5場
「まずは、貴女に電話を掛けてもらいます。その会話の中にキーワードを仕込み、カマを掛けてみます」
そう言って、構成員くんは小さな紙を差し出してきた。
『ウォーモ・ド・ノーレ』と書いてあった。何語だろ。英語ではなさそう。フランス語かイタリア語辺りかな。
「なにこれ。挨拶?」
「見ましたか。覚えましたか」
私が頷くと、紙は構成員くんに奪い取られてしまった。
「キーワードの選出には手間取りました。直接的ではいけない。でも確証が取れる単語でないといけない。そして、貴女が知ってもおかしくない単語でないといけない。その3つの条件を満たす単語です」
「でー? その意味は?」
「下手に知らない方がいいでしょう。……そもそも、その単語を直接言う訳ではありません。似た日本語を、こう、仄めかして反応を伺うんです」
「ぼかしてって、なんて? かなり外国語チックだけど」
「それを一緒に考えて頂きたいのです」
「うーん」
悩む。そもそもどこにアクセントを置くのかもわからないしなぁ。あ、思いついた。
「『ホモの奴隷』とか?」
「む……早口で言えば聞こえなくは……ないですね。完璧です。それで行きましょう」
「え」
いいんだ。というか、どうやれば『ホモの奴隷』なんて単語をやり取りする会話が広げられるのか。そこまで私は口達者じゃない。それに主人がホモなのか奴隷がホモなのかもわからない。
「少し……時間を下さい。……緊張してきた」
そう言って構成員くんは荷物の中から缶コーヒーを出して開けてた。私は懐から携帯電話を取り出しつつ、待つ。
「冷静に考えてみたら、自分がかなり迂闊な事をしている気がしてきました」
電話かけるぐらいで大げさだなぁ。『少し』は終わり。
「貴女は知らなかった。という事は彼は貴女に隠してる事になる。それを僕が教えてしまったということになる。……優柳先輩。もし僕になにかあったら先輩を――」
構成員くんがなんか遺言を残そうとしてるけど、私は構わずダイヤルをプッシュする。
クイ、と缶を傾けつつ、私をチラリと見た構成員くん。数瞬息を飲む。ついでに口に含んだコーヒーも飲み込む、とはいかなかったらしい。驚きすぎてて。
たっぷり三秒、喉につまらせるように溜めてから、ゴックンと飲み込むに至った。
構成員くんがそんな面白顔して笑いをとろうとしてる間に、私は十一桁の番号を押し終わり、耳に当てる。
『なんでもう掛けてるんですかッ! 待って下さいと!? 自分が何をしてるか、わかってるんですか!?』
目でハッキリと何言ってるか解るほど口をパクパクしてた。
「何って……彼氏に電話掛けようとしてるんだよ。別にまだ繋がってないんだから声出していいと思うよ」
呼び出し音が一つ鳴る度、構成員くんは体勢を変えてた。土下座して拳をカーペットにプルプルさせてたり、力なく上体をだらし無くさせて『もう終わりだ』なんてしてみたり。終いには開き直ったらしい。切り替えが早くて大いに結構だ。どうにでもなれ、と一気に缶コーヒーを煽った所で。
繋がった。
「ウォ~モ・ド・ノーレ~。…………うわっ」
構成員くんが盛大にコーヒーを吹き出してた。まるで突然目の前に宇宙人が現れたみたいに固まってる。口からダラダラ流し、顎から滴り落ちるコーヒーもそのままだ。
あーあ。床が。新品のカーペットなのに。
『……あ? んだよ、うわ、って』
「あー……コーヒー零した」私じゃないけど。
『なにやってんだよ……んで?』
掛けてくるなんて珍しいな、なんか用か? と聞いてる。
「今日、公園来る?」
『あぁ、多分、午後からな。……なんで聞くんだよ』
確かに、今まで用事を聞いた事は殆ど無かった。言わなくても集まる。でも言わなくても来なかった事もあった。
