表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朧車  作者: 赤丸朧
第3幕 消えないマーク
33/51

12場

「貴女には魔法器(ウィッチクラフト)の存在を明かしてた筈ですッ! なのに何故……!」


「構成員くんだって、最初に気付いてたならその場で言ってくれれば良かったでしょ! なんであんなメンドーな誤魔化し方したの? ばか?」


「構成員である僕が! 構成員である彼女を警戒してたらそれだけでおかしいでしょうッ! あの場で、僕が気付いている事がバレてはいけなかったんですッ! なのに貴女は……のうのうと彼の亜因果まで伝えてしまうしッ! 貴女は彼を守りたいという意識はあるんですかッ! そんなんじゃやってられませんッ」


「う、ぐ。仕方ないでしょ! 見えてなかったんだから」


「散々、サインを出したというのに……ッ!『自分がどう思われたって、それが正しいと思ったなら必ず実行する』昨日、その言葉に、僕は痛く傷つきました。それを自分から言ったんです!『言わせられている』という意味に他なりませんッ!」


 え。流石にそれはちょっと無理があるというか。そんなのわかるわけないというか。っていうか、慰めたつもりだったんだけど、傷ついてたんだ。ごめん。

 と、ちょっと素に戻ってしまった。


 そんな私を見向きもせず、構成員くんは憤慨しっぱなしだ。両手で頭を抱えてる。


「お陰で温めていた奥の手を二つも……!」

 怒りで悶々とするのはいいんだけど。


「結局、どういう事?」

「今朝、僕が仮眠から目を覚ましたら、部屋の隅に会長が立ってました」

「ホラーだね」

「ホラーどころの話ではありませんよッ! ……しかも! 貴女は気付いて居ないようで、さらにソード1の前で、彼の話を初めてしまった! 僕が必死に誤魔化そうとしてるのに! ……ワザとやっているのかと、本気で殺意がわきました。あの時、目を覚ました瞬間、会長を発見できた事と、視線を会長に向けなかった事は奇跡の他言い様がありませんッ」


「はいはい。ごめんねー」

「僕はとっさに、貴女に敵対意識をむき出しにしました。……取り敢えずそれで、二人同時に消される事は無い」


「うわ。まず保身に走るとか。さいてー」


「共倒れになったら救う事も出来ないでしょうッ!? 僕は貴女を救いたいが為の行動だったのに! 貴女こそ、真っ先に逃げ出しましたねッ!?」

「誰だって逃げるよ。魚も走って逃げるよ」


「そして僕が貴女をすぐに拘束した。そうですね?」

 お姉さんの事を隠したいらい。そんなの知らないけど。


「違うでしょ。あれ、誰? ホントにお姉さんなの? 姉弟(きょうだい)? 聞いてないよ?」

 構成員くんは呆れるように、片手で顔を覆う。


「貴女は……言葉の裏にある意味に、気づいた方がいい」


「気付いてるよ。気付いた上で聞いてるの」

「なお悪いです」


 私が『説明しろ』と不満気な視線を送っていると、構成員くんはシュンと縮こまった。


「構成員は基本的にニ人一組です。口座の操作、個人情報の閲覧、盗聴盗撮、追跡。そんな事が出来る権限と道具を簡単に個人に渡すわけないでしょう?」


「でも姉弟なんでしょ? お互いに見張るって意味、あんまりないよね」


「最終的に、悪用に協力するより、告げ口した方が美味しい構成になっているんです。囚人のジレンマですよ。そもそも……。本当に、男性である僕が、女性である先輩や優柳先輩の監視をしていたと……?」


 なんか、それがショックらしかった。


「あー……。だって構成員くん、必要とあらば真顔でシャワー覗きながら『始めに首から洗う』とかメモとりそう」


「そう…………ですか」


「ちなみに首から洗うのはサッチね」

「そんな事、聞いてませんッ!」


 信用が無いのが、ちょっと悲しかったらしい。必要に対して真剣だと褒めているんだけど、構成員くんの表情は複雑そうだ。


「取り敢えず、貴女は気絶して、ぐーぐーイビキをかいてましたね。ここからは知らないでしょうから、長くなります。その後、僕は――――」


「なら短く」


「ぐ……ッ! ……要しますと、ソード1に彼の危険性を知られてしまったわけです。ですから、全力を尽くして、偽ラミィをでっち上げて、ソード1に処理をさせて、お茶を濁しました」


 素直に従う辺り、根はいい子なのかな、とか思う。


「『全力を尽くして』の一言で僕の苦労が……!」とか漏らしながらプルプル震えてた。かなり苦労したらしい。しかしすぐに気を取り直して、

「以上です。何か質問はありますか」

 一杯あるけど。


 落ち着き払った構成員くんに、まず先に聞きたいのは。


「今の状況は……?」

「最悪、だったんですが、そこから一転して更に最悪になった。泣きっ面に蜂、弱り目に祟り目、災は常に複数形、といった所でしょうか。

 ――――――彼女に、知られてしまった」


「その口ぶりだと、説得とか賄賂とか、効かなそうだね」

「その瞬間、殺されますね。三回程」

「三回?」


「説得しようとした貴女が殺され、監督不行届で僕が殺され、彼の事も調べられて殺される。三回です」


「なーるほど。で、どーすればいいの?」


「実は、案があります。……昨日から温めていた案が。ですが、もう少し時間を下さい」

「六時間ぐらい?」


「嫌味ですか? ……物的準備はまだありません。状況が変わったので、その為の変更等を検証します。不備は、矛盾は、無理は、無駄は、無いかと。一時間程、頂きます」


 そう言って、構成員くんは腕組をして、胡座をかいて、瞑想を始めた。

 …………そういえば。


「もう一つ、質問があるんだけど……」


「なんですか。何か気になった点があれば。……僕は貴女より状況を把握していますが、だからこそ視野が狭くなり、見落としてしまってる事もあるかも知れません。落ち度は許されない」


「私、いびきかいてた?」


「…………………………それが、何か?」


「ラミィは知ってるかな? どう思われただろ」


「……………………………………………………」


 私にとってはかなり重要だったんだけど、

 そのまま一時間ぐらい、無視された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