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剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


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第26話 行ってくる

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

王都への出発を明日に控えた夕方。


レンは村の外れを歩いていた。


理由はなかった。

気付けば足が向いていた。

畑の向こう。

見慣れた後ろ姿がある。


リナだった。


籠を抱えて立ち上がる。


「あ」


レンに気付く。


「レン」


少し笑った。


レンも小さく頷く。


***


「明日だね」


リナが言った。


「うん」


王都。


剣術大会。


その言葉を思い出しただけで、


少しだけ胸が騒いだ。


リナはそれを見ていた。


「楽しみ?」


レンは答えようとして、

少し考えた。


王都。


見たことのない剣。

見たことのない人。

見たことのない世界。


自然と口が開く。


「うん」


リナが驚いた顔をした。


「そんな顔もするんだね」


「?」


「楽しそう」


レンは首を傾げる。

よく分からなかった。


でも、

悪い気はしなかった。


***


並んで歩く。


畑道。


夕日が長く伸びていた。


「いっぱい見るんだろうなぁ」


リナが空を見ながら言う。


「うん」


「強い人も?」


「見る」


「すごい剣も?」


「見る」


リナが笑った。


「レンらしい」


レンも少し笑った。


何を見るのか。

自分でもまだ分からない。


でも、

見たいものはたくさんあった。


***


分かれ道。


二人とも足を止める。


明日になれば出発だ。


数日、

村を離れる。


レンは少し考えた。


それから言う。


「ありがとう」


リナが目を丸くした。


「どうしたの?」


「いや」


上手く言葉にならない。


だから、

それ以上は言わなかった。


リナも聞かなかった。


ただ頷く。


それで十分だった。


***


しばらく沈黙が続く。


風が吹いた。


レンは空を見上げる。


明日には、

あの先へ行く。


知らない場所へ。


そして。


「行ってくる」


自然と口から出た。


リナは少しだけ笑う。


いつもと同じように。


「うん」


「いってらっしゃい」


レンは頷いた。


そして歩き出す。


振り返らなかった。


***


その夜。


千一回目を終えても、

胸の奥のざわめきは消えなかった。


明日。


初めて、

道場の外の世界を見る。

お読み頂き、ありがとうございます。

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