「寒いでしょ。日曜なのにわざわざ出向いて、誰も来なかったらヤでしょ」
『だな』
短く、そう答えた。あぁ、これからはちゃんと次の日の予定、決まってたら教えてくれるんだろうなぁ、なんて思った。
「それだけ。じゃ、後でね」
そう言って切ろうとしたんだけど、止められる。
『待てよ。うぉーもどのーれ、ってなんだよ』
「あー、流行ってるらしいよ? 挨拶」
『――――嘘つけ』
重く、刺されるような言葉に、空気が凍った気がした。
その瞬間、私の顔は、顔面蒼白で顔だけは固めたまま床に零したコーヒーをタオルで拭ってる構成員くんと、同じだった。
その瞬間だけ、は。
『テメェが流行なんて知ってるわけねぇだろーが』
「――私にもね? ルームメイトくらいいるんだよ?」
『なるほどな。馬鹿っぽい響きだと思ったわ』
「ひどいなぁ。……んじゃ、後でねー」
『おぅ』
そうして、電話は切れた。
その結果は限りなく白に近かったけど、私は怒鳴られながら構成員くんに説教された。途中、構成員くんは泣きそうになって「本当に……! 本当に、お願いしますよっ。となんか土下座しそうだったからとりあえず謝っておいた。
「カマ掛けは失敗しました。……失敗して良かったのですが。それでも確証は取れてませんから。これを」
そう言って、構成員くんは小さな判子を渡してきた。
「魔法の判子です」
「へー」
蓋を取って中を除くと、反転した学園の校章が見えた。制服のボタンにも使われている略式だ。校章の判子って珍しいなぁ。書類に使うのかな。
私は手の甲に、それをポンと押してみた。
「やると思いました」なんて呟きながら睨まれた。だってダメだったらダメって言うし、そもそも私に渡さないでしょ、構成員くん。
「『魔法の』と聞いて、なにも思わなかったんですか」
グチグチとうるさいなぁ。
見ると、手の甲には何の印も無かった。インクが切れてるらしい。サッチに試した仕込みのくじ引きを思い出した。これもそういう風に使うのかな。
「『魔法のインク』とかかなーって」
「上手いこと言いますね。…………これが無いと、見えないんです」
そう言って更に取り出したのは使い捨てのコンタクトレンズだった。高いんじゃないのかな。
それを着けさせられた。かなり苦労したし、面倒なので右目だけ。
「ゴワゴワする」
「我慢して下さい」
そして手の甲を見ると。少々驚く。右目で見れば、確かに黒く、刺青の様にハッキリとした校章が見えるのに、左眼で見ると、その影も無い。
確かにすごい。でも、これぐらいだったら科学的な何かで説明できちゃいそうな気がするけどなぁ。地味な魔法だ。
更に襟裏に挿し込むマイクと、補聴器のようなスピーカーを装着させられる。ちょっとした探偵みたいだ。
『「本日は晴天なり。It's fine today」』
普通の声と、重なった補聴器からの声がほぼ同時に聞こえる。
「おっけー」
「大丈夫そうですね」
「これをつけたまま、彼に接触して頂きます。なるべく自然な形か、偶然を装うか、とにかく露見されないようにして、彼の直肌に、判子を押して下さい。それで判明します」
「押すだけでいいんだ。色でわかる、とか?」
「これは亜因果、魔法に関わる者にしてみたら焼きゴテのようなものです。消えないんです。例え皮膚を削っても、肉を削がれても、確かに残ります」
え、うそ。私が慌てて擦ってみても、肌が赤くなるばかりで確かに消えない。
あー、どうしよ。
「いい気味ですね。自重しないからそうなるんです」
「まぁいいか。……で? ラミィに使ってどうするの?」
「ぐ……立ち直り、早いですね」
「だって……」
