表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朧車  作者: 赤丸朧
第3幕 消えないマーク
28/51

7場

「ぅお……? なん、だ?」


 まるで時が止まったみたい。耳に栓をしてるスピーカーの微かな電子音も、緊張から生まれてる気さえする。


「テメッ……なにすんだよ」


 そう言ってラミィが私の手を振り払うまで……いや、振り払らってからも、ずっと棒立ちしていた。


 どうなの?


「あ…………印鑑? テメェ……なにしやがる」


 額をゴシゴシ擦ってる。その額に印があるか見たいの。


一先ひとまず記憶の制御は外れていない様ですね。いや、こんな直接的に触れて外れないなら、そもそも無いのか?』


 ブツブツと思考を垂れ流す構成員くんの独り言がうるさい。大事なのはその額の印。


『早くてニ分から三分、遅ければそれ以上に印は残る筈です。段々と薄れていくものですから、しっかり印が残った事を確認できれば、後の判定は僕達の方で出来ます』


 そんなのお断り。自分で見なきゃ信じられない。


「なんだよ……いきなり。……鏡」

「恋占い。……はい」


 額を摩りながら鏡を要求するラミィに、私は内ポケットからコンパクトミラーを渡した。角度を変えれば私からも、荷物の中に手を突っ込んで何かに備えてる構成員くんにも見える筈。


「テメェに占いなんて似合わねぇよ。あと五分で死ぬって宣告されてもケロッとしてそうじゃねーか」

「いいから、ほら、はやく」

「はぁ……? なんだよ。シャレじゃねーのか」


 受け取ったラミィは前髪を上げ、額を見る。


「ぁん?」

「ん?」『――――――ッ!?』


 ラミィの額は綺麗なものだった。何もない。あの、ペンキで塗ってもこうはならないだろうなっていう綺麗な真っ黒い校章が無い。


 あれ? 失敗した? おかしいな。しっかり押した筈なんだけど。私は判子をもう一度見る。インク切れ?


「なんもねーじゃねぇか。……冷やかしか?」

「あー」


 どゆこと?


『優柳先輩、もう一度……今度は長く押し当てて下さい』


 言われた通り、もう一度判子をラミィに伸ばす。ラミィはこの行動の意味を知りたいのか、大人しく前髪を上げていた。ちょっと強く、押しこむように当て続ける。


 そして離した。


「あ」


 くっきりと、刺青のように印があった。ただそれは、次の言葉を発する前に、影みたいに薄くなって、幻のように消えてしまった。


 印が、消えた。ラミィに亜因果がある?


『信じられませんが、確認しました。僕は退きます。後はお好きにして下さい。……今後の話もあるので、なるべく早く帰ってきて欲しいです』


 早くてニ、三分って話は……? 信じられない、って言いながら構成員くんはさっさと立ち去ろうと荷物をまとめて歩き出してる。それって信じてる行動じゃないの?


 信じてるの? ラミィに亜因果があるって。


「なんもねーじゃねーか。貸してみろ。……おい、これ……朱肉ねーとダメなヤツなんじゃねーか?」


 ラミィの言葉が、思考の上を滑っていく。でも何を考えていいかもわかっていない。促されるまま、二人でまたベンチに座った。


「これ、学園の……校章か? ……どっからパクって来たんだよ、シャレになんねーだろ」


 隣に座って、魔法の判子をいじくるラミィの声が遠い。


「まぁ、いいけどよ」


 判子を返された。そして突然、声が大きくなる。


「――――おいッ」


 その声の大きさは、隣に座る私に宛てたモノじゃない。向きは構成員くんの方。だけど構成員くんに宛てたものでもない。その声に反応して、植木の影から二人の男が立ち上がる。


 BとCだった。


 構成員くんも驚き、一瞬だけ歩みが止まった。だけどすぐに冷静になる。そのままBとCを迂回するようにして歩き出した。


 ラミィ達には見えないんだから、それが当たり前だろう。


 でも。

 BとCは真っ直ぐ構成員くんの方へ歩いて行き、その行通を塞いだ。


 構成員くんがそれを避けようと、Bが一歩、その先を隔てる。反対に動けばCが、その先を遮る。


 見え…………てる?


