った『虚ろの魔女』と同格か、物理的な破壊力で言えばそれ以上の『五柱』クラスのふざけた化け物が出てくる。俺の死んだ記憶の中にある限り、そいつの厄介な性質や一番確実な弱点、そして一番かっこいい一方的な倒し方は、俺の脳内に完璧にプランニングして準備してある」

 レイドは馬の手綱をしっかりと握り、前を向いたまま、かつてないほど不敵で獰猛な肉食獣のような笑みを口角に浮かべた。


「でも、もし万が一、俺の記憶のカンペから完全に外れた未知のイレギュラーが起きた時は……前みたいに、お前たち三人の直感と筋肉に全部任せたぞ」


「おうっ! そういう脳筋の仕事なら大歓迎だ! いつでもお前の頼りない前衛の背中から飛び出して、俺の盾でまとめて吹っ飛ばしてやるよ!」

「風の魔力は、王都のギルドの上質な最高級魔石のおかげで、いつもより三倍増しでバッチリ充填して溜めておくわ。派手に行くからね!」

「……いつでも遠くから静かに射抜いてあげる。敵の醜い心臓も……たまに見せる、あなたの甘すぎる思考の隙もね」


 四人の心底楽しそうな明るい笑い声が、朝焼けの世界の風に美しく溶けていく。

 かつての、狂気と自己犠牲のみで一人で泥を被り、孤独に足掻いていた哀れな「死に戻り」の策士の男は、もうここにはいない。

 互いの命を絶対の信頼で繋ぎ合わせた、世界最強の四人の歴史の反逆者たちが。理不尽な神の運命すらも笑い飛ばしながら、決意の街へとただひたすらに力強く駆け抜けていった。

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