実際、構成員くんが一生残るようなものをそうそう簡単に手渡す訳ないと思うし。もし本当に残るんだったら本気で怒る。サッチに言いつけるっていう切り札もあるし。サッチを、ひいては私を悲しませない事は吉祥天が保証してるし。
「恐ろしい人ですね。怖いもの知らずが一番怖い、とはよく言ったものです」
ちゃんと理由はあるんだけどなぁ。
「これは焼きゴテ、つまりは火傷を与えるものなんです。本当は魔法使いの判別に使うものです。パーセプション系列の魔法使いなら、触れた瞬間、叫び声を上げてしまうような代物らしいです。……何も知らない人間の魂にも、傷には自浄作用が効きます。……一応、言っておきますが一週間もすれば……長くても一月程で、その印は消えます」
わかってるって。
「彼が本当に魂に干渉できるのなら、その反応は明確なものとなる筈です。……これで、ハッキリします」
なるほど? よくわからないけど。
「それなら最初から判子で良かったんじゃない?」
電話する必要はあったのかな。電話代、私持ちだし。
「出来れば距離を置いた状態で確証が欲しかったんです」
構成員くんは溜息を付く。
……逃げるためかな。もしかして部屋の隅に積まれてる荷物の大半は、全力で逃げる為のものかもしれない。
「しかし、カマ掛けに引っかからないのであれば、実際に行動する他ありません。……引っかからない時点で、おびき出されているという可能性も捨て切れませんが」
まだ疑ってるのかぁ。
ラミィに亜因果があるか、無いか、構成員くんがすっきりするならいいけど。
「では、向かいましょうか」
そう言って構成員くんは立ち上がった。サッチを見て、少し躊躇いを見せる。
「あー、私がやるから」
「助かります」
そう言って、構成員くんは自分の荷物に向かう。私は四つん這いでサッチに寄ってって、アイマスクとヘッドホンを外した。外したというのに、サッチはふやけきってた。
「大丈夫?」
「……なに。終わったの?」
うーん。台詞と雰囲気だけ取ってみれば、恐怖のどん底から突然救いの光が見えた、みたいだけど。構成員くんもそう取ったらしく、目を逸らしてたけど。
「(どうだった?)」
「(すっごかった。何するの!? するわけないよね、でも何も見えないし聞こえないよ! 何もしないの!? 何もしないならなんでこんな事するの? まさか優柳と!? ありえないよね、でも確かめられないよ。ありえない、って思うほど、想像しちゃうよ! うぅ、あぁー! ってなるよ! すごかったぁ)」
小声で感想を聞いてみた。構成員くん、これ、貸してくれたりしないかな。しないか。
「先輩。僕達が戻るまで、部屋を出ないで下さい」
先に玄関口に立つ構成員くんが言う。
「あ……うん! 分かった!」
サッチは一転して、快活に答えた。『じゃ、行ってくるから』と私も挨拶を交わして部屋を出る。その時、構成員くんが何かボソッと呟いていた。システムがどうの……。二人で乗り込んだエレベーターの中で、それに思い至った。
「もしかしてまた、部屋ロックしたの?」
「はい」
「しれっと言うなぁ。いいの?」
「先輩が軟禁されてる事に気付く事はありません。外に出ない、と約束しましたから」
それぐらい気付く気がするけど。
エレベーターを降りて、エントランスを出る。真昼間だというのに、陽の光は見えない。灰色の雲が、空を埋め尽くしていた。寒い。マフラーしてくればよかった。
「でもラミィになんて紹介しよう。サッチの彼氏です、ってサッチ居ないのに私と同伴っておかしいよね。考えてあるの?」
「なんの為にマイクとスピーカーを用意したと思っているんですか。僕は近くで見てるだけです。まだ死ぬ訳にはいかないので」
今、構成員くんが手にしているハードケースを見た。中身のでっかい銃を思い出す。
「エイリアンとでも戦うつもり?」
