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剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


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33/43

第33話 何のために

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

大会最終日。


会場は満員だった。

残る試合は一つだけ。

決勝戦。

観客たちは朝から興奮している。


優勝者の予想が飛び交い、屋台も賑わっていた。


---


レンは静かに観客席へ座った。


やがて選手が現れる。

歓声が響く。


シオンの名前も何度も呼ばれていた。


礼。

構え。

開始。


決勝は激しかった。


ここまで勝ち上がった剣士同士。

簡単には決着がつかない。


剣がぶつかる。

距離が変わる。

互いに隙を探す。


会場が何度も沸いた。


レンは見ていた。


剣ではなく人を。


シオンは変わらない。


焦らない。

慌てない。


ただ相手を見ている。


相手の呼吸。

相手の動き。

相手そのものを。


やがて勝負が動く。


相手が踏み込む。

シオンの剣が動く。


一合。


勝負が決まった。


歓声が爆発する。


優勝。


会場中がシオンの名を叫んでいた。


だがシオンは静かだった。


剣を納める。

礼をする。


それだけだった。


---


試合が終わる。


観客たちが帰り始める。


レンも席を立った。


会場を出ようとした時だった。


「少しは見えたか。」


老人だった。


いつの間にいたのか分からない。


レンは少し考えた。


「剣ではない気がします。」


老人は黙って聞いている。


「人を見ている。」


「たぶん師匠も。」


老人は小さくうなずいた。


「そうか。」


しばらく沈黙が続く。


そして老人は言った。


「剣は人が振る。」


「同じ技でも違う。」


「守るために振る者もおる。」


「勝つために振る者もおる。」


「忘れぬために振る者もおる。」


老人はそこで言葉を切った。


「だからな。」


「何のために振るかを見るんじゃ。」


それだけ言って歩き出す。


レンは呼び止めなかった。


何のために振るか。


師匠は。


シオンは。


そして自分は。


答えはまだ出ない。


だが、

大会へ来た時よりも、

少しだけ遠くが見える気がした。


王都の空を見上げる。


明日には帰る。


レンは木剣を握った。


何のために振る。


答えを探すように、

静かに握り続けていた。

お読み頂き、ありがとうございます。

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