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剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


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32/43

第32話 人

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

大会準決勝。


朝から会場は多くの人で埋まっていた。

残った剣士は四人。

観客たちは思い思いに優勝者を予想している。


レンは静かに席へ座った。


視線の先にはシオンがいる。


---


試合が始まる。


相手は強かった。

ここまで勝ち上がってきた実力者だ。


攻める。

崩す。

隙を探す。


何度も勝負を仕掛ける。


---


シオンは変わらない。


派手な動きはない。

無理に攻めもしない。


ただ相手を見ていた。


観客席から歓声が上がる。


だがシオンは反応しない。

相手だけを見ている。


剣が交わる。

距離が変わる。

呼吸が乱れる。

肩が動く。

視線が揺れる。


その瞬間、

シオンの剣が動く。


勝負は一合で決まった。


会場が沸く。

名前を呼ぶ声が響く。


レンは拍手を忘れていた。


見ていたのは剣ではない。


シオンだった。


試合中、

シオンは何を見ていた。


足か。

剣か。

身体か。


違う。


もっと全体を見ていた気がした。


ふと、

師匠の姿が頭に浮かぶ。


昔の立ち会い。

稽古場。

木剣の音。


師匠もいつも静かだった。


どれだけ攻められても。

どれだけ騒がしくても。


変わらない。


今思えば、

あれも相手を見ていたのかもしれない。


試合が終わる。

観客たちは興奮したまま次の話を始める。


レンだけが考えていた。


似ている。


その理由が少しだけ分かった気がした。


剣ではない。


人だ。


師匠も。

シオンも。


剣より先に、

相手を見ている。


だが、

やはり違う。


違いはまだ見えなかった。


それでも、

昨日よりは前に進んでいる気がした。

お読み頂き、ありがとうございます。

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