表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/43

第8話 「冬の誓い」

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

九歳の冬。


辺境の山は、白い雪に覆われていた。

吐く息は白く、井戸の水には薄い氷が張る。


それでもレンの一日は変わらない。


朝は薪を割り、水を運ぶ。

昼は洗濯をし、馬の世話をする。


夜は誰もいない道場で木剣を振る。


「九百九十八……。」


「九百九十九……。」


「千。」


そして最後に。


「千一。」


百一回目の約束は、今も変わらない。


---


その夜。


あまりの寒さに、木剣を握る指の感覚がなくなった。

木剣が手から滑り落ちる。


ゴトッ。


レンは黙って拾う。


もう一度振る。


また落ちる。


何度も、何度も。


手の皮は裂け、血が木剣ににじんだ。


「……今日は、やめておけ。」


珍しく道場主が声をかけた。


「明日でもいい。」


レンは木剣を見つめた。

そして、ゆっくり首を振る。


「明日の千一回は……明日の千一回です。」


「今日の分には、ならないから。」


老人は黙った。

その言葉に、返す言葉が見つからなかった。


---


レンは木剣を握り直す。


痛い。


冷たい。


それでも振る。


ヒュッ。


ヒュッ。


一振りごとに、雪が舞い上がる。

やがて千一回目を終えた頃には、空から大粒の雪が降り始めていた。

レンは木剣を抱え、空を見上げる。


「来年も……振れるかな。」


その願いは、自分の強さではなく、「明日も今日と同じように振れること」だった。


---


道場主は、その小さな背中を見送りながら独り言を漏らす。


「強さとは、一日で手に入るものではない。」


「昨日を積み重ね、今日を積み重ね、その先にようやく見えるものだ。」


「この子は、まだ九歳。」


「だが、剣を続ける心だけは、誰にも負けておらん。」


雪は一晩中降り続けた。


翌朝、道場の庭には誰よりも早く、小さな足跡が一列だけ伸びていた。


その先では、一人の少年が静かに木剣を構えている。


今日もまた、新しい一振りが始まる。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