28:ガラクタ小屋
「ここ、というか、これですか?」
瀬古が黒い革手袋で鼻と口を覆って言った。
「そうです。ここは事件に関係ないんですが、念のため整理しろと。物を捨てるわけにはいかないので外に出すんですが、一人じゃ終わりそうにない……でしょう?」
林枯は試しに一歩、霧里に続いて部屋に踏み入った。
まさに足の踏み場もないので、何かの部品だったのだろう平らな鉄板に乗る。
が、その下から金属がぐしゃりと潰れる音がして、眉をひそめた。
(人が来るところじゃないな)
「他の所は綺麗なのに、ここだけぐちゃってしてますね」
ふと、今までずっと俯き気味だった火流が口を開いた。
「あぁ……言われてみれば、そうですね」
霧里も首を傾げる。
外観といい内装といい、このペンションに古臭い感じはない。
古さはあるが、家具の配置や物も整っていて小綺麗だ。
「まったく……」
瀬古が両手を上げかぶりを振る。
「林枯がいると、何ですぐ捜査モードになるんでしょうね。それより掃除を始めましょう。捜専はこういうの慣れてますから」
「あ、はい。まずはここのを一つずつ……」
霧里は我に帰って頷く。
林枯は一瞬(聞いたのはボクじゃないだろ)とカチンときたが、やりたくなさそうにスーツの腕をまくって作業に取り組み始めた。
冬に入って、金属に触れると静電気がぴりっと痛い。
それにこの部屋、窓がないから空気がこもって生臭いったらありゃしない。
作業が始まって幾分か経ち、林枯が内心毒付いていると、ふと、瀬古が火流の耳元へ口を寄せて何か言っているのに気づいた。
林枯が訝しそうに覗き見ると、瀬古が「いいんですか?」と目を丸くし、火流が「行っておいでよ」とのんびり笑った。
そして、火流が突然「あの」と声を張り上げた。
「どうかしました?」霧里がぶっ壊れたプロジェクターを頭上に掲げきょとんと尋ねる。
「ひとついいこと……あ、いや、いいことかはわかんないけど、思いついたんです。霧里さんは捜査が好きなんですよね」
「はい。えっと、そうです」
あの、なら、と火流は続けた。




