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剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


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第34話 帰り道

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

王都を発つ朝。

空はよく晴れていた。


大会は終わった。

街にはまだ余韻が残っている。

屋台では昨日の決勝の話が聞こえた。

酒場からは笑い声が漏れる。

優勝したシオンの名を口にする者も多かった。


レンは荷物を背負い、宿を出た。

持ち物は来た時とほとんど変わらない。


木剣。

着替え。

少しの金。


それだけだった。


道場へ立ち寄ると、門下生たちが庭先で話していた。


「やっぱり強かったな。」


「シオンの最後の一本は凄かった。」


「あれは真似できねえな。」


「来年も見たい。」


皆、決勝の話で盛り上がっている。


レンは黙って聞いていた。


否定もしない。

肯定もしない。


ただ通り過ぎる。


カイルは門の近くで待っていた。


「帰るのか。」


「うん。」


短いやり取りだった。


カイルは城の方へ視線を向ける。

その先には闘技場が見えた。

決勝が行われた場所。


「あの場所で待ってる。」


レンも視線を向ける。


シオンが立っていた場所。

歓声の中心。

誰もが目指す場所。


「次は俺が行く。」


カイルは迷いなく言った。


「お前も来い。」


レンは少し黙る。


闘技場を見る。

シオンの剣。

老人の言葉。

師範の姿。


頭の中に浮かんでは消える。


来る前の自分なら。

何も考えず頷いていた気がする。


だけど今は違う。

分からない。


何のために振るのか。

何が違うのか。

何を見ているのか。


何一つ。


「俺は……」


言葉が止まる。


カイルが首を傾げた。


レンは小さく息を吐く。


「うん。」


そして少しだけ間を置いて言った。


「負けない。」


カイルは笑った。


「そうこなくちゃな。」


レンも頷く。


それ以上の言葉はいらなかった。


---


王都を離れる。

石畳が土の道へ変わる。

城壁が少しずつ遠ざかっていく。


馬車に揺られながら、レンは窓の外を眺めていた。


大会へ来る前。

自分は何を見ていただろう。


強い剣士。

強い剣。

強い技。


きっとそんなものばかり見ていた。


老人の言葉を思い出す。


“見えるものだけ見ておるうちは。

分からんかもしれんな。”


レンは静かに息を吐く。


結局、

シオンと師範の違いは分からなかった。


答えも見つからない。


それでも、

無駄ではなかったと思う。


少なくとも今は。


剣だけを見ているわけではない。

その剣を振る人を見るようになった。


少しだけ。

前よりも。


馬車が揺れる。


ふと、

リナの顔が浮かんだ。


“いってらっしゃい。”


出発の日の言葉。


レンの口元が少しだけ緩む。


帰ったら。

どうせ聞かれる。

大会はどうだったのかと。


レンは小さく苦笑した。


窓の外を見る。


遠くに見慣れた山並みが見え始めていた。


帰ったら。

また振る。


明日も。

その次の日も。

変わらず。


ただ一つだけ。

以前より少しだけ。


考えることが増えた気がした。


レンは木剣に手を置く。


答えはまだない。

分からないことばかりだ。


それでも、

振り続ける。


馬車は故郷への道を進んでいった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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