26:夢見るキリサトとペンション殺人事件
「アイドル心中事件を解決したって、ほんとなんですか?」
ハンドルを握る霧里の第一声がそれで、三人とも小さく吹き出しそうになった。
「えっ。な、なぜそれを」
珍しく目に見えて慌てる瀬古が質問する。
林枯が例の事件を解決したのは、"ちょっとした間違い"で片付けられたと、上司の酒蔵から聞いていたから。
「え?同じ班のひとが噂してたのを……。あの、とにかく、ほんとなんですか?」
語気は控えめながらも押し気味な霧里に、「はい。本当です、けど」と瀬古が言う。
「やっぱりですか?!」
その途端、車の運転が左右に少し揺れた。
「ひィ!」火流が戦慄して背筋を伸ばす。
霧里の瞳はきらきら輝いていた。
もちろん一抹の悪意もない。
「捜専は、捜一のサポートが仕事なんでしょう?だから事件を解決したって聞いて、敗北感も超えて……羨ましくなったんです。私、捜査になかなか連れて行ってもらえなくて……」
霧里の声は、進むにつれ萎んでいく。
「……」
林枯はミラーを静かに見る。
すると、後部座席の火流は思った通り、同情するような表情を浮かべて俯いていた。
(自分の身に危険が迫ったら、他人なんてどうでもいいくせに)
林枯はそう思いながら、(へぇ、捜一にも落ちこぼれもいて……。やっぱり……噂通りなのか)と薄く目を細めた。
林枯は窓側に傾けていた首を元に戻す。
「霧里さん。それで、どうしてボクたち捜専を呼んだんですか?」
「あぁ、そうですよね。ごめんなさい、違う話を長々。現場の片付けって電話では言いましたけど、あの、見た方が早いと思います」
四人の乗った軽自動車は、道脇に数軒家があるだけの道を進んでいく。
角を曲がり、やっとペンションが見えた。
今回の、殺人事件が起きた現場。
鬱蒼とした林に、それに囲まれた少し朽ちかけのどっしりした木造ペンションは馴染んでいた。
少し離れた駐車場に車を停め、降りる。
「昨日起きたんですよね。ペンション仮面殺人事件」
霧里に案内されながら、林枯は自然に尋ねた。
「はい。昨日の午後二十時から二十二時までの間に。亡くなったのはここのオーナーさんの籠島隆さん、四十六歳」
「すごーい。詳しいですね」
さりげなく自信ありげに語る霧里に、林枯は驚いた表情を見せる。
「捜査会議に出れないから、せめてと思って事件の資料は読んでるんです。……。あは。あ、それで、あるでしょう、例の仮面。今回も被害者の顔に乗せられていて____」
知りたがっている、仮面の情報。
林枯が密かに唾を呑んだ時、突然、
「ほんとに見たんだってばぁっ!」
と声が響いた。