「それ以上です。……僕がシュワルツネッガーでも、プレデターでも、安心できないでしょうね」
「あ、それ面白そう。ターミネーター対プレデター。もしくはエイリアン対ターミネーター」
「それは冗談ですか。名作に対する侮辱ですね。それと……残り一つの組み合わせは?」
「流石にそれは無いって私でもわかるよ。両方、敵だし」
二人して、寮の敷地を歩く。
「どうやってバレないように監視してるの?」
「今、僕の着ているコートです。魔法器……ウィッチクラフトとも呼ばれる代物で『意識迷彩』というものです。地下での現象と似たもので『そこに意識した人物が居る』事を断定していないと、他人には見えないのです」
え? それを信じるなら……。
「端から見たら、私、ずっと独り言?」
「いえ。今はフードを下ろしていますから」
「ならフード被ってよ」
構成員くんは言われるがまま、フードを被った。しかしその姿はそのまま。
「消えないね」
「……『居る事を断定していないと』と言った筈ですが。……そうですね」
構成員くんは立ち止まる。引かれるようにして私も立ち止まった。何する気だろ。そのまま、無言で2、3分そうしていた。私は消える瞬間を目撃してやろうと思ってたんだけど。急に「あの人でいいでしょう」と口にして近寄っていく。その先のバス停には、普通の主婦っぽい人が居る。構成員くんの手にはいつの間にか……え? ナイフ? ……が握られていた。
――――え。なにする気? 私がそう言う暇もなく。
更に正面に立って、暗示に掛けるように、その人のナイフを揺らしてみせたりしたけど……その人はなんの反応もしなかった。寒そうに、首に巻いたマフラーを整えたりしてる。
「お分かりいただけましたか」
戻ってきた構成員くんを伴って、再び歩き始めた。
確かにわかった。何か仕込みがあるのかな。
「そのコート、貸して?」
「絶対にッ! 何があってもッ! ……渡しません」
「あの人、やらせ?」
「懐かしいですね。僕も初めは、そうやって仕組みを探ろうと躍起になってました。信じられないなら、信じる必要は無いかと思います」
またしばらく歩く。公園まであと半分、といった所。
「吉祥天、抑える方法の当てってあるの?」
「正直な所、今はありません。ですがこの学園には多数の魔法使いが在席してますから。長く居れば、それだけ関わる事も多くなります。手掛かりも掴みやすいでしょう」
あー、そういえば殺し屋ちゃんも魔法使いがどうとか、それに魔法の判子? 魔法のコンタクト、魔法のコート。
「魔法って、実際にあったんだ。面白いね」
構成員くんは深いため息を落とした。
「貴女のように、気楽に受け止められたらどんなに楽だったか……。魔法使い、なんてお伽話の様な呼び名ですが、その実体は学園をモルモットの飼育場かなにかとしか見てない、マッドサイエンティストですよ。しかも自分の理論を実証しなければ気が済まないタイプです。最悪です。……亜因果は科学ではありません。それを研究する者も、研究者、科学者とは呼びません。だから魔法使いなんて呼ばれてるだけです」
「じゃー、生い茂る森の奥底に住まう魔法使いに会って、なにか試練を与えられて、クリアーできたらサッチが助かるーって話じゃないんだ」
「もしそうだったら、のうのうと貴女の相手をしている訳ないでしょう」
ひどいなー。ホント、扱い違い過ぎる。
「もっと……お金と時間、人脈と地位、知識と能力が必要な問題です。ですから貴女には平穏無事に過ごして頂いて、僕の実績になって貰わなくてはなりません。……だというのに」
なんか全能の人が出てきちゃったもんね。苦悩したくなるのも、なんとなく今のでわかった。しかもそれは徒労で終わる訳で、憐れだなぁ。がんばれ?
