第十話 集中休養
楓ちゃんが突然熱を出してしまった。
最近我が家で風邪が流行っていたが、他のみんなが風邪を引いても楓ちゃんは元気に活動していたし、予防に気を遣ってもいた。
それに茉莉ちゃんといのり君の風邪が治ってからしばらくしていたので、もう大丈夫だろうと油断があったのかもしれない。
だが、実際は異なり週末に学園祭を控えた最悪の時期に風邪を引いてしまった。
直ぐに治ってくれればいいが、長引いてしまえば学園祭に出ることもできないし、うまく熱が下がっても体力が低下していて、出た後にぶり返して来たら元も子もない。
俺達はとにかくそういう事が無いように行動しようという話をして、二人が大学に行くまでに栄養のある料理を用意しておいてもらうことにした。
今日はいのり君は実家から学校へ行って、ルイジのバイトをしてから帰ってくるのでそれまでは俺と楓ちゃんの二人っきりになるのでとにかく朝の今の時間に出来ることを出来るだけしておきたかった。
「・・・はい。しばらく熱が下がるまで様子を見ようと思います。はい、そう伝えておきます。
失礼します。」
茉莉ちゃんが学校に連絡してくれている。
カレンはメッセージを立花さんに送っているようだった。
「楓ちゃん、先生も準備の疲れが出たんだろうから、本番までゆっくり休んで回復させて元気になって出ておいでだって。」
「美里も驚いていたけど、同じことを言っていたわ。
それに準備は粗方終えているから後は自分たちで何とかするからとにかく本番までに回復してって。」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん、カレン。
あとで美里にはメッセージを入れておく。」
「そうしたらしっかりと休んで早く回復させないとね。」
「そうする。お姉ちゃんごはん食べたい。」
「食欲はあるの?」
「あんまり・・・。でも、食べないと回復しない。」
茉莉ちゃんが用意していたお粥をそこそこ食べてベッドに横になる。
その横にはスポーツドリンクが置いてあり、ラッパ飲みで飲んでいる。
「早く水分を補給して、栄養を取って治すしかない。
和にーちゃん、病院に行く時間まで休んでいるから、お姉ちゃん達の相手をしてあげて。」
俺はそんなことを言われ、部屋から追い出されてしまった。
そして、二人が用意してくれていた朝ごはんを一緒に食べ始める。
「楓は治すのに必死ね。」
「ああ、あれだけ頑張って準備して楽しみにしてきたんだ。本番休んじゃったらかわいそうだよ。」
「だよね。欧女の学園祭は毎年毎年が楽しみだからね。」
「そうなんだ。」
「そうだよ。いっぱい予算と時間を掛けて準備してくるんだから思い入れがあるよ。」
「そうなんだ。そう言えば大学部でも学園祭があるんじゃないのかい?」
「うん、でも私もカレンさんもサークルや部活動に入っていないからね。」
「そうね。それに私達はお店の開店準備でそれどころではなかったから、あんまり気に留めていなかったわ。」
「でも、楓ちゃんのクラスの出し物を見た後にでもみんなで回ってみてもいいかもね。」
「ああ、俺もこういった学園祭は久しぶりだから楽しみにしているんだ。」
「なら決まりね。楓には少し悪いけれどみんなで大学も見て回りましょう。」
そんな話をして俺は食事を終えると楓ちゃんの所に戻り、二人は大学へ向かった。
「楓ちゃん。」
部屋に入ると楓ちゃんが毛布にくるまって寝息を立てていた。
俺は病院までの時間がしばらくあるのを確認して、汗をかいた顔を冷やしたタオルで拭ってあげて、寝顔を見ていた。
そうして、病院に行く時間前になったので楓ちゃんを起こす。
「起きて、楓ちゃん。」
「うう、時間?」
「ああ、その前に熱を測ろう。」
「うん。」
熱を再び測ってもらったが、あまり下がっていない。
「うう、そんな。」
「仕方がないよ、さっきしたことが直ぐに効いて来ていたら、病院要らずだよ。
でも、これが後になって絶対効いてくるよ。とにかく体の体力と栄養が風邪を治すのには一番必要だからね。」
「そうだね。早く病院へ行こう、和にーちゃん。」
「ああ。」
今日は車がSUVとEVのセダンしかないので、茉莉ちゃんのSUVにカレンが同乗して、セダンを置いて行ってくれたのでそちらに楓ちゃんと乗って近くの病院に向かう。
病院で楓ちゃんが診察してもらっている間に近くのスーパーで栄養ドリンクやスポーツドリンクを買いだめしておく。
一応、俺たちも風邪を引いてしまっては折角のイベントが台無しなので俺達も栄養を十二分に取っておこうと思ったからだ。
そうしている間に病院での診察が終わったと連絡があったので、薬局に薬を貰いに行きながら帰宅した。
「和にーちゃん、先生はとにかく栄養を取って休養するしかないって言っていたから、頑張って休む。」
「そうだろ。いっぱい休もうね。見てもらっている間にノンカフェインの栄養ドリンクも買ってきておいたから。」
「うん、ありがと。帰ったらお薬を飲みたいから、早めのお昼にしていいかな?」
「ああ、そうしよう。薬は一番大切だからね。」
家に帰宅して俺は直ぐに作っておいてもらったお粥を温めて楓ちゃんに持っていく。
「はい、どうぞ。」
「・・・和にーちゃん、ふ~ふ~して。」
そう言って楓ちゃんは口を開けてくる。
なんだか最近みんなこういう時に食べさせてと言ってくることが多い気がする。
まあ、こういう時は甘えたいもんだよな。
「ああ、お安い御用さ。さ、ふ~ふ~。」
そう言って息を掛けて少し冷ました粥を口に運んであげる。
「うん、和にーちゃん分が添加されて心の栄養も回復。」
「はは、なら頑張って掛けないとね。」
「うん、心の健康も体の健康を良くするのには重要。和にーちゃん、重要任務。」
「了解しました。」
そうして楓ちゃんは俺が用意した分を食べきり、栄養ドリンクと薬を飲んでくれた。
「和にーちゃん、お願いがあるんだけど。」
「なんだい?」
「お昼寝をしようと思うんだけど、汗ばんでいるから背中を拭いてほしい。
他は自分で拭くから、ダメかな?」
「ああ、問題ないよ。お湯とタオルを準備してくる。」
俺はただ背中をまくって拭くだけだと思い安請け合いしてしまった。
まさか、あんなことになるなんて思ってもみなかった。
準備して部屋に戻ると、下着姿になってベッドにうつぶせになっている楓ちゃんがいた。
ブラは横にパジャマと一緒に放り出されていた。
「楓ちゃん・・・。これは?」
「? 効率がいいように脱いでおいた。」
「でも、流石に・・・。」
「これが一番効率がいい。そうだ、ついでに和にーちゃん後ろ側は全部拭いて。」
「え?」
「首から下に足裏まで。エステのマッサージかなんかだと思って頑張って。」
そう言い切って楓ちゃんは枕に顔を埋めてしまった。
俺はどうしたものかと逡巡したが・・・。
「和にーちゃん、早く拭いて。私もすぐに休みたい。早く。」
急かされてしまった。
楓ちゃんはとにかく早く休みたいからと結構語気が強めだったので意を決して拭いてあげることにした。
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