第27話 王都
この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。
王都へ着いたのは昼過ぎだった。
高い城壁。
見たこともない数の人。
門弟たちは騒いでいた。
「でかい……」
「人多すぎだろ」
「迷いそうだ……」
レンは何も言わなかった。
ただ見ていた。
門をくぐる。
剣を下げた者が歩いている。
槍を背負う者もいる。
道場で見たことのない武具。
見たことのない歩き方。
見たことのない構え。
視線が止まらない。
***
宿へ荷物を置く。
自由時間になった。
門弟たちは街へ散っていく。
レンも外へ出た。
気付けば、
人が集まっている場所へ向かっていた。
訓練場だった。
木剣を打ち合わせる音。
掛け声。
足音。
汗の匂い。
レンは端に立ち、
しばらく見ていた。
見たことのない型がある。
足の運びも違う。
相手の剣を受けず、
流すように避ける者もいた。
レンは目で追う。
何度も。
何度も。
***
気付けば夕方になっていた。
宿へ戻る。
門弟たちは王都の話で盛り上がっていた。
露店の話。
武具屋の話。
騎士を見た話。
誰もが王都を楽しんでいた。
レンは黙って聞いていた。
頭の中は別のことでいっぱいだった。
***
夜。
皆が寝静まった後。
レンは木剣を持って外へ出た。
月が出ている。
人気はない。
レンは木剣を構えた。
昼間見た剣士を思い出す。
足。
肩。
体の向き。
振る。
違う。
もう一度。
違う。
また振る。
昼間見た動きは出来なかった。
当たり前だった。
一度見ただけだ。
それでも、
レンは振った。
何度も。
「……こうじゃない」
足を動かす。
振る。
止まる。
やり直す。
また振る。
昼間、
訓練場で見た剣士。
あれはどう動いていた。
どこを見ていた。
なぜ間に合った。
なぜ届いた。
考える。
そして振る。
***
気付けば時間が過ぎていた。
九百九十九。
千。
そして。
千一。
最後の一振り。
レンは目を閉じた。
今日はたくさん見た。
知らない剣も。
知らない型も。
知らない人も。
それなのに。
分からないことの方が増えていた。
レンは小さく笑った。
嫌ではなかった。
むしろ、
少し嬉しかった。
木剣を握り直す。
見たいものが、
また増えたからだ。
明日から大会が始まる。
レンは空を見上げた。
そして宿へ戻る。
足取りは軽かった。
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