それにしても今更だけど。
「誰も聞いてないと思うけど……っていうか、私が聞いてるんだけど、ベラベラ喋って大丈夫なの? そういうの、ヒミツじゃないの?」
「殺し屋ちゃんから意見が来ていました。『生徒を救いたいと思う意志があり、色々な事を知ってしまって、その上でさらに知りたいのなら構成員に引き入れろ』と」
「なにそれ。あー……そういえば学食で言われたっけ」
構成員くんの表情が少し硬くなる。
「会長に直接、勧誘されたんですか」
「うん」
「殺し屋ちゃんの判断を疑うわけではありませんが……その……大丈夫でしょうか。優柳先輩の学業成績は神がかってますが、もっとちゃんと、優柳先輩の人となりを見て判断しないといけない問題だと考えるのですが」
疑ってるよ。そんなに私が構成員だと不服なの?
というか、構成員にって……。
「殺し屋ちゃんすぐ殺そうとするし。私とは正反対だよ。拳銃まで突き付けられたし。突きつけちゃった上、撃っちゃったし、私。ちょっと無理」
「銃を突き付け合うくらいなら、机を付き合わせて討論でもした方がマシ、という事でしょう。可能性は薄いですが理解しあえるかもしれません。……遺体の処理と隠蔽にはお金と時間と手間がかかりますので、それと比べたら瑣末な事でしょう」
「…………」
不満で暴れられるぐらいなら、手元に置きたい、と。
「それが? なんで私に話していい理由になるの? さっきも言ったけど、構成員なんてやだよ? 私。構成員くんの事、なんて呼べばいいのかわかんないでしょ?」
「それが理由ですか」
そんなワケないでしょ。足枕言葉だよ。
「『亜因果、魔法器、構成員の情報でもチラつかせれば釣られるだろう』……との事です」
「私がそんな餌に釣られると……あー」
『どうやって監視してるの?』
『そのコート貸して?』
『面白いね』
「…………」
「よく見ている、ので疑う訳ではないんですが。そんな優柳先輩を御する事が出来るという自信の表れでしょうか。如何に殺し屋ちゃんといえど、それは難しいと思うのですが」
もういいって。
「着いたよ」
「わかっています」
その声は、少し上ずっている。ベラベラ喋っていたのは、緊張の所為もあったのかな。
「あ、そうだ。聞いていい?」
「なんですか」『なんですか』
無線を駆動したらしい。声が二重に聞こえてちょっと変。
「構成員くんって、就職決まってるの?」
『突然なんなんですか、一体』
「いいから。ほら、早く」
『そうですね。僕の身に何か起こらない限り、ほぼ確定、という所でしょうか』
「サッチとか、私とか亜因果発現しちゃった生徒は?」
『それも同じです。本人の努力次第ではありますが、大体は望みどおりになりますよ。ただ、学園の息が掛かってる、または出資している、されている企業等に、という事だけは知らされますが』
「それって、大学に行く私でも、今決める事になるの?」
『はい。なるべく早く決める事が望まれます。企業も企業で、都合があります。優柳先輩? この質問になんの意味が? ……優柳先輩!?』
私の声色を機敏に察知した構成員くんが、何か言ってるけど、もう応えられない。だってもう、視界にはラミィが写ってる。当然、ラミィからも私が写ってる。
もしかして、昨日の晩のあの変な質問って。
『…………はぁ? 就職決まってんのかっ!?』
『多分そうなるんじゃない?』
『そうか……。なら、いい』
確認された? 私が亜因果を発現したか、どうか。
「亜因果を発現した生徒は就職が決まる。それって、周知の事実なの?」
『周知……? わかりませんが、学園の設立理由を知ってる人物なら、当然そういう発想になるでしょう。――――まさか』
「昨日、ラミィに聞かれた。就職決まったか、って」
『――――何故ッ! 貴女はッ!』
仕方ないでしょ。今思い出したんだって。学園の設立理由を知ってるんなら、亜因果のあれこれとか知ってるよね。
それも知ってるなら、当然、自分の事だって―――。
私はもう何も言えない。
だってもう8メートル先に、大仰に足を組んで、踏ん反り返ってるラミィが。
「よぅ。来たか」
不敵に笑ってる。




