第七話 同衾法案可決
いのり君も風邪から回復し、同じころに茉莉ちゃんも回復してみんなが元気になったと思う。
俺は修造さんや、みんなにみのりさんから話を貰った旅館に行く件を話した。
立花家もみんなも予定を合わせご招待に預かろうということになり楽しみにしていた。
そして、その前に欧女の学園祭があるのでそれも楽しみだ。
楓ちゃんが今、立花さんといろいろと頑張って準備をしている。
クラスでカフェを出店すると言っていたので最近はルイジで研修という名目でアルバイトをしたり、いのり君にスイーツを準備してもらったりと余念がない。
ある意味、今一番忙しいのは楓ちゃんかもしれない。
他のみんなは一度風邪を引いてゆっくり休んで、その後は体力が戻るまでペースを落として活動していた。
そんな中、風邪を引かずに元気に活動している楓ちゃんはペースを緩めることなく頑張っていた。
「楓ちゃんも休息をしっかりとってくれよ?
誰のせいで移ったとかではないけれど、確かにこの家には風邪のウイルスが蔓延しているようだからね。」
「うん、休養は十分に取っているし、気力十分。」
「そっか。でも今まで以上に気を付けるんだよ。
本番近くになってとか、本番に風邪を引いちゃったら今までの努力が泡になるしね。」
「それは一番嫌。そうする。」
「大学の時、学園祭の時に一度、亜咲が体調を崩して出れなかったことがあってね。
その時は仕方がなかったとはいえかなり悔しがっていたからな。
ほんと後悔しないようにしておくといいよ。
毎年あるとはいえ、その年の思いでは一生に一度きりだからね。」
「うん!」
そんなリビングで話をしている。
楓ちゃんはタブレットPCで入力作業をしている。
俺も同じくタブレットPCで書類を作ったりしている。最近は俺も常見、啓介の所の仕事以外にも修造さん、ジャンさんとの話も受けていて意外と働いているかもしれない。
まあ、働いているって気にはなっていないけどね。
それほど何かしているってわけじゃあないし、主に相談事の聞き役や、手伝いだし。
基本、日中に打ち合わせとかをしているけど、やっぱり一人だと寂しいので最近は出来るだけ集中したい時以外はリビングで作業をするようにしている。
最近はみんなとの時間が取れないからね。
一応、風邪でダウンしたときには付きっきりで看病をして、二人っきりで話をしたりする時間は多く取れていたけれども、なかなか誰かとゆっくりと話す時間は取れていなかった。
みんなもペースは落としたとはいえ動き出したらそれぞれのやるべきことをやらなければならないし、責任だってあるからなかなか俺一人の我儘でそれを奪うわけにはいかなかった。
「そう言えば和にーちゃん、最近はリビングで作業することが多いけどどうしたの?」
「? ああ、なんだか最近みんな忙しかったり、風邪でダウンしたりしていたでしょ。
それでなんだか一緒にいる時間や、話をしたりする時間が取れなくてさ。寂しいんだよ。」
「そっか。それは私達も同じだと思う。和にーちゃんとの時間が足りていない。
ギブミー和にーちゃん分。」
そう言いながら楓ちゃんが俺の隣に寄り添って頭を預けてくれる。
その温もりがなんだか嬉しかった。
「最近はみんな風邪を引いてそれぞれ和にーちゃんを独占していたから、和にーちゃん分不足。
補って。」
そんなことを言われると可愛くて仕方がない。
俺は楓ちゃんの頭をなでてあげる。
「お安い御用さ。」
「うん。気持ちいい。」
そうしているとルイジのバイトからいのり君と茉莉ちゃんが帰って来た。
「ただいま~。って、楓ちゃんいい感じだネ~。」
「うん、和にーちゃん分を補充中。」
「ただいま。もう、楓ちゃんったら、甘えたがりさんなんだから。」
「だって、お姉ちゃん達は風邪を引いた時に和にーちゃんを独占した。
和にーちゃん独占禁止法により、補填を求めるの。」
「だそうだよ。」
「ふふっ。楓ちゃんらしいね。」
「そうだね。今、何か温かい飲み物を持ってくるね。」
そう言っていのり君はキッチンへ、茉莉ちゃんは荷物をダイニングに置いてリビングにやって来た。
そして、時を同じくしてカレンも帰ってきたようだ。
「ただいま。久し振りね、みんながリビングに集まっているのは。」
