第八話 家庭教師
歓迎会が終わってから数日が過ぎた。
楓ちゃんは中間テスト期間に入ったので学校が早く終わり、立花さんとよく一緒に家で勉強することが多くなった。
「大木さん。また女の人が増えたんですか?」
「ああ、今回はビジネスパートナーがね。」
「ほんと大木さんって女の人を引き付ける星の下にでも生まれてきたのかな?」
「余計なお世話だよ!たまたまだ!」
「ふふっ。そういうことにしておきましょう。ね、楓ちん!」
「うん。最近の和にーちゃんは女難の相が出ている。私達がやって来てから、このところ定期的に人が増えていたから。でも、これで定員オーバー。」
「まあ、それは認めるけど。女難だとは俺は思っていないよ。」
「だから、なおさらに厄介なんですけどね。」
「それはある。」
なんだか二人は互いに納得しあって勉強に戻っていった。
丁度、その時にガレージが開いてカレンが帰ってきたようだ。
「カレンが帰ってきたみたい。」
「え、楓ちん、紹介してよ!」
「うん。」
二人はカレンに挨拶するために玄関の方へ向かっていった。
「ただいま。楓、この子は?」
「おかえり、カレン。私の友達。」
「どうも、お邪魔してます!
初めまして、楓ちんのお友達の立花 美里って言います!」
「こんにちは。カレン・最上・ダニエルよ。
今は和樹たちの仕事のビジネスパートナーで欧女の大学の聴講生をしているわ。」
「そうなんですか。ちなみにダニエルさんはハーフなんですか?」
「ええ、米日ハーフよ。カレンでいいわよ。」
「じゃあ、カレンさん私のことも美里でいいですよ。
それで一つお願いがあるんですけど・・・。時間があったら私に英語を教えてくれません?
どうも、中間テストが近いんですけど、なかなか危なくて・・・。」
「カレン、暇があったら美里の勉強を見てあげて欲しい。
美里は英語がかなり危ない。私でも教えるのが難しい。」
「いいわよ。時間がある時なら。今だったら時間が空いているし早速やりましょうか?」
「ほんとですか!じゃあ、お願いします!!」
そうして二人はカレンを伴って、二階の多目的スペースに上がっていった。
最初は真面目に勉強していたらしいが立花さんの好奇心が勝ってきたのか、途中からカレンのことへの質問が多くなってきた。
「えー!すごいじゃないですか名門大学の学生さんなんて!
私なんて次は欧女の大学への内部進学怪しいかもって思っているんですよ?」
「そうね。今の勉強の仕方では流石に危ないわね。
美里、きちんと集中して勉強しないとダメよ?
今だって話がそれたでしょ。ちゃんと後でお茶してあげるから、ちゃんと集中しなさい。」
「うぅ・・・。わかりました。さすがの私も赤点採って、お小遣い減額とカミナリは嫌なのです・・・。」
「カレンの言うとおり。美里はちゃんとやれば出来る。」
早速、性格を見抜かれて釘を刺されているぞ立花さん・・・。
しかし、二階から聞こえてくるカレンと立花さんとのやり取りを聞いていると、カレンは人に教えるのが上手みたいだ。
そう言えばプレゼンの時もわかりやすかったし、その後の会議でもきっちり内容が整頓され、問題点や課題などが明確にわかりやすくまとめられていたっけ。
試しにポールダンスを三人に教えた時もみんなすぐに理解してチャレンジできていたな。
茉莉ちゃんも、カレンの留学相談会は容姿と経歴が相まって人気になってきているって言っていたしね。
「うう、でもカレンさんの教え方が上手なので、今まで以上に勉強が理解できますよ!
ほんと、もう家庭教師をお願いしたいくらいです!」
「できるわよ?家庭教師。大学にいたころやっていたことがあるわ。
でも、日本のカリキュラムで勉強をしたことがないから教えてあげられるのは理数科目と英語になるわね。」
「いや、それ全部美里の苦手科目。美里、ここはひとつカレンにお願いしたほうがいい。
私も自分の勉強があるから、全部は見きれない。」
「だよね。楓ちんいつもありがと~。というわけで、是非お願いしたいのですけど。」
「いいけど、タダでは無理よ。これはビジネスだからね。」
「もちのロンです!直ぐにパパに電話してみます!」
おいおい、いつでも掛けていいからって仕事中であろう修造さんに直ぐに掛けるな。
「あ、パパ。今、楓ちんのお家で勉強しているんだけどね。この間、話していた新しくやってきたお姉さんに勉強を教えてもらってるの。でね、私の家庭教師になってもらいたいの。とってもわかりやすく教えてもらえてるし。アメリカの名門大学の学生さんなんだって。
え、大木さん?いるよ?
多分下の階にいるから、ちょっと待ってて。」
なにやら、俺の話が出てきている。
「大木さーん。」
上から俺に話し掛けてくる立花さん。
「パパが今電話していいかって。」
「ああ、大丈夫だよ。」
「わかった!パパ、大丈夫だって。
うん、大木さんと話して問題なければいいのね?
うん、じゃあまた。」
直ぐに修造さんから俺のスマホに電話が掛かってくる。
「もしもし、大木です。」
「すいません、娘がなにやらまたわがままを・・・。」
「いえ。私も今二階で二人の遣り取りを聞いていましたけど上手に要点をわかりやすく教えてくれていましたよ。」
「そうなんですか。で、その教えてくれている人についてなのですが。」
「身元は俺と住職が保証します。もともと新たなビジネスパートナーとして次男坊がアメリカから連れ帰った子を家で預かることになったんですよ。
で、今は休学中で欧女の聴講生をやっているアメリカのエール大学の経営学部の学生さんです。
住職も次男坊の所のMBAを持っている社員も舌を巻くくらいに頭の回転、知識がありますよ。」
「それは・・・。なんとも。」
「ですよね。ちなみに美里さんをちゃんと制御しながら勉強を教えていましたよ。」
「そうですか。いやはや、私達が勉強を昔から見てあげても調子に乗ってなかなか集中しない子でしたので。」
「ええ、その辺りもきっちりしていますから、条件の方で問題がなければいい家庭教師になると思いますよ。」
「それは願ったりかなったりです。」
「彼女は自分の評価をきちんとする子なんで、そのあたりしっかりしてあげるといいですね。」
「ええ、実際にお会いしてお話させていただきます。」
「ただですね。彼女近々、ケガの手術で数日入院してリハビリを長いことしないといけなくなるのでその辺りご配慮いただければと思います。
例えば、ウチに美里さんが来て勉強を見てもらう形にするなど。」
「それはもう必要に応じて、柔軟にしていければと思います。
すいません、お時間をいただいてしまって。
また、美里に電話して話を進めさせていただきます。」
そう言って通話を終えた。
修造さんも立花さんの調子に乗って勉強しないことを悩んでいたのか・・・。
まあ、あの性格だからね。
しかし、親子そろってアクションが早い。
「大木さん!今日カレンさんを家にご招待するからね!
パパが直接会って、話をしたいって。」
そうして、カレンは立花家の家庭教師となったのであった。
後からカレンから聞いたんだけど、修造さんもカレンの優秀さに気が付いて立花興産に入らないかって本気でスカウトしてきているらしい。
常見が愛想をつかされないといいが・・・。俺達よりも興業がうまい人だからね。
カレンはかなりのやり手だから、乗り換えられてしまうぞ。
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