第九話 誤算
みんなと一緒に眠ることになり、一回りすると俺も慣れて来て普通に眠れるようになってきた。
人間の慣れとは恐ろしいものだと思う。そして俺自体も一人で眠ることに抵抗を覚えるようになっていた。
一度、溺れてしまうとそのまま溺れて沈みゆくようにだ。
俺も人間だ、余程人恋しかったのだと今更ながら思う。だけど後悔はしていない。
今の生活が俺にとっては何より大切で、かけがえのない大切なものだから。
ただ、弊害として一つ問題があった。
それは・・・。
「あの~、カレン。さすがにその姿は・・・。」
「なに? 変な格好していないわよ? ねえ、みんな。」
「うん、そうだと思うよ和にい。」
「女の子の当たり前。」
「あはは、女の子は男の子が思う以上にズボラなもんだヨ?」
そう、カレンがタンクトップ一枚に下着のパンツといった姿でキッチンで牛乳を飲んでいた。
流石に目のやり場に困ってしまったので、声を掛けてみた。
が、カレンがほかのみんなに同意を求めると、さも当然と言った返事と賛同が返って来た。
「だいたい、夜はこれに薄布一枚で一緒に寝ているんだから見慣れているでしょうに。」
「う・・・。だけど。」
「もう、だけどもへったくれもないよ、和にい。
私達は和にいには見せてもいい、見てもらいたいって思っているもの。」
「そう、私達だって、もっと和にーちゃんに知ってもらいたい。本当の私達を。」
「そうだヨ。肩肘張らずに大木さんと過ごそうって決めたんだよ。
ありのままで生活しようって。
頑張る時は頑張る、息を抜く時はありのままでってね。」
そんなことを言いながら昔はやったそんな曲のメロディーを口ずさむいのり君。
他のみんなもそれに合わせて口ずさんでいる。
つまるところはそういう事、らしい。
最近は夜リビングで寛いで居る時も俺の部屋に来る寝間着であったり、ラフな格好でいることが増えたと思う。夜ごはんが遅い日なんてみんなあの格好だったりして、心臓に悪い。
時たま心で般若心経を唱えたくなっている。
しかも、やたら密着されてくるようになった。基本誰かといると、隣や足元に来てくっつかれている。
みんな曰く、甘えたいだけだ、疲れを癒していると言われ反論できなかった。というより、邪魔をするなと睨まれてしまった。
ホント、最近は主導権がみんなに移っているような気がする。
俺が軽んじられているわけではないが、かといって俺が優先されているとも言えない何とも言えない状況だ。
みんなには互いにいい思いしているから、おあいこだと言われると押し黙るしかなかった。
俺だって健全な男だからね。
だけど、越えられない一線はきちんと線引きしておかなければならないと日々気を引き締めている。
そして今日は楓ちゃんと一緒に眠る日だ。
俺はこの日が一番心がざわつかずに落ち着いて眠れるんじゃないかと思う。
なにせ、ネグリジェやベビードールではなくキャミソールとショートパンツだ、他の子と異なり刺激がマイルドだしね。
そんなことを思っていると部屋に楓ちゃんが入ってきた。
「和にーちゃん、早く寝よう。今日は疲れたよ。」
「わかったよ。さ、ベッドに入ってお話でもしようか。」
「うん。」
楓ちゃんがベッドに入るので俺も机でしていたことを一旦やめてベッドに入る。
「和にーちゃんはやっぱり温かい。」
「そうかい?」
「うん、今日はとっても疲れたから、なおさら。
ルイジのバイトも最後の方だし、任せてもらえることが増えて大変。」
「そうか。まあ、啓介やいのり君、茉莉ちゃんも能力が高い楓ちゃんに頼りっぱなしだって言っていたよ。」
「そんなこと聞いたことがない。」
「そりゃ、みんな恥ずかしくて口にしていないだけだけど。ホント感謝しているよ?
啓介が、もしよかったらこのままバイトを続けられないかって言っていたよ。」
「・・・魅力的な提案だけれど、私は勉強が一番かな、今は。
ただ、長い休みとかには入って良いかも。」
「わかった。啓介にはそう伝えておくよ。」
「お願い。和にーちゃん。」
そう言って楓ちゃんは俺の足に足を絡めてくる。
「和にーちゃんを抱きしめるととても気持ちい。疲れが癒される。」
「なんだか、添い寝人形の気分だよ。」
「うん、でもそれより気持ちがいい。越えられない壁。」
「はは。うれしいね。」
「そう。だからギュッとして寝るの。」
そう言って身を寄せてくる。
「そう言えば、もう週末には学園祭だけど準備は順調かい?」
「うん、もう後は本番を待つだけ。私と美里のやることはほとんど終わっている。
メイド服のお直しをしてくれる子たちからも終わったって連絡が来て、試着済み。
会場の設営の備品も準備完了。
だから、後は風邪を引かないように和にーちゃんにくっついて休むのが重要。」
「なら、よかったね。
ほんと風邪だけは引かないように気負付けなきゃね。
キチンと抱きしめて眠ってくれ。」
「そうする。そのための和にーちゃん枕。」
それ以外にもいろいろと他愛ない話をして、俺達は眠りに落ちた。
しかし、そんな話をしていると悪いことはホントになるもんで・・・。
「・・・。やけに熱いな・・・。」
朝、俺は体に熱さを感じて目が醒める。確か隣では楓ちゃんが眠っているはずだ。
隣を見やると俺を抱きしめながら、息を荒くして顔が赤くなり体が熱い楓ちゃんが眠っていた。
額に手をやるとかなり熱くなっていた。
俺は楓ちゃんを起こさないようにコッソリとベッドを抜け出し急いでキッチンに向かった。
今日はいのり君が実家に居るので、茉莉ちゃんとカレンがモーニングルーティーンを終えて朝ごはんの支度をしていた。
「二人とも、おはよう。」
「おはよう、和にい。どうしたの?」
「おはよう、和樹。何かあったの?」
「楓ちゃんがすごい熱なんだ。」
「ほんと?」
「最後の最後にやって来たわね。」
「ああ、だから氷枕と着替えをくれないかい?」
「わかったわ。」
「私は楓ちゃんようにお粥を作っておくね。」
茉莉ちゃんとカレンが手分けして準備をしてくれる。
俺はその間に体温計を持って部屋に戻り体温を計測する。
当然熱が高い。この間の茉莉ちゃんのような高熱ではないが確かに高熱と言っても過言ではない体温だった。
「過労からの風邪かなぁ・・・。」
最近、ずっと動いていたのは楓ちゃんだけだったからな。
他のみんなは風邪を引いてからは用心していたからね。
そんなことを思っていると楓ちゃんが目を醒ます。
「う、うぅ。頭が痛い・・・。」
「おはよう、楓ちゃん。大丈夫かい?」
「頭が痛くて、寒気がする。」
そう言って布団の中で包まるように丸まった。
「楓、大丈夫?」
そう言ってカレンが暖かいパジャマを持ってやって来た。
それをカレンが寝間着の上から着せてくれ、茉莉ちゃんが氷枕を持って来てくれる。
「楓ちゃん大丈夫? 学校には私が連絡しておくから、和にいに病院に連れて行ってもらって、早く治さないとね。」
「うん・・・。学園祭までには治さないと・・・。」
「そうだね。病院が開いたら一番で見てもらえるように行こう。
兎に角、早く休んで治してしまって、学園祭に間に合わせよう。」
「うん。」
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