表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
18/43

第18話 見取り稽古

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

師匠が亡くなってから数か月。


道場は以前と変わらず朝を迎えていた。

違うのは、師匠がいないことだけだった。


「構え!」


新しい師範の声が響く。

門弟たちが一斉に木剣を構えた。


レンは庭の掃除をしながら、その様子を見ていた。


踏み込み。

振り下ろし。

受け。

体の捌き。

視線。

呼吸。


少しでも見逃すまいと目で追う。


(今の足は……)


(どう動かした?)


(なんで当たったんだ)


(どうして防げなかった)


木剣がぶつかる。


その瞬間──


思わず箒が止まった。


「レン!」


怒鳴り声が飛ぶ。

レンは慌てて頭を下げた。


「す、すみません!」


「掃除中だろう!」


「はい!」


周囲から小さな笑い声が漏れた。


レンは再び掃除を始める。


けれど、

目だけは稽古から離さなかった。


学びたかった。


師匠はもういない。

型を教えてくれる人もいない。


それでも、

剣を学びたかった。


強くなりたかった。


どうしても。


どうしても。


***


道場の仕事を終える。


日が沈む。

町が静かになる。


レンはいつもの空き地へ向かっていた。


木剣を構える。

息を吸う。

そして振る。


一。


二。


三。


淡々と振り続ける。


途中から数は頭に入らない。


ただ振る。

ひたすら振る。


腕が重くなる。

足が痛む。

それでも止まらない。


やがて。


千本目。


木剣を下ろす。


肩で息をする。


レンは木剣を握り直した。


「千一」


木剣を振る。


風を切る音が夜に響いた。


師匠の言葉が蘇る。


***


“百回は命じられた数だ


百一回目は、自分の意志で振る一回だ”


***


昔は百一回だった。


それがいつの間にか二百になり。


五百になり。


千になった。


それでも。


最後の一本だけは変わらない。


千一回目。


自分の意志で振る一本。


レンは静かに木剣を構え直した。


昼間見た型を思い出す。


足を出す。

木剣を動かす。


「あの時は……こう……」


やってみる。


違った。

バランスを崩す。


もう一度。


違う。


またやる。


違う。


何度も。


何度も。


何度も。


それでも上手くいかない。


レンは悔しそうに唇を噛んだ。


「違う……」


師匠ならどうしただろう。


新しい師範なら。

門弟たちなら。


きっと簡単にできるのだろう。


けれど、

レンには教えてくれる人がいない。


だったら、

自分で探すしかない。


木剣を握る。


もう一度構える。


夜風が吹いた。


「一本ずつだ」


小さく呟く。


誰も聞いていない。


それでも。


レンは木剣を振った。


失敗する。


また振る。


失敗する。


また振る。


それでも。


諦めない。


強くなりたい。


もっと知りたい。


もっと学びたい。


その想いだけが、レンを動かしていた。


***


それから季節は巡り。


また春が来た。


お読み頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