 絶句する構成員くんに二人が近づいて、何かを言ってた。離れる私には聞こえないけど。


『動くなクソが』

『手荒な事、したくないからさー』


 睨みつけるCと、茶化すような口調のBの声が、スピーカーから聞こえた。


 見えてる。


 何やってるの? 事態がややこしくなるのに……、意識迷彩を使うの、失敗したのッ!?


 内心、そう憤慨してから、


『――――馬鹿な』


 構成員くんの声が聞こえて、考えを改めた。失敗してない。見えない筈なのに。


「あいつ、知り合いなのか?」


 隣のラミィが問いかけて、私は端的に即答した。


「後輩」


 それしか出来ない。――――見えてる。ラミィにも二人にも。


 亜因果の事、私に隠してたんだ。だから見える事が異常だという事にも気付いてない。応える私の声は、強くて、冷たかったと思う。


 その理由もよくわかってないラミィは顎で二人に指示を出して、構成員くんに何もしないで解放する事が最善だと判断したみたいだった。


 二人に連れていかれる構成員くんの顔は蒼白だった。


「あいつ、誰なんだよ。どういう関係だよ」


 そんな事をラミィはずっと聞いてきた。でも私はそれどころじゃなかった。


「おいッ! んだよ……黙ってちゃわかんねーよ! なんか言ってくれよ。……なんかしたか?」


 私が怒ってると思ってる。それは正しい。でも言って欲しいのは私の方。記憶の制御、とか言ってた。もしかしてラミィ自身は本当に何も知らないのかもしれないんじゃないかな? 私に隠してたわけじゃないのかもしれない。


 構成員くんを開放し終えた二人が戻ってくる。

 反射的に私は立ち上がって、近づこうとする。


「あ、おいッ!」


 そんな声も、私を止めるには至らない。理由も推察できない私の怒りが怖いのか、ラミィが追ってくることはなかった。


 二人は護衛。なんの為の? 記憶の無い、無防備なラミィを守るために決まってる。初めて会った時も、今もそうだった。二人はラミィに従い侍ってる。


 二人なら、ラミィが私に嘘を付いていないと、証明してくれる。二人なら、知ってる。


最高傑作(ウォーモ・ド・ノーレ)


 その言葉の意味。


「はー? 何? オレ、英語わかんね」とB、「……」無言で訝しむC。


 即答だった。誤魔化す素振りも一切なかった。


 え……? なんで?

 本当に、ただのラミィの友達なの?


 それなら。

 ラミィが全て知った上で、全てを知らない振りをしてる。


 ――――私にも、言ってないんだ。


 そうだよね、言えないよね。自分の生まれが特殊だとか、変な力を持ってるとか、言いたくないよね。


 そうやってラミィの気持ちを汲もうとしてみたけど、底の無い手水舎(ちょうずや)のように、流れていった。


 私はベンチに、ラミィの隣に戻る。

 BとCはただ事じゃない空気を読み取って、私達に近寄らなかった。


「なんなんだよ……さっきの、誰だよ」


 私の無言に釣られてか、その言葉に覇気は無かった。


 どこから言えばいいんだろう。光輪が発現した時、真っ先に私から言うべきだったのかな。そうすれば『実は俺もー』なんて事になって、こんな事にならずに済んだのかな。


「なんで言ってくれなかったの」

「ハァ? 何をだよ」

「私に隠してる事、あるでしょ」


 ラミィが目を見開いて息を飲んだ。わかりやすいなぁ。よく今まで隠してこれたよね。なんで私は気付かなかったんだろう。


「別に。隠してねぇよ。……つか、なんでテメェがそれ知っ――――アイツ等か」


 舌打ちが一つ。『クソが』と暴言が一つ混じった。ラミィはBとCに一瞥の睨みを効かせた。それは認めたと、同意義だった。


 後で、フォローしてあげよう。二人の知らん顔は完璧だったよって。……遠くでそう思った。


「なんで言ってくれなかったの」


 貰えなかった答えを、求める。


「迷惑だろーが」

「それは私が判断する事」


 私が判断する事だ……私は……私は! 例えラミィがそうだとしても、なにも関係ないのに! ラミィは思ったの? ……私が迷惑がるって!?


