第29話 再会
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
「あれ?」
カイルが首を傾げた。
レンは木剣を握ったまま立っていた。
カイルはしばらく見ている。
懐かしいものを見るように。
そして。
「あぁ」
小さく頷いた。
「レンか」
レンは目を見開いた。
覚えていた。
正直、
覚えられていないと思っていた。
「久しぶり」
レンが言う。
カイルは笑った。
「大きくなったな」
「お互い」
そう返すと、
カイルは少しだけ吹き出した。
***
しばらく沈黙が続く。
カイルはレンの木剣を見る。
そして。
「何してたんだ?」
「さっきの試合」
レンが答える。
「思い出してた」
カイルは眉を上げた。
訓練場を見る。
地面には足跡が残っている。
何度も。
同じ場所を踏み直した跡。
「見ただけで?」
「うん」
「出来るのか?」
レンは少し考えた。
それから。
「出来ない」
と言った。
カイルは笑った。
「だろうな」
レンも少し笑った。
***
風が吹く。
訓練場には二人しかいない。
カイルが木剣を手に取った。
近くに置かれていた貸し木剣。
軽く振る。
ヒュッ。
風を切った。
「見ただけじゃ分からないぞ」
レンは頷く。
「うん」
知っている。
だから振っていた。
***
カイルは木剣を肩に担ぐ。
「来い」
レンが首を傾げる。
「一回だけだ」
訓練場の中央へ歩いていく。
レンは少し迷った。
そして後を追う。
向かい合う。
***
構える。
静かだった。
先に動いたのはレン。
一歩。
踏み込む。
木剣を振る。
届かない。
カイルが半歩ずれた。
試合で見た動きだった。
レンの木剣が空を切る。
次の瞬間、
首元に木剣が止まった。
終わりだった。
***
「速いな」
カイルが言う。
木剣を下ろす。
レンは黙っていた。
頭の中では別のことを考えている。
今の足。
今の間。
今の体重移動。
どうなっていた。
***
「聞いてるか?」
「見てた」
レンが言う。
カイルは呆れた顔をした。
「負けたんだぞ」
レンは頷く。
「うん」
それより。
どう動いたのかが気になっていた。
カイルはしばらく黙る。
それから。
「変わってないな」
と笑った。
***
空はすっかり暗くなっていた。
そろそろ宿へ戻る時間だった。
カイルが歩き出す。
途中で振り返る。
「明日も来るのか?」
レンは即答した。
「見る」
大会を。
試合を。
剣を。
全部。
カイルは少し笑った。
「そうか」
それだけ言って去っていく。
***
一人になった訓練場。
レンは木剣を握り直した。
半歩。
もう一度。
さっきの動きを思い出す。
踏み込む。
振る。
違う。
もう一度。
違う。
夜風が吹く。
訓練場には、
木剣を振る音だけが残っていた。
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