表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/43

第6話 「初めての敗北」

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

八歳の夏。


レンの日課は変わらなかった。


朝は雑用。

昼も雑用。

夜になれば、一人で木剣を振る。


毎日、千回。


雨の日も。

風の日も。


一日も欠かしたことはない。


---


その日、稽古場では弟子同士の試合が行われていた。


「次!」


木刀と木刀がぶつかる音が響く。

レンは水桶を運びながら、その様子を横目で見ていた。


「おい、雑用。」


年上の弟子が笑う。


「お前もやってみるか?」


周りの弟子たちが笑い出す。


「すぐ泣くだろ。」


「木刀もまともに持てないって。」


レンは首を横に振った。


「僕は……。」


「いいから来い!」


腕をつかまれ、稽古場の中央へ引っ張り出される。

木刀を握らされる。

向かいには十歳の弟子。


「怪我しても知らねぇぞ。」


開始の合図。

レンは昼間に見た通りに構えた。


しかし——


「遅い!」


パシンッ!


木刀を弾き飛ばされた。

そのまま足を払われ、尻もちをつく。

勝負は一瞬だった。

稽古場は笑いに包まれる。


「ほらな!」


「雑用は雑用だ!」


レンは何も言わなかった。

木刀を拾い、静かに頭を下げる。


「ありがとうございました。」


そのまま水桶を持って持ち場へ戻る。


---


夜。


誰もいない道場。

レンは木剣を握る。


昼間の一撃が頭から離れない。


「僕は……弱い。」


初めて、自分の剣で誰かと向き合った。

そして何もできなかった。

悔しさが胸を締め付ける。


木剣を振る。


一回。


二回。


三回。


振るたびに、昼間の負けがよみがえる。


「もっと速く。」


「もっと強く。」


千回を終えても、レンは木剣を置かなかった。


千一回。


千二回。


千三回。


腕は悲鳴を上げていた。

それでも止まらない。


「勝ちたい……。」


その一言が、初めて素振りの理由になった。


---


翌朝。


まだ日も昇らないうちから、庭に木剣を振る音が響いていた。

道場主は縁側で目を閉じ、その音に耳を傾ける。


「負けは、人を折ることもある。」


「だが、本当に強くなる者は……負けを積み重ねる。」


老人は静かに目を開いた。

レンの素振りは昨日までと同じようでいて、どこか違っていた。


ただ回数をこなすだけではない。


一振り一振りに、明確な「勝ちたい」という意思が宿り始めていた。


その小さな変化こそが、三十年後に世界を震わせる剣の、最初の一歩だった。

お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