第32話 人
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
大会準決勝。
朝から会場は多くの人で埋まっていた。
残った剣士は四人。
観客たちは思い思いに優勝者を予想している。
レンは静かに席へ座った。
視線の先にはシオンがいる。
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試合が始まる。
相手は強かった。
ここまで勝ち上がってきた実力者だ。
攻める。
崩す。
隙を探す。
何度も勝負を仕掛ける。
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シオンは変わらない。
派手な動きはない。
無理に攻めもしない。
ただ相手を見ていた。
観客席から歓声が上がる。
だがシオンは反応しない。
相手だけを見ている。
剣が交わる。
距離が変わる。
呼吸が乱れる。
肩が動く。
視線が揺れる。
その瞬間、
シオンの剣が動く。
勝負は一合で決まった。
会場が沸く。
名前を呼ぶ声が響く。
レンは拍手を忘れていた。
見ていたのは剣ではない。
シオンだった。
試合中、
シオンは何を見ていた。
足か。
剣か。
身体か。
違う。
もっと全体を見ていた気がした。
ふと、
師匠の姿が頭に浮かぶ。
昔の立ち会い。
稽古場。
木剣の音。
師匠もいつも静かだった。
どれだけ攻められても。
どれだけ騒がしくても。
変わらない。
今思えば、
あれも相手を見ていたのかもしれない。
試合が終わる。
観客たちは興奮したまま次の話を始める。
レンだけが考えていた。
似ている。
その理由が少しだけ分かった気がした。
剣ではない。
人だ。
師匠も。
シオンも。
剣より先に、
相手を見ている。
だが、
やはり違う。
違いはまだ見えなかった。
それでも、
昨日よりは前に進んでいる気がした。
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