 なんで理由も無く信じてくれなかったのッ!

 なんの為の……彼女なの?


『迷惑』のたった二文字が、とてつもない距離に感じた。


 三日ぐらい、口聞いてやらない。


 反省して。

 そしてもう二度と、大事な事、隠さないで。

 独りで居ないで。独りにしないで。私と一緒に居て。


 私は立ち上がって、帰ろうとする。


「あ、おい! 待てよッ」


 言っても私は止まらない。それを知ってか、ラミィは私の肩を掴んで強引に振り向かせた。


「んだよッ! さっさと言えば良かったのか!? なら聞けよ!」

「離して」


 肩を掴む手を振り払ったら、その手首を掴まれた。押し退けようとしたもう手首も掴まれる。


 強引なの、嫌いじゃないけど。今はそんな気分じゃない!


 振り返って、全力で、右足を振り上げる。その先はラミィの両足の付け根、急所。不能になってしまえ。


 だけどそれはラミィの足の裏で平気で受け止めらる。

 なら。


 私は飛び跳ねるようにして、ラミィの顎を頭突きで狙う。

 それも簡単に、ヒラリと上体を逸らして避けられた。


「――ッ! 危ねぇな! ……誰が仕込んだんだよ」


 ラミィ達でしょッ! ニヤつくな! キモい!

 飛び跳ねた勢いをそのままに、裏に回られて抑えられた。


 もうどうしようもない。


「離、しーてッ」

「あぁ、話してやるよ。一度しか言わねぇからな。

 ――――――一緒に住んでくれ」


 ますます気に入らない。気を引こうとしてるの見え見えだ。住むのは別にいいけど。なんで今、このタイミングでそんな事を言うの? そんなんじゃ認められ――――。


『テメェ、もうすぐ卒業だよな』

『んで、一人暮らし始めて、大学に進学するんだろ』

『あー……そんで、卒業して、就職すんだろ?』

『…………はぁ? 就職決まってんのかっ!?』


「えー……っと?」


 もしかして昨日、言いたかったのは、同棲について?


『あー』辺りから照れて誤魔化して、なんとなく会話を進めたの?


「一度しか言わねーっつったろ。どうなんだよ。その……家事は交代な。んで……オレもよ、高等部行ったらバイトとかするし……だから、……な。あー、その」


 照れてる。無駄に喧嘩腰、かつ協調姿勢だ。可愛いなぁ。

 じゃなくて。


「私、就職決まったよ」


 その疑問はこれで溶ける。


「マジかよッ! 何処にだ!? つか、テメェに仕事できんのか? 遊びじゃねーぞ。つーかやっぱ高等部でもう決まるモンなのか。わかっちゃいたが、遊べんの今だけなんだな」


 なんか遠くの空を見つめて哀愁に暮れてた。モラトリアムを自覚した少年の瞳だ。


 判子は消えた。亜因果がある事は確定してる?


 でも、一番可能性のありそうな、

『亜因果はあるけど自覚は無い』って事に、どうして気付かなかったんだろう。


 私だってサッチだって、構成員くんもそうだったのに。


 それとも。

 本気でごまかしてるの? 私を騙してるの?


