第十三話 争奪戦!
これで第五章は終わりです。
立花さん発案の俺とのスイカ割りパートナー争奪戦が開催されることになった。
ルールは簡単、目隠しをした上でグルグルに回ってヨロヨロの俺が辿り着いた女の子と一緒にスイカを割るということだ。
女の子たちは俺を四方に取り囲んでそこから動かずに俺を自分の元に誘導する。その場から動くのはNGだが声掛けをするのは問題ない。
「というわけで、大木さんは目隠しをシュルシュルってしてもらいます!!」
立花さんが俺に目隠しを付けてくる。
「ほら、みんなも大木さんから等距離で取り囲んじゃって!」
「うん。和にい、こっちだよ?」
「むう・・・。いや、こっちだよ。」
「むむ! これは位置取りから勝負が始まっているのでは!?」
「安牌なのは正面だけど・・・。いや、平衡感覚が・・・。」
四人とも何やら言いながら場所取りをしているようだった。
「みんな準備はいいかな? 恨みっこなしだからね!」
「もっちろん! 準備万端だヨ!!」
「和にい!信じているからね!」
「おーい! こっちこっち!」
「和樹、こっちよ!」
・・・なんだか始まる前からこっちなんて一斉に言われてもわかんないぞ?
「はい、大木さん。これを使ってグルグル回ってください。」
立花さんは俺にスイカ割り用に用意していた棒を手渡してくれる。
そして俺はグルグル回り始める。
「はい、大木さんストップ! みんな、用意はいい?」
俺はもうこの時点でヨロヨロフラフラだ・・・。
「よ~い! スタート!!」
立花さんの号令と共にみんなから俺を誘う声が聞こえ始める。
「和にい、右だよ右!」
「和にーちゃん、私はこっち!」
「ほら! 大木さんいのりちゃんはこっちだよ~!」
「和樹! 左よ!」
俺は動き出すが、みんなの言葉なんてもうほとんど入ってきていない。なにせ平衡感覚が保てていないため自分でもよろけた方向にしか進めないからだ。
「ああ! 和にい! 大丈夫?」
「和樹! そのまままっすぐよ!」
「いいや、大木さん。倒れるに任せて! こっちだよ!!」
「和にーちゃん、じっとして!」
おや? 楓ちゃんだけみんなとは違う指示だぞ?
どうしたんだろう。
でも、少し待っていたら平衡感覚が少し戻ってきた。
「そう、和にーちゃん、そのままこっちだよ。」
楓ちゃんに誘導されそうになる。俺も平衡感覚を取り戻せたのは楓ちゃんのお陰なので、そちらに向かおうと思った。
よし、これならって、あれれ?
俺はまだ平衡感覚が思っていたよりも戻っていなかったらしく、盛大にバランスを崩してズッコケる。
そして、俺は誰かにぶつかった・・・。
「あいててて・・・。大丈夫?」
「あちゃ~。こりゃあ、どうしましょうか、はい。」
目隠しを取ってみると、俺はなんと最初に想定されていた四人ではなく、立花さんの足元にいた。
「あ~、美里。」
「う~ん、これは・・・。」
「ありゃりゃ!?」
「どうしたものかしらね・・・。」
「いや、そのですね。これは事故だと思うんですよ。」
「ああ、全くの事故だね。」
立花さんが想定外のアクシデントにあたふたしている。
う~ん、まあ仕返しにはなったし、ここはひとつ丸く収める方向で行こう。
「う~ん、困ったなあ。これだと立花さんとスイカ割りになるかな?」
「むぅ~。」
「想定外・・・。」
「意外な伏兵・・・。」
「美里は油断がならないわね・・・。」
一体、どういった煽り方をしたんだ?
なんだかみんなが腑に落ちていないぞ?
「いやいや、私はノーカンですよ!! ね! 大木さん。」
「ああ、審判の立花さんはノーカンだね。」
まあ、これくらいにしておいてあげよう。これで少しは反省するだろうし。
「ということで、ノーコンテストだから、みんなで一緒にスイカ割りをしようか?」
俺からの提案にみんなの顔がパアッて明るくなる。
「うん!! それがいい!」
「賛成。」
「えへへ、そうだね。大木さんらしいかな?」
「ふぅ、最初からこの手を思いつかなかったのがいけないわね。」
ということで、結果ノーコンテストにつきみんなで一緒にスイカを割ることにした。
「じゃあ、気を取り直して、みんな大木さんの横について一緒に棒を持っちゃって!」
ちゃっかりと気を取り直した立花さんが棒を俺に渡して、スイカをセットしてくれる。
なんだかんだで、気を遣ってもらっているね。
みんなも俺の横に集まり一緒に棒を持ってくれる。
「はい、みんなそのまま! 写真撮っちゃうからね!」
立花さんが記念に写真を撮ってくれた。
後で画像データを見せてもらったが俺も含めたみんな満面の笑顔で映っていた。
現像して写真入れに入れて飾っておこう。この旅行の一番の思い出になったかな。
そして、ついに俺たちはスイカを割った。
「「「「「せーの!!」」」」」
パカーン!
盛大にスイカが爆ぜて割れる。
なかなか豪快な割れ方をして破片が俺達にも降りかかってきた。
「あははは!」
「楽しいね! 和にい!」
「なんだか、ちょっと砂っぽいけど。思い出の味。」
「うん、こりゃあ、あれだ。青春の味ってヤツ?」
「そうね。青臭いけど、一生思い出に残る味ね。」
みんなで割れて体に付いた破片を取って口に運ぶ。
俺はそういった年齢ではもう無いけれど、なんだかこういう事を若い女の子たちに囲まれているとそんな気分になってくるのが不思議な気持ちだった。
こうして、ひと悶着はあったがスイカ割りを楽しく終えることが出来た。
それからみんなでスイカを食べてから、綾瀬君の用意してくれたアクアパッツァをお昼に食べて思いっきり海で遊んで、疲れて別荘の和室でみんなで雑魚寝してお昼寝をしてと夏の別荘ライフを満喫した。
夕方にはまた海鮮BBQをして飽きるくらいの魚介類を食べて、夜には再び花火をする。
最後に線香花火をみんなで競争をしたりした。
意外に綾瀬君が一番長く保たせていた。
カレンも体幹がいいので長く保っていた。
反面、楓ちゃんと立花さんは直ぐに落ちていた・・・。
「あ、落ちた・・・。」
「ぶぅ~! なんで私と楓ちんのは直ぐに落ちるの~!! 理不尽!!」
俺と茉莉ちゃんはみんなの中間で長くもなく短くもなくといった塩梅だった。
本当に思いっきり楽しい時間だった。そして、線香花火のように儚くも夢の時間は終わりを迎えようとしていた。
翌日も片づけを早めにすましてしまい限界ギリギリまで海で遊んで、お風呂に入ってから帰路に就いた。
みんな日焼け止めを塗ってはいたけど、あれだけ思いっきり遊んだので大なり小なり日焼けしていた。
帰りの車も行きと同じで交代交代で運転していたけど、みんなが起きていることはなく誰かしらが眠っている状態だった。
昨日の線香花火では無いけれど、この時間は儚いものだ。
二度と手にすることはできないそんな大切な時間。これをみんなで共有できたことはとっても嬉しかったし、これからもそうであってほしいと願わずにはいられなかった。
そうして夏は線香花火の最期のように終わりに向かっていくのであった。
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