第七話 出発
旅行編、はじまります。
ゴールデンウィークが始まった。
それまでに綾瀬君もリストランテ ルイジのバイトに復帰し、茉莉ちゃんは教習所に通い何と最短で免許を取得してきた。楓ちゃんと立花さんも連休中の課題をやり終えたとのことで、後は楽しむだけだ。
出発日の早朝、俺はミニバンにあらかじめ用意しておいた、みんなのキャリーやバッグをトランクに乗せていく。女の子の荷物は多いので意外と場所を取る。
お土産やお菓子などを入れることも考慮して入れていった。
他の女の子たちもみんなで準備した服を着たり、おめかしに気合が入っているのか朝早くから準備をしている。
その中で茉莉ちゃんと綾瀬君はキッチンで朝食などを作って、タッパーに詰めていてくれているようだった。
俺はというと、綾瀬君に車の準備を言い渡され、ガソリンを満タンにして、洗車機を通して掃除して来いと言われて起き抜け早々に家を追い出されて今に至る。
取り敢えず、眠気醒ましのチョコレートやガムに飴、エナジードリンクをスタンドのコンビニで買ってきたので適当に食べながらリクライニングを倒して仮眠をとっている。
「おーい。大木さん起きて!」
「・・・ああ。起きてるよ。」
時計を見ると出発の時間に近い。
みんな用意が出来たようで駐車場にやって来ていた。
皆、流行を取り入れた可愛らしい服装に身を包み髪型もばっちりと決めている。
「ほら!どーお?」
綾瀬君がスカートをつまんでクルっと一回りする。
茉莉ちゃんは下を向いて恥ずかしそうにしている。
楓ちゃんは眠たそうだ。
「みんなかわいいよ。今日は楽しめそうだよ。」
「・・・。うん。期待したわたしが悪かったよ・・・。」
「仕方がない。和にーちゃんは昔からこうだった。」
「だよね。亜咲ねえに毎回怒られてたもんね。」
なんか、俺が悪いことになっている。
亜咲の時もそうだが、俺は正直に感想を言っているだけだぞ?
そうしているうちに立花さん一家がやってきた。
「おはよう!!みんな!私!!興奮で完全に眠れなかったや!」
そんなことを言いながら立花さんは女の子たちの輪に入って会話を始める。
俺はいうと、立花さんのご両親、修造さん達に挨拶に行っていた。
「大木さん、この度はよろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ。良くしていただいて。感謝の言葉もありません。
娘さんは責任を持ってお預かりさせていただきます。」
「はい、どうか私たちの分までよろしくお願いいたします。」
ご両親から、心ばかりと言われてお金をいただき、修造さんが持ってきていたキャリーをトランクに乗せる。
そうして、みんなが乗り込んで立花さんのご両親に見送られて出発した。
今回の目的地はここから二、三時間高速で走った山中にあるイチゴ農園でイチゴ狩りを楽しんで、立花さんの家が経営する旅館に泊まって、近くの有名な観光地で観光とショッピングを楽しむのが目的だ。
俺が最初に運転をして疲れたら綾瀬君が、車が空いていて、安全な場所では茉莉ちゃんが練習を兼ねて運転する予定にしている。
近くのICから高速に入ってから、ACCモードに入れて運転が楽になったところで、綾瀬君と茉莉ちゃんが作ってくれた朝のお弁当を食べることにした。
運転している俺はセンターの座席を倒して手すりにして前に持ってきて、収納に置いて食べることにしている。
他のみんなの座席にはドリンクホルダー付きのテーブルが大なり小なりついているので、そこに広げて食べるようだ。
「はい、和にい。私といのりちゃんで作ったBLTサンドだよ。」
「大木さん、コーヒー淹れておくね。」
茉莉ちゃんが座席をスライドさせて俺の傍にサンドイッチを持ってきてくれる。
綾瀬君はコーヒーを魔法瓶の水筒からコーヒーをタンブラーに淹れてくれる。
「ありがとう。いただくよ。」
