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第九話 話が大きくなってない?

 カレンが立花さんの家庭教師になってすぐに中間試験が終わった。

 楓ちゃんの成績は学年一位だった。

 茉莉ちゃん曰くいつものことらしい。

 昔から頭がよかったもんね。

 だが、ここで立花さんが驚くべき成績をたたき出したのだ。

 入学時の学力テストでは下から数えた方が早かった悲惨な成績だったらしいが、何と今回の中間テストでは上位層に迫る成績だったのだ。

 どう考えても彼女自身で急激な成績の向上は無理だったが、カレンが家庭教師をして数日間でそれを成し得たのだ。

 これには立花さん一家をはじめ楓ちゃん、茉莉ちゃんも驚いていた。


「美里ちゃんはいつも赤点講習常連だったし、それの課題を私たちが教えてあげていたんだけど・・・。」

「一体何があった。美里。」

「えへへ。それはもうカレン先生のお陰だよ!!

 時間がないからわからない範囲を重点的に教えてくれていたからね!」


 上機嫌ではにかみながらカレンの横で嬉しそうに話す立花さん。

 今日はテストの結果が帰って来て、いの一番に報告にやってきたそうだ。


「そんなことないわ。私が教えてこれくらいは当然・・・。と、言いたいところだけど今までの美里の成績を鑑みるに、本人の勉強の仕方や、努力の方に問題があったみたい。今回は本人が頑張ったからよ。」

「そんなことないない!!カレン先生が居なかったら、また赤点講習だったよ。

 お小遣い減額に、パパママのカミナリが・・・。うん。最悪。」


 そんなことを言いながらも満更でもない立花さんだ。


「それでですね、パパがカレンさんに是非にお礼と私へのご褒美と言ってくれているんですよ。

 それで、近日中にお食事に招待したいと。もちろん皆さんご一緒で。

 いかがですか?もちろんカレンさんが好きなお寿司を食べ放題!!

