第33話 何のために
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
大会最終日。
会場は満員だった。
残る試合は一つだけ。
決勝戦。
観客たちは朝から興奮している。
優勝者の予想が飛び交い、屋台も賑わっていた。
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レンは静かに観客席へ座った。
やがて選手が現れる。
歓声が響く。
シオンの名前も何度も呼ばれていた。
礼。
構え。
開始。
決勝は激しかった。
ここまで勝ち上がった剣士同士。
簡単には決着がつかない。
剣がぶつかる。
距離が変わる。
互いに隙を探す。
会場が何度も沸いた。
レンは見ていた。
剣ではなく人を。
シオンは変わらない。
焦らない。
慌てない。
ただ相手を見ている。
相手の呼吸。
相手の動き。
相手そのものを。
やがて勝負が動く。
相手が踏み込む。
シオンの剣が動く。
一合。
勝負が決まった。
歓声が爆発する。
優勝。
会場中がシオンの名を叫んでいた。
だがシオンは静かだった。
剣を納める。
礼をする。
それだけだった。
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試合が終わる。
観客たちが帰り始める。
レンも席を立った。
会場を出ようとした時だった。
「少しは見えたか。」
老人だった。
いつの間にいたのか分からない。
レンは少し考えた。
「剣ではない気がします。」
老人は黙って聞いている。
「人を見ている。」
「たぶん師匠も。」
老人は小さくうなずいた。
「そうか。」
しばらく沈黙が続く。
そして老人は言った。
「剣は人が振る。」
「同じ技でも違う。」
「守るために振る者もおる。」
「勝つために振る者もおる。」
「忘れぬために振る者もおる。」
老人はそこで言葉を切った。
「だからな。」
「何のために振るかを見るんじゃ。」
それだけ言って歩き出す。
レンは呼び止めなかった。
何のために振るか。
師匠は。
シオンは。
そして自分は。
答えはまだ出ない。
だが、
大会へ来た時よりも、
少しだけ遠くが見える気がした。
王都の空を見上げる。
明日には帰る。
レンは木剣を握った。
何のために振る。
答えを探すように、
静かに握り続けていた。
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