第八話 イチゴ!イチゴ!イチゴ!
「ん・・・。」
「あ、起きた?大木さん。」
「ああ、眠っていたようだ。大丈夫かい?綾瀬君。」
「ACCのおかげもあって大丈夫だよ。何だかんだ茉莉ちゃんとお話ししながらの運転が楽しかったから意外と進めたよ。」
朝日が入りこみ俺は起きたようだ。
しかし、目に入った景色は山中であった。
「すまん。寝過ごした。」
「いいって。私が朝追い出したのもあるでしょ。次のPAで交代しよっか。」
「ああ。」
リクライニングを元の位置に戻す。
茉莉ちゃんは足を隣の席に預けて眠っているようだ。
後ろの二人はまだスヤスヤと寝息を立てている。
「なんだかんだでみんな寝ちゃってたけど、運転が楽だったからね。」
「ああ、でも、次に交代したら休んでくれ。さすがに到着してグロッキーは洒落にならない。」
「だね。休ませてもらうヨ。」
俺と綾瀬君は次のPAで運転を交代する。
バックしていると、楓ちゃんたちが起きてきたようだ。
「おはよう、和にーちゃん。寝てた。」
「おはようございます。大木さん。つい眠ってしましました。」
「いや、二人とも夜眠れていなかったんだろ?良かったね。眠れて。着いたら思いっきり楽しもう。」
「はい!」
「うん、お姉ちゃんも眠っている。」
「ああ、朝から頑張ってくれていたからね。俺も今から綾瀬君と交代して休んでもらうよ。」
トイレ休憩を挟んでから運転を交代して出発する。
この調子でいけば、9時の開園時間少し前に到着してくれそうだ。
綾瀬君もなんだかんだ言って緊張していたのだろう、すぐに助手席でリクライニングを倒したら寝息を立て始めた。
後で、何かねぎらってあげよう。
そうして、茉莉ちゃんも途中で起きて開園時間少し前に到着した。
今回、常見の所の事務員の明美ちゃんの紹介でイチゴ農園でイチゴ狩りをさせてもらえることになった。
俺も含めて初めてのことなので、興奮している。
なんでも明美ちゃんが、俺や茉莉ちゃんたちと、綾瀬君の事情を話したところ経営者の人が感動してお代はタダでいいと言ってくれていた。
明美ちゃんには感謝しかない。後で、お土産にイチゴとかをたくさん持って行ってあげよう。
俺達はイチゴ狩りに勤しむこととした。
「和にーちゃん、見て。この形面白い。」
楓ちゃんは変な形のイチゴばかりを採集している。
味見よりも、興味心がそそられる形のイチゴを探してはお土産用の袋に詰めている。
ここのイチゴはとてもおいしいけど、あえてB級品を狙っているのがおかしかった。
あとで、食べて後悔しないといいね。
「あ、これおいしそう。」
隣の立花さんは、これといったものを採集して味見しながらご両親へのお土産のイチゴを採集している。
親御さんに持っていく前に、おいしそうなイチゴは立花さんに食べきられそうだ。
「うーん、これかなぁ。」
茉莉ちゃんは悩みながら採集している。
だけど、悩んで決めたものをまずは口に運んでいるから、お土産にする分がなかなか埋まっていない。
なんでも百合子君へのお土産分も取っていくと言っていた。
その辺りは立花さんと一緒だった。
綾瀬君は採集もそこそこに、園の偉い人を捕まえて啓介から依頼があったらしい、様々な品種のイチゴの説明と味見をしていた。
なんでも、ケーキなどに使うイチゴを探していたところだったので綾瀬君に頼んでいたみたいだ。
なので、綾瀬君は箱で様々なサンプルのイチゴをもらっていた。
もちろん、園の人も今をときめく料理人、滝川 啓介が検討したいと言っていたので喜んで協力してくれた。
最後に俺はというと、適当に味見をして摘まみながらみんなと話をしていた。
お土産にする分は、その時にみんなが選んだものを入れてもらって、俺は食べることに集中していた。
ここのイチゴはやっぱりおいしい。
そして、みんな一通り楽しんだ後、お土産(一名サンプルの大箱)の袋を携えてイチゴ園を後にした。
その後は近くの大きな道の駅で休憩とショッピング、昼食を摂るために出発した。
道の駅ではご当地の産品を物色しながら、昼食を摂った。山中だけあって川魚や蕎麦、山菜をふんだんに使用した料理が多く、みんな思い思いのメニューを頼んで舌鼓を打っていた。
そして、最後にスイーツショップなどで女の子たちは思い思いのスイーツを買って互いに食べ始めた。
「別腹だから、気にせずに食べよう。後で頑張ればいい!」
「だね!体重計は忘れよう!!」
「私は気にしない。」
「うぅ・・・。さっき食べすぎたせいで、別腹も埋まっていそう・・・。」
そんなことを言いながらみんなで分け合っている。
キャッキャしている皆を見ていると俺も気持ちが満たされてくる。
俺?
俺はイチゴのソフトクリームだ。イチゴ狩りで俺も食べすぎたみたいなのと、甘い物のオンパレードで食欲が失せていた。
「大木さんもこっちおいでよ。ハイ、あーん。」
そう言って、綾瀬君が俺に食べていたクレープを差し出してくる。
お・・・。酸味とクリームのバランスがよくて、生地がいい柔らかさでおいしい。
「あ、いのりん。ずるい。和にーちゃん。たべて。」
楓ちゃんも食べていた大きなイチゴ大福をくれる。
これは酸味強い品種を使っているようで餡子の甘さとのコントラストが強調されおいしかった。
「あの・・・。和にい、はい。あーん。」
茉莉ちゃんは顔を真っ赤にして、食べていたイチゴシャーベットをくれる。
これも俺が食べていたソフトクリームと違って、果肉感が強く甘みと酸味が冷たさと相まっておいしかった。
「あー。私は食べちゃったから、ないですよ?おいしかったです。
というか、これでお腹いっぱいですよ。」
立花君はイチゴパンを食べ終わっていたのでそんなことを言っていた。
「みんな分けてもらってすまないね。お礼にまた何か買ってくるよ。」
「だめ。絶対。」
「そうだよ。大木さん、乙女心を考えてよ。」
「和にい、私達は上げることで自分への言い訳を作りたかったんだよ・・・。」
綾瀬君が天を仰ぎ、茉莉ちゃんはため息をついている。
楓ちゃんは我関せずで、食べ続けていた。
そうだよね、女の子は体重計を気にするからね。
言い訳は大切だ。
「はあ、この人ほんと既婚者だったのかなぁ・・・。」
立花さんの独り言は俺には聞こえていなかった・・・。
スイーツに舌鼓を打った後、俺が助手席に座り茉莉ちゃんが若葉マークを付けて旅館まで運転していくことになった。
一応、仮免期間中や、取った後に何回か練習しているけど大人数を乗せるのは初めてなので少し緊張していた。
「大丈夫だよ、茉莉ちゃん。亜咲なんて取った後もレースゲーム