 ウチの持ってる料亭の料理人に握ってもらいます!!」

「いいの?別に私は契約分の仕事をこなしただけよ?」

「全然っ!むしろパパが私の劇的な成績アップに感動して言っているんですから。」


 どんだけ成績が今まで悲惨だったんだよ・・・。

 俺がジトーっと立花さんを見ていると楓ちゃんが目で言ってきていた。


 ・・・それは、聞かないで上げて。


 うん、聞かないでおこう。多分俺が親だったら泣きたくなってくるから。

 茉莉ちゃんも苦笑いしている。

 二人とも苦労してきたんだな・・・。


 そうして、早くということだったので週末の土曜日に食事会が開かれることとなった。

 学校のある茉莉ちゃんとカレンを大学でピックアップして立花興産が経営する付近では名の通った料亭に向かった。


「よう!」


 仲居さんに案内されて通された部屋には立花さん一家に加えて常見がいたのだ。


「あら、ジョーじゃない。どうしてここに?」

「おう、カレン。親父経由でどうも俺にもご相伴に預からせていただけるってことになってな。」

「そもそも次男坊さんがカレンさんを連れてきてくれたことから始まっているので、そのお礼もかねてご招待させていただきました。カレンさん、皆さんようこそ。」


 修造さんが俺たちを席に促してくれる。

 俺達の通された部屋はテーブル席の和室で、俺たちの座る半円形のテーブルの真ん中で料理人が料理するスペースになっているものだ。

 カレンと立花一家を中心に俺たちも着席した。


「おい、常見。」

「わかってるって。親父からこの話が来た時、俺もピンときたよ。こっち絡みのだって。

 親父もそれをわかって請けたんだろ。決定事項だったしよ。」


 こそこそと俺達は話し合う。


「もちろん、そのお話もあります。それは我々だけで後ほど・・・。

 さ、今は宴席です。帰りには代行を呼びますんで飲んでください。」


 修造さんがサッと俺たちの後ろに現れてお酌してくれる。


「いやいやスイマセン。いただきます。」


 そう言って常見は修造さんにお酌し返していた。

 ほんと立花さん親子は抜かりないというか、抜け目がない。

 多分、カレンと会った時や立花さん経由で俺たちの話を聞いていたのだろう。

 修造さんも立花さんも飄々としているがこういう事に関しては危険な相手だと再認識させられる。

 まあ、敵対したくないから穏便に友好的な関係を築いていたいしね。


「それでは、今回は娘の美里が驚異的な成績上昇を成し遂げたことを祝い、そしてそれを導いてくださったカレン先生を労い、歓迎するために一席設けさせていただきました。

 皆さん、遠慮なくご堪能ください。乾杯!!」


「乾杯!!」


 そうして食事会が始まった。

 カレンは目の前で本格的な板前が寿司を握るスタイルは初めてだったらしく目を輝かせていろいろなネタを食べていた。

 修造さんもカレンにいろいろ話掛けてくれている。

 立花さんは楓ちゃん、綾瀬君と話している。騒がしい二人に楓ちゃんがツッコミを入れている。

 茉莉ちゃんは立花さんのお母さんと談笑している。

 そして俺たちは二人で日本酒を飲みながら寿司を食べている。


「なあ、常見。今ここで立花興産に話を入られるとなるとかなり大きな話になってこないか?」

「ああ、親父曰くだが最近駅前の再開発があるだろ。ほら昔デパートがあったあたりだ。

 あそこ一帯を更地にしてタワマンと公園、ショッピングセンターを作るって言うやつだ。

 それの地元の総元請が立花興産で俺んとこの土地も幾分かそこに供出している。

 その兼ね合いもあるだろう。

 ま、多分公園かショッピングセンターあたりに俺たちの店を出さないかってところと、一枚噛みたいってとこじゃね?」

「だな。で、どうする?」

「どうもこうもない。好条件が向こうからやってきたんだ。乗らない手はない。

 まあ、カレンの意向も聞きながらだが。

 親父の親心に感謝だよ。顔が開店して時に汗ばんだ女の子のレッスンを想像していた。

 啓介の店を出したときに女子受けするってプレゼンしたときと同じ顔してたぜ。」

「はあ・・・。そうだよな。親父さんらしいというか。何というか。」


 常見の父親の常雲さんは宗教者、教育者としては格別に優秀だが、ビジネスマンとしても優秀だ。

 だが、一つ欠点があるとすればビジネスに関しては己の欲望を最優先にする傾向がある。

 だから、常見の後ろ盾をしてもらえているところがあるけどね。

 そうして、食事も落ち着き女子会のようになってきたので、俺たちは修造さんと隣の部屋でおつまみを囲んで日本酒を飲みかわしながらその話をしていた。


「まあ、ご想像の通りだと思いますが駅前の再開発の目玉の一つとして公園内のカフェにカレンさんと考えられている店を出店されませんか?条件は出来る限る譲歩させていただきます。」

「それはこちらとしても願ったりかなったりですが・・・。カレン次第です。」


 常見と修造さんのトップ会談で物事が決められていく。

 凡そは、店のコンセプトから建屋までの全てをこちらでプロデュースし、立花興産が管理運営する形になりそうだった。

 そしてカレンと俺たちはそこで売り上げの何割かをギャランティとして受け取る形にしようとしている。これは明美ちゃんとキャリア形成のためにそこで日中働いているお店の嬢か、嬢上がりの社員しかいない常見の会社では対応できないことが多そうだったからだ。

 そして最終判断をカレンに仰ぐため、カレンをこちらに呼んで説明した。

 カレンは日本酒を飲みながら一考して、話し出す。


「問題ないわ。ならいっそのことウチの実家の姉妹店みたいにしたらどう?

 日本のガイドブックを見ていたら、そこそこ有名みたいだし。集客効果が見込めるわ。

 店のメニューなら全部私が作れるから教えられえるし。

 あ、でもその場合は実家に見合ったライセンス料をもらうけど。どう?」

「うむ・・・。確かに。ロスの日本のガイドブックにほぼ紹介されている店の直系の姉妹店の看板はかなりのインパクトだ。店長とインストラクター代表がそこの娘さんと言うならまず間違いないか。」

「うーん、なんか俺には追い付けない壮大な話になって来てね?」

「お前は最終的にイエスかノーを言えばいい。俺たちがお膳立てする。いつものことだ。

 俺はカレンが言うプランで、きっちりと啓介の時と同じようにお前が広告戦略を打てばかなりの商いになると踏んでいる。だから決めてくれ。」

「ああ、やろうぜカレン!修造さんもよろしくお願いします!」


 そうして、カレンプロデュースの店が加速していくこととなった。








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