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剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


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第24話 なぜ振るのか

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

翌日の夜だった。


ガルドはまた町外れの空き地へ向かっていた。


誰にも言っていない。

自分でも理由は分からない。


ただ気になった。

だから足が向いた。


レンはいた。


昨日と同じ場所。

昨日と同じように。

木剣を振っていた。


ヒュッ。


ヒュッ。


ヒュッ。


変わらない。


ただひたすらに振り続けている。


ガルドは木陰に立ったまま見ていた。


やはり面白くない。

型でもない。

試合でもない。


ただの素振りだ。


それなのに、

目が離せなかった。


やがてレンが木剣を下ろす。


汗を拭う。

空を見上げる。


その瞬間だった。


「また来たのか」


ガルドの肩が跳ねた。


「なっ!?」


レンは振り返らない。


それでも分かっていた。


「昨日もいたよね」


ガルドは姿を現した。


「気付いてたのかよ」


「うん」


あっさりだった。


「なんで言わないんだ」


「別に困らないし」


本当にそう思っている顔だった。


ガルドは少し黙る。


それから聞いた。


「なんでそこまでする」


レンが首を傾げる。


「何が?」


「それだよ」


ガルドは木剣を指差した。


「毎日毎日」


「誰にも教わってないんだろ」


「試合もしたことないんだろ」


レンは黙って聞いていた。


「型だってまともにできてない」


言い過ぎかと思った。


だがレンは怒らなかった。


「うん」


認めた。


「じゃあなんでやるんだよ」


ガルドには分からなかった。


強くなれないかもしれない。

認められないかもしれない。

笑われるだけかもしれない。


なら諦めればいい。


そう思っていた。


しかしレンは違った。


しばらく考えてから答える。


「好きだからかな」


ガルドは呆れた。


「それだけか?」


「うん」


「剣が好きなんだ」


月明かりがレンを照らす。


「見ているのも好き」


「振るのも好き」


「上手くいかなくても好き」


ガルドは言葉を失った。


そんな理由のために。


九年も、

続けられるのか。


レンは木剣を握る。


「それに」


珍しく言葉が続いた。


「師匠が言ってたから」


ガルドが顔を上げる。


「百回は命じられた数だ」


レンが木剣を構える。


「百一回目は、自分の意志で振る一回だ」


ガルドは黙って聞いていた。


「最初は百回だった」


「でも足りなかった」


「だから増やした」


「それでも最後の一本は残した」


静かな声だった。


自慢ではない。


誇りでもない。


ただ事実を話しているだけ。


「千本振っても」


「最後の一本を振らなかったら」


「なんか違う気がして」


レンは少し照れたように笑った。


「だから千一回」


ガルドはその顔を見ていた。


初めてだった。


レンが少しだけ、

師匠の話をしたのは。


そして気付く。


あぁ。


この男は、

強くなりたいんじゃない。


もちろん強くはなりたい。


けれど、

それだけじゃない。


木剣を振ることそのものを、

大切にしている。


だから笑われても続ける。


認められなくても続ける。


諦めない。


レンは再び木剣を振った。


ヒュッ。


風を切る音。


ガルドはその音を聞きながら思った。


自分は何のために剣を振っているのだろう。


強くなるためか。

勝つためか。

認められるためか。


それとも。


初めて、

そんなことを考えた。


夜風が吹く。


レンはいつも通り木剣を振り続ける。


そしてガルドは、

初めて最後まで帰らずに、その姿を見ていた。


お読み頂き、ありがとうございます。

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