そういって、前を見て、ハンドルを片手で握りながら合間を見て食べ始める。
後ろでは女の子たちが楽しそうに食べている。
「いのりさんの料理とってもおいしい!」
「でしょ!実はね。ルイジのケータリングと同じものを作ったんだ。」
「それはおいしいに決まっている。」
「一応、私も作っているけど、やっぱりいのりちゃんの腕がいいんだよ。」
「そんなことないよ?すごいのはレシピを考えた啓介さんだよ。」
そんなことを言いながら楽しそうに過ごしている。
しばらくして、完徹だと言っていた立花さんと楓ちゃんが寝息を立て始める。
「楓ちゃんも、美里ちゃんも楽しみで眠れなかったんだね。」
「わかる。わたしもそうだったよ?だから、バイト時間の空き時間とか、学校の休み時間に寝だめしておいたんだ!」
「それは・・・。」
「もちろん、里奈さんに怒られたけど・・・。」
そりゃそうだろ。何も考えずに里奈相手にそれをするのは啓介か綾瀬君位だ。
「私は時間に余裕があったから仮眠を取りながら動いていたよ。」
「さすが茉莉ちゃんは効率がいいこと考えるね。おねーさん関心、関心。」
「綾瀬君は、ズルしようとするからだ。」
「うぐっ!まあ、おいしい朝ご飯が出てきたからいいじゃない!」
そんなことを言ってごまかす綾瀬君。
そうこう言っていると最初のSAに到着する。
高校生二人は眠っているので、静かに三人が交代でトイレに行って休憩していた。
俺はSAの緑茶を飲みながら食堂の椅子でゆっくりしていた。
「大木さんお疲れ!運転代わろうか?」
「いや、大丈夫だよ?」
「ううん、実はね、これから先、山道に入るでしょ?だから次のSAまで大木さんに休んでもらって、難しい区間はお願いしたいなーって。さすがに自動運転と言っても人数を乗せた高速の山道はチョーっと怖くてさ。」
「そうか。隣で休ませてもらうよ。少しでも怖くなったら起こしてくれるかい?」
「うん、その時はお願い。」
食堂を見て回るという綾瀬君と別れ車に帰ると、茉莉ちゃんが二人にブランケットをかけなおしていた。
「あ、和にいお帰り。」
「茉莉ちゃんはSAの中を見なくていいのかい?」
「うん。私も少し眠くなっって来ちゃったから。すこし休んでいようかなって。」
「俺も次は綾瀬君運転を代わってもらって、休むことにしたからおんなじだね。」
「そうなの?」
「ああ、綾瀬君は山道に自信がないから先に代わるって言ってくれてね。」
「私もそれはわかる。取ったばかりなのもあるけど、山道のカーブとかは絶叫マシンに乗っているみたいで生きた心地がしなかったもの。」
「そういうものかな?」
「和にいは思わなかったの?」
「ああ、別にハンドル捌きを誤らなかったり、スピードを出しすぎたりしなければ全然。」
「男の人ってすごいね。」
「いや、俺でも一車線しかないカーブで且つ、ガードレール無しの道で対向車が来たら怖いぞ。」
「それは・・・。みんな怖いと思うよ?」
「でしょ。だからさ、怖いってことは運転するコツなんじゃないかな?ちゃんとそういうことを意識して、きちんと運転できればそうそう事故は起こらないと思うから、茉莉ちゃんも安心して運転して。」
「うん、頑張ってみるね。」
そうしているうちに綾瀬君がご当地メニューと、自販機のファーストフードを買って帰ってきた。
「いやー。ご当地ってのと、高速の自販機のファーストフードの魔力に負けちゃった。てへぺろ。」
「あのな、さっき食べたばっかりだぞ?これから運転するのに食べたら眠たくなるぞ?」
「その時は茉莉ちゃんに変わってもらうから大丈夫!ACCがあるし、しばらくは山道に入らないでしょ?」
「そういうことじゃなくてな・・・。」
「あはは・・・。その時は、頑張る?よ。」
大丈夫か・・・?
運転を任せて。
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