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剣の道~拾われた子が30年素振りを続け最強に至るまで~  作者: 涙目


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第10話 「約束」

この物語は全てフィクションであり、実在する人物、事件とは一切関係ありません。

リナが道場を訪れるようになって、半年が過ぎた。


父親の荷馬車に乗って、月に一度。

荷物を届けるたびに、彼女はレンを探した。


「レン!」


「こんにちは。」


最初はぎこちなかった返事も、少しずつ自然になっていく。


---


「また振ってる。」


夕暮れ。


いつものように、レンは木剣を振っていた。


ヒュッ。


ヒュッ。


リナは縁側に座り、頬杖をついて見ている。


「飽きないの?」


「飽きない。」


「毎日同じなのに?」


「昨日と今日では、少し違うから。」


リナは首をかしげた。


「何が違うの?」


レンは木剣を見つめる。


「昨日より、少しだけまっすぐ振れた気がする。」


「昨日より、少しだけ軽い気がする。」


「本当に少しだけだけど。」


リナは笑った。


「レンらしいね。」


---


帰る時間になった。


荷馬車へ向かう途中、リナは立ち止まる。


「ねえ、レン。」


「うん?」


「約束しよう。」


「約束?」


リナは小指を差し出した。


「いつかレンが剣士になったら、最初に見せて。」


レンは困った顔をした。


「僕は剣士じゃないよ。」


「雑用係だから。」


「それでも。」


リナは真っすぐレンを見る。


「レンは毎日頑張ってるもん。」


「きっと剣士になれる。」


その言葉に、レンは少し考えた。

そして、小さく小指を差し出す。


「……うん。」


二人の小指が結ばれた。


「約束。」


「約束。」


---


荷馬車が遠ざかる。


リナは窓から大きく手を振っていた。

レンも、小さく振り返す。


姿が見えなくなるまで。


---


その夜。


レンは木剣を握った。


「剣士……か。」


今まで考えたこともなかった。


自分は雑用係。

それでいいと思っていた。


けれど、初めて誰かが信じてくれた。


「なれる。」


その一言が胸に残る。

レンは静かに構えた。


一振り。


また一振り。


千一回目を終えたあとも、木剣を下ろさない。


「……約束だから。」


誰にも聞こえない声でつぶやく。


その夜、レンは千五百回まで木剣を振り続けた。


約束を守れる自分になるために。


遠く縁側から、その姿を見ていた道場主は静かに微笑む。


「人は、自分のためだけでは限界がある。」


「だが、誰かとの約束は、人をさらに強くする。」


夜空には、秋の星々が静かに輝いていた。


レンの剣の道は、まだ始まったばかりだった。

お読み頂き、ありがとうございます。

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