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25:三文芝居


圧が抜けるような音が鳴り、ドアが開いた。


林枯の思考は強引に現実へと引き戻され、瞬く。


「火流さん、着いたスよ」


「あ、うん」


駅で降りたのは林枯たちだけだったが、その時、高い澄んだ声がホームに響いた。


「あのっ、"捜専"の方々ですか?」


茶髪のひっつめとスーツという容貌の若い女が、ホームにひとりこっちを向いて立っていた。


化粧は薄く素朴だが、顔立ちはすっきりしている。


若い女の目線は、三人の中で一番小柄な林枯に向いている。


林枯は小さく息を吸う。誰にも見えないように。


さん、にっ、いち。スタート。


「合ってますよ!初めましてっ、捜専の林枯です」


林枯はあどけなく、上目遣いににっこり微笑みかけた。

そして両手を自然に前に出す。


「あっ、どうも。私、霧里舞(きりさとまい)です。捜査一課に所属しています」


霧里はなすがまま、林枯と握手した。

「ふふ」と少し戸惑いながら林枯に微笑み返す。


ひょこっと、次は瀬古が林枯の横に出てきた。


「私は瀬古燕と申します。電話で話を伺った者です」


「初めまして。ありがとうございました」


霧里は、黒いスーツにレザーの黒手袋の瀬古を見て、僅かに目を見張る。


そして、次は火流を見上げて、同じく興味深い、というように密かに見つめた。


白いぶかぶかのジャージと、社会人らしからぬ格好をしているからだろうか。


(……まったく)


霧里が自分より歳上なのはなんとなく分かったが、内心少し煩わしく思った。


林枯達が属する警視庁捜査一課捜査専門緊急支援係____要するに、雑用。


少人数、やりがいナシ、周りから白い目で見られているというアンドゥトロワの唯一無二の部署。


たとえ霧里が物好きなのだとしても、見た目如きでこんなに観察されてはまるでショーケースに入れられてるみたいだ。


「あ、そうだ。すいません。私から頼み事をしたのに。まずは現場に行きましょう」


霧里は思い出したように切り出し、四人は駅のコインパーキングに停めてあった軽自動車に乗り込んだ。


発車した時、後ろ座席から瀬古が囁いてきた。


「おまえ、かわい子ぶる相手選んでるわけ?」


もちろん後輩にあてる優しい語気ではなく、本人の性格よろしくトゲトゲしい。


「はい。それが何か?」


「いや……。別に。捜一とか、エリートってみんなそうしてるし。ぶっちゃけ見飽きたけど」


瀬古の表情は見えずとも、どこか声色が重くて暗いのは感じられた。


「なら、これはエリートに昇るための有効な手段というわけです。あまり口を挟まないでいただきたい」


すると、瀬古は「フーン」と白々しく返して、拍子抜けするほどあっさりと後ろに引っ込んでいった。


(……。何?)


いつもと違い、下手な三文芝居をしているような態度の火流と瀬古に、林枯は微妙に、緊張感とも言えない力が体にこもるのがわかった。


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