第八話 施行される法
みんなが俺と交代で一緒に眠ると言う話があれよあれよという間に決まってしまった。
俺も反対するべきであったのだろうが、寂しさに負けて反対できずにいた。
所謂、消極的賛成というやつだ。
そんな俺を差し置いて、みんなは順番を決める話に熱中していた。
小耳に挟まる会話の中身は男の俺に聞かせていいのかというような女の子の話まであり、そんな話を赤裸々に話されて俺は肩身を狭くしていた。
「和にい。聞いてる?」
「へ? あ、ごめん、ボーっとしていたよ。」
「和にーちゃん、ごめん。話がおわったから。」
「ああ、それでどうなったんだい?」
「今日は私ね。」
「うう・・・。悔しいよぉ・・・。体のばかぁ~。」
「それで明日は私。明後日はお姉ちゃんでいのりんはいろいろあって一回飛ばしで、またカレン。」
「そうか。本当にいいのかい、みんな。」
「何言っているの、いいからこういう話をしているんじゃない。
男なんだから、鷹揚と受け入れなさい。」
それでこの話はおわり、しばらく久し振りにみんなとの団欒の時間を過ごすことが出来、楽しかった。
みんなそれぞれ頑張っているのでそれぞれの話題が尽きることがなかった。
カレンと茉莉ちゃんは数週間後に開店する店について話してくれた。
カレンは店の名前は実家の店の名前にして、旅行雑誌の伝手で話を持っていったら早速取材の申し込みが何件もあると言っていた。
茉莉ちゃんはバイトだけれどもフロアチーフとしてカフェテリアの管理を任されるということで緊張していた。まあ、茉莉ちゃんがカレンに次いで店については今は詳しいからね。
いのり君は両親の話や、啓介とジャンさんの共同で出す店の話をしてくれた。
最初はメインに二人を押し出そうとしていたが、いのり君の実力、才能を二人が認めてくれてかなりいのり君を関わらせているという話だ。結果、二人からは地獄のような修行を付けられているけど、楽しいと言っていた。
最後に、楓ちゃんはみんなに学園祭の招待状を渡してくれた。
来週末には学園祭が始まるので、最後の追い込みをしているそうだ。
立花さんと二人でルイジのバイトで得たノウハウをクラスのみんなにレクチャーしたり、内装を作ってくれている他のクラスの子からの予算の折衝やいのり君に頼んでいる料理の手配に忙しいけれど楽しみだって言っていた。
目標は茉莉ちゃんと百合子君のクラスが昔出していた和風喫茶の人気を超えることだと立花さんと言っていた。
そんな話を聞いて茉莉ちゃんは苦笑いしていた。一体何があったんだろうか。今度聞いてみよう。
そうして、みんなごはんやお風呂を済ませて就寝時間となった。
俺は準備があるから後から来ると言うカレンに先に部屋で寝ていろと言われ、先にベッドの隅で丸まっていた。
流石に女の子と二人で眠るのはある意味で緊張する。
亜咲とは自然と当たり前に寝ていたので、こういう感覚にはなったことがなかった。
なんだか初々しい思いをしている。
しばらくすると部屋の扉が開き、カレンが入ってきた。
カレンはサイドテーブルのライトをつけて枕をセットしているようだ。
「和樹、入って良いかしら。」
「ああ。・・・!?」
俺はカレンの方を見て固まってしまった。
それもそのはず、カレンの寝巻姿が問題だった。
「これ? 可愛いでしょ。お気に入りのネグリジェなの。
二人で眠ると暑いかと思ってこれにしたのよ。」
カレンが来ていたのは薄いネグリジェだ、しかも下着がうっすらと見える・・・。
この間は普通のパジャマを着ていたはずなんだが・・・。
俺は顔を赤くして反対を向く。
「ふふ、そんな反応しなくて、堂々と見ればいいのよ。これから他の子たちもこんな格好だと思うわよ。
それに下着じゃなくてちゃんとした寝巻よ? 和樹になら恥ずかしくないしきちんと見て欲しいのよ。
ね? だからこっちを向いて、感想を教えて。」
そう言ってカレンは俺を振り向かせる。
「・・・。カレンらしい大人っぽい雰囲気で美しいと思う。」
「うん、ありがとう。それじゃあ、入らせてもらうわね。」
そう言ってベッドに潜り込み俺にくっついてきた。
「和樹は温かいわね。ほら、やっぱりこれにして正解だったじゃない。
パジャマだったら暑くて布団を蹴飛ばいしちゃうわね。」
そんなことを言いながら俺の頭をなでてくる。
俺は緊張してカチコチになっていた。
「ふふ、緊張しているってのが解るわ。可愛いわね。
でも、私だって、私達だって緊張しているのよ?」
「なら、こんなことを言い出すというか、こんな寝間着にしなければよかったんじゃないかい?」
「いいえ、そんなことはないわよ。これは女の子の戦闘服でもあるのよ。
あなたはこれを見て褒めて、抱きしめてあげるのが甲斐性ってもんでしょ。」
ぎゅっと力を込めてくるカレン、心なしかカレンも熱いようだ。間違いなく顔が茹でだこのように赤くなっているに違いない。
「わかったよ。そうさせてもらうよ。」
俺はそう言って抱きしめ返す。カレンは俺の胸に頭を預けて嬉しそうにする。
「まったく。鈍感なんだか、タラシなのかはっきりさせなさいよね、バカ。」
それからしばらく俺とカレンはいろいろ話をした、緊張したのは最初の方だけで暗がりの中では寝巻のことなどは直ぐに忘れて互いに話に夢中になって、自然と眠りに落ちていた。
そして、翌朝・・・。
「う、うう。」
俺は目を醒ます。心なしか胸の方が重たく、隣には人肌の温もりがあった。
そうか、昨日みんなが俺と一緒に眠ることを決めて、カレンが寝たんだったな・・・。
隣を見やるとカレンがいた。
目を醒ました俺に気が付いたようで、はにかみながら挨拶をしてくる。
「おはよう。和樹。
ふふ、なんだか気持ちのいい朝ね。」
「おはよう。カレン。確かに暖かいね。」
「そうね。さ、私は先に起きさせてもらうわ。」
そう言ってカレンはベッドから出ていく。
出ていくと・・・。
昨日は暗がりで良く見えなかったネグリジェがハッキリと見える。
正直言って刺激が強い・・・。
「もう、そんな顔をしないで。こっちまで恥ずかしくなるわ。
いい? これから和樹は毎日これを見ていくんだから、平然としていてちょうだいな。
どうしてもって言うなら好きにしてくれたっていいんだからね。」
「さすがにそれはちょっと・・・。いくら何でもダメだろ。」
「ふふ、そう言うところも好きよ。
でも、今の話は本当だから。
前にも言ったでしょ?
覚悟を決めた女は怖いわよ?」
カレンはそう言って、ベッドの横に落としていたガウンを羽織って部屋から出て行った。
これからって、他のみんなもなのか?
俺はある意味、どういう気持ちでいればいいのかがわからなくて困惑していた。
もしかして、流されるまま俺は開いてはいけないみんなのパンドラの函を開いてしまったのではないのだろうか?
その予想はすべて的中することとなった・・・。
茉莉ちゃんもカレンと同じようなネグリジェで、いのり君はシルクのベビードールで、楓ちゃんはキャミソールにショートパンツといった出で立ちでベッドに潜り込んできたのであった・・・。
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