「おかえり、カレン。立花さんの家庭教師お疲れ様。
修造さんとの打ち合わせはどうだったかい?」
「打ち合わせはもうオープン前ですから、最終的な確認がほとんどね。
ジョーが解っていない部分を明美と二人で確認しながら、問題を潰していっているわ。
このままいけば年内に順当にオープンできそうね。」
「そっか、ならいのり君の家にご招待された温泉旅行で英気を養ってこよう。茉莉ちゃんもね。
楓ちゃんも学園祭の疲れを癒しにいこうか。」
「そうね。そうさせてもらうわ。」
「そうだね。これから頑張らなきゃだね。カレンさん。」
「うん、ゆっくり美里と疲れを癒す。」
「あ、わたしは? 大木さん。」
「そうだね、いのり君は親孝行を頑張ろうか。」
「うんっ!」
そんな話をして久しぶりにみんなとの団欒の時間を楽しんでいると楓ちゃんが口を開いた。
「みんな聞いてほしい。さっき和にーちゃんが最近みんなとの時間が取れなくて寂しいって言っていた。
私達も和にーちゃんとの時間をそんなに取れていない。どうしたらいいと思う?」
「そうだよね。私も風邪で休んでいる時が最近一番和にいと一緒に入れた時間だったかも。」
「わたしも」
「そうね。私もそうだわ。そう言う意味では楓には申し訳ないわね。」
「ううん、さっき和にーちゃんを独占していたからいいの。」
「まあ、俺もみんなとの時間が取れなくて、なんだか寂しかったんだよ。
ついつい部屋でいると逆に寂しくて集中できないって言うか。」
「そうだったんだ、最近リビングやダイニングでお仕事をしているのはそうだったんだね。」
「そっか、大木さんもそう思ってくれてなんだかうれしいな。」
「・・・。バカ。」
「だから、何とかしなくちゃいけない。」
そう言ってみんな俺のために悩んでくれている。みんなも俺と同じで寂しいって思いを持っていてくれたのがうれしい。
そしてカレンが口を開く。何か思いついたのかな?
「考えてみたんだけど、私達の時間を合わせることは出来るかもしれないけど、それで無理してやりくりするのは限界があるわ。」
「だよね~。」
「うん。」
「ちょっと、最近は難しいかな?」
「でしょ。だから、必要な時は合わせるにして、それぞれが確実に空いている時間を有意義に、公平にもっと使うべきだと思うわ。」
「で、どうするんだい?」
ここからカレンの口から発せられた言葉は衝撃的な内容だった。
「それはもちろん、私達の生活で家にいて一番空いている時間は何? そして一番費やしている時間は?」
「カレン、それって・・・。」
楓ちゃんは気が付いてうろたえている。
いのり君と茉莉ちゃんはなんだか理解できていないようだ。
「そうよ、楓。睡眠時間、つまりは夜の時間ね。
和樹が寂しいし、私達も寂しい。それなら一緒に寝てしまえばいいのよ。
それなら和樹との時間も増えるし、寂しいなんてありえないわ。」
「いや、それはちょっと・・・。」
「ううん! 和にい。カレンさんそれいいね。賛成!」
一番反対しそうな茉莉ちゃんが我先に賛意を示す。
「えへへ。それは魅力的だね~。」
いのり君もモジモジしながら賛成する。
「いのりん、それはダメ。
もちろん変なことは無し。互いに同意があれば別だけど。」
「あの~、流石にそれはダメなのでは?」
「なに? 和樹。別に一緒に眠ることくらいなんてことはないでしょ。
この間、みんなと一緒に寝ているんですもの、それが一人になっただけよ。
私達は何があってもあなたを支えていくの。だからあなたも覚悟を決めなさいな。
私達がそうしたいって望んでいるの。最近は寒いし、一人だと、とっても寂しいのよ。
それに和樹のベッドで一人で眠るのもいいけど隣にあなたがいて欲しいの。
眠りに落ちる時にも朝、目が醒めた時にもね。
そうしたら夜にいっぱいお話しできるんですもの、悪い話ではないわ。
もちろん嫌な時は言ってくれればいいわ。」
そう言い切るカレンに、喜んで賛意を示すみんなに反対できなかった。
寂しい思いが俺の中で倫理を上回りみんなに甘えたいって思ってしまった。
こうして、俺との同衾法案が全会一致で可決されてしまった。
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