第十二話 仕込み
海に遊びに来て二日目だ。
明日の夕方には帰るので一日中遊べるのは今日だけなのでみんな朝早くから起きてきている。
かという俺も日が昇る前に起きて朝日を見ようと海辺に降りていくと、そこにはストレッチをしているカレンと茉莉ちゃんがいた。
「あら、和樹。おはよう。」
「おはよう。和にい。今日は朝早いね。」
「ああ、二人ともおはよう。なんだか目が醒めちゃってね。朝日を見ようかなって。」
「そう。奇遇ね。私たちは日課のストレッチをしながら朝日を見ようって来ていたの。」
「うん。海辺で波の音を聞きながらストレッチをして朝日を拝むなんて、なんだかリッチな生活だよ。」
「はは、そうだね。お金じゃない意味でリッチだね。とっても価値があるよ。精神的な豊かさはお金では買えないものもあるからね。」
そうして三人で浜辺に座って、朝日が昇ってくるのを眺めて、続きをするという二人と別れて別荘に戻る。
その時、別荘に車が戻って来ていた。早朝に出かけていたらしい。
あれ? 綾瀬君はどうかしたのかな?
「あ、大木さんおはよう!!」
「おはよう、綾瀬君。朝早くにどうしたんだい?」
「昨日、水産市場に行った時にね、近くの漁港で朝早くにセリが行われるってきいたんだ。で、その後に一般というか漁師の家の人たち向けに販売があるらしくて顔を出してみたんだ。」
そう言ってトランクを開けると三列目シートを折りたたんで荷台を拡張した場所に発泡スチロールの箱が何箱も積み重なっていた。
「あ、大丈夫だよ。食べきれる量の魚が入っているから。ほとんどは海水と氷かな。カレンにお刺身を作ってもらおうかなって思って。」
「そうか。前みたいに大量買いして食べきれませんは洒落にならないし、帰りに生臭い車は嫌だからね。」
「むぅ、その節はご迷惑を・・・。」
「はは、いいって。ちゃんと反省しているようだしね。」
「もうっ! 大木さん!! さあ、降ろすのを手伝って!」
俺と綾瀬君の二人で荷下ろししてキッチンまで運ぶ。
開けてみると大きな魚が何匹も入っていた。しかも生きているのも入っているようだ。
確かに、刺身にしたらおいしそうだ。
「でしょ? 朝はあら汁とお刺身に海鮮茶漬けなんてどうかな?」
「じゅるっ! うん、魅力的だ。早く食べたいかも。」
「よしっ! いのりちゃんが作って差し上げようではないか! あ、でもお刺身はカレンにお任せするヨ。
カレンの方が上手にできるからね。朝起きた時にお願いしてあるんだ。」
「ふふ。和樹が期待してくれているなら早く作りましょうか。」
後ろからカレンと茉莉ちゃんがやって来た。
「わあ!! まだ生きてる!うう、私は捌けないかも・・・。」
「何言っているの、魚釣りをしたら生きているのを捌かなきゃいけないんだから。」
「あはは、確かにネ。わたしもさすがに生きた魚なんてなかなか捌けないかな。
気絶させるのがどうにもかわいそうで。魚は何とか出来たけど、スッポンはさすがに無理だった・・・。」
「いのりまで・・・。いいわ二人ともに捌き方を教えてあげるわ。ちょうど活きのいい真鯛があるようだし、朝は鯛茶漬けといきましょう。いのりお出汁を取っておいて。〆た後、茉莉と私で鱗取りをしておくから。」
女の子三人でワイワイと朝ごはんの準備を始めたので俺はキッチンから追い出された。
仕方ない、今日の遊びの準備をしておこう。
そう思い立って、あるものを持って風呂場に向かい、準備する。
準備を終えて脱衣所に戻ると・・・。
「あれ?」
「あ・・・。」
そこには立花さんがいた。寝巻のTシャツを脱ごうとしていたようだ。
「すまん!!」
俺は風呂場に逆戻りする。
しばらくして立花さんが声をかけてくる。
「あはは・・・。大木さん、すいません。私が悪かったですね。もう大丈夫ですから戻って来てくださいよ!」
立花さんに声を掛けられ脱衣所に戻るとそこには・・・。
下着・・・。いや、楓ちゃんとお揃いのビキニ姿の立花さんがいた。
「えへへ! 驚いちゃいました!?」
「昨日と違う水着なんだね。」
「ええ。昨日のは去年ので、これが今年の水着なんですよ。楓ちゃんとおんなじの。シャワーを浴びてから予め着こんでおこうかなって。でも、大木さんがいたんでサービスしちゃいました!」
「心臓に良くない・・・。まあ、かわいいと思うよ。」
「えへへ、大成功ですね。」
「ああ、全くいつもやられるよ。」
「そういう大木さんだって今何かしていましたね。」
「ああ、まあ見たらわかるけどね。一応みんなには秘密にしておいてね。」
「ふ~ん。なるほど! わかりました。秘密にしておきます。」
俺と立花さんはほくそ笑みあって、俺は風呂場を後にする。
しばらくすると茉莉ちゃんが楓ちゃんを起こしてきて朝ごはんの時間だ。
先ほど三人が用意してくれたメニューが並べられ、おいしいと言いながら食べた。
そして、今日は朝から海で遊ぶこととした。
俺は昨日と同じで再び日焼け止めをみんなに塗ることになった。
今度は昨日の順番の逆でという事らしい。
みんななんだか満更ではないようで、楽しみにして今回はやって来た。
それから思いっきり海で遊んだ。
休憩かなっていう時間になって、俺はみんなを集めて朝に風呂場に仕込んでおいたモノを持ってきた。
「じゃ~ん!」
「おお!!これは!」
「いつものだね。」
「あはは! 和にいらしいよ。」
「ほんと、こういう事だけは気が利くんだから・・・。」
そう、スイカだ。みんなでスイカ割りをしようと思って、準備していたのだった。
もともと綾瀬君の買ってきていた食材の中にスイカがあったのでちょろまかして準備したのだ。
「はいはい! 私から提案で~す!!」
立花さんが手を上げて女の子たちを集めて何やら話をしだした。
どうやら俺とこの秘密を共有してから策を練っていたらしい。
またトンデモなイタズラじゃないだろうな?
「はい、大木さん。今回はイタズラじゃなくて、スイカ割のルールを変えたんですよ。」
そう言って俺に説明してくる。
「今回は大木さんがまず目隠しをしてぐるぐる回ってもらって、スイカ割のパートナーを4人の中から決めてもらいます。」
どうやら目隠し&ヨロヨロの俺がスイカ割のパートナーを目指して向かい、決まった人と一緒にスイカを割るという事らしい。
どういうことかと思っていたがみんなやる気のようでかなり殺気立っていた。
「ここは私の知力で絶対勝つ!和にーちゃんと入刀・・・もといスイカ割り。」
「うう、これは想像しただけでもおいしいけど、現実にできるんだ! スイカだけど・・・。負けられない!」
「あはは、将来の予行演習ってことにしておこうかナ? さて、どう動こうかねえ。」
「いえ、勝つのは私よ。そして、このまま引き離すのよ。」
「ふふふ・・・。私の策略どおりなのです!」
なんだか四人から漂ってくる雰囲気がただ事ではない。
ハンターだ。いや、血に飢えた獣が後ろから見える・・・・!!
うん、立花さんは後でオシオキしよう。それも一番ひどいヤツを。
こうして彼女達四人による、スイカ割パートナー争奪戦の火ぶたが切って落とされたのだった・・・。
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