 ウォーモ・ド・ノーレは私が知ってもおかしくない単語だって言ってた。単に『誉れある男』って意味の外国語。


 それなら。


「あいんがまほうぃっちくらふとがくえんこーせーいん。わかる?」

「……あぁ!? も、もう一回言え。全然聞こえねぇ、つーかわかんねぇ」


 わざと抑揚を無くして、アクセントもずらして、念仏のように唱える。

 私の知らない筈の単語を並べる。特に亜因果なんて、普段耳にできない言葉。もう後に引けないの、気付いて。私は懇願するように、ラミィを見上げる。


「――――ラミィ、助けて」

「――――おぅ。任せろ」


 私の悲痛な声に、今まで造ってたよくわからない空気をぶち壊して、ラミィは力強く応えてくれた。頼り甲斐があるなぁ。


「あいんがまほうぃっちくらふとがくえんこーせーいん」

「………………」


 ラミィは真剣だった。真剣に、私が何を言おうとしてるのか、聞きとろうとしていた。


 わからないの? それぞれの単語を知ってるなら、それとなくわかる筈でしょ?


「おいッ! ちっと来い!」


 終いには離れた所でだべってた二人まで呼びつけた。


「あいんがまほうぃっちくらふとがくえんこーせーいん」

 虚ろな目を作る。項垂れる。なんか後に引けない。


「これ……なんて言ってるか、わかるか?」

「えぇー。なにこれ……やばくない? 何したの?」とB。

「…………」とC。


 三人はそれぞれ、私の頬を叩いてみたり、肩を揺すったり声を掛けてみたり、してきた。


 そして解読に入った。


「なんかさっきもよくわかんねー事いってた。ウォーなんちゃらって。あとオレ、知ってる。『あいん』って1って意味らしーぜ」


 意外なのは、いつもプラプラしてるBまでもが真剣な顔をしてた事だった。


「総合すると……」

「『1釜、法一致、クラスと学園構成員』?」


 うん、学園構成員は当たってる。『ス』は『フ』ね。


「えー? どういう意味ー?」とBはお手上げ。


「わかんねぇ。最近おかしいと思ったが、つーかさっきもなんかおかしかったが、ここまでってのは……つか、その前まで普通だったんだぜ? さっきのヤツ……『後輩』とか言ってたか? 顔、覚えてるか?」


 あ、疑いが構成員くんにまで伸びた。数日前の私と被る。もういいや。よくわかった。自覚、無いんだ。


「はい。結果を発表しまーす」


 突然、まともに戻った私に、三人は絶句する。


「満点ではないけど、そこそこでしょう。合格~」


 そのまま、無言がしばらく続く。多分、頭の中では『今度は意味のある事を喋ったが、その意味がやっぱりわからない』とか考えてるんだろうなぁ。


「恋占い、って言ったでしょ。『意味不明な行動してみて反応を見てみよう』ってコーナーでしたー」


 そう説明しても、ずっと無言だった。しばらくして、合点がいったものの、何も言えないでいた三人。


「くっっっっっだらねぇえええええ!!」

 ラミィが、代表して叫んだ。


「そういうのは一瞬だけにしとけや! もう信用しねぇからなッ! つか、あいつ誰だよ!?」


「だからー、後輩だって。ちなみに最近、彼女が出来たんだー。……だから、見本?」


「今日のやりとりのどこが見本になんだよッ」


 ラミィは怒ってる。これは一日ぐらいずっとこのままな怒り方だ。

 仕方ないよね、ごめんねー。


「『なんか遊具に寄りかかってずっとこっちを見てる不審なヤツがいる』とかさー呼び出されたオレ達、なーに?」


 不満を垂れるB、無言のCはゲンナリしてた。


『その場に人物が居ると断定しなきゃ見えない』かぁ。そういえば構成員くん、ずっと同じ所居たね。だから見えたのか。ラミィが見えたのは……亜因果のため? 私が居ない間に、二人を呼んだのか。呼ばれた二人は不審者として構成員くんの居場所を断定してたから?


 不満を垂れ流す三人に、私も言いたい事があった。


「私の後輩くんになにもしてないよね? 誘ったの私なんだけど」


 ラミィはそっぽを向きながら吐き捨てる。


「だろうな。こんなけったいな事、思いつくのが二人も居たら、進学躊躇う」


 BはCに同意を求める様に続ける。


「いやー、後輩だろー? 聞こえてたってー。優柳の後輩って事は、春からさー、オレらのセンパイじゃん? まずくねー? 高等部入ったら、ヤンチャやめる予定はー?」


 割には堂に入った脅しだったけど。……あの時はただの不審者扱いか。


「じゃー、フォローしに行ってくるから」


『おぅ』とラミィ、『よーろしくー』とB、『……』無言のC。


 三者三様で見送うとしてくれた。


「あのよぉ」


 でも歯切れの悪いラミィの台詞が私を引き止めた。


「あの話、どうなんだよ」


『一緒に住もう』かぁ。そういえば意外だなぁ。まずそんな発想無かったし、さらにはラミィの方からそんな事持ちかけて来る事も意外だ。


 これはやっぱり。アレかなぁ。一度したから、癖になったのか。


「そんなにしたいの?」


 それを聞いたラミィの顔が、照れ顔から一瞬にして冷酷な表情になる。


「良く解った。もう行っていいぞ。この話は忘れろ」


 あれま。声も今の気温より冷たく、黒い。三日ぐらい口聞いてくれないパターンになってしまった。そんなラミィを庇うようにBがしゃしゃり出てきた。


「あーん、えーとねー、うーん、ラミィはー、ねー?」

「気持ち悪いよ、それ。……私の真似だったら許さない」

「なんだよー。……コイツはなー、オレがさー、大学行ったら、年上の大人っぽい優しい良い男がたーくさんいるんだぜってちょーっと言ったらその日のうちに――――」


 うん、大体はわかった。Bが『何故ラミィがそんな事を言い出したか』を言い終わる事はなかった。


 ラミィが少し、身動ぎした。でもそれは、足から腰へ、腰から肩へ、肩から腕へ、腕から手の甲まで、最小限で全ての筋力を瞬間的に一点へ発揮する為のものだった。


 鋭い裏拳が、Bの顔面を捉えている。乾いた音が響く。


『ケフッ』とか変な声を上げ、半身を捻りながら倒れこんだB。ものすごく痛そう。しばらくぴくぴくしてから、ゆっくりと立ち上がる。


 そんなBは闘気に揺れていた。普段の間延びした喋りもなくなっている。


「――――オイコラ。今のはシャレんなってねーぞ」


 本当に痛かったらしい。なにかスイッチ入ってる。


「シャレで済まして欲しいなら頭取れるまで土下座しろ」


 なんかラミィの方もスイッチ入ってる。気がついたら、叫び声と共に取っ組み合いが始まってた。


 私が大学でモテモテだって? 私は学園で『絶世の美女で悪女でロボットでレズビアン』って思われてるのに。多分大学に行っても変わらない……というか、強制的な関わりが少ないから、もっと独りになると思うんだけど。……知らないって、いいね。そう思われて悪い気はしないから、訂正はしない。


「じゃあ、後よろしくー」


 私はCの肩をポンと叩いて、原付に向かって歩き出す。その背中に、普段喋らないCのボソリと忠告が飛んだ。


「試すな。必要ねぇだろ。特にテメェ等、二人にはな」


 一瞬だけ、何を言われるのか、ドキッとした。


 でもそれはよく噛み砕いてみれば、甘いものになる。私とラミィの二人を認めるような祝福にさえ感じた。


「そーしとく」


 私は素直に返事したけど、Cから更に何か言う事は無かった。そのまま私は原付にまたがって帰路に着こうとする。鍵を差し込んで、回した。


 まるで体中に羽が生えたような、清々しい気分だった。


 後ろで、血混(ちま)じりの唾液とか強固な拳とかが飛び交ってなければ、もっと良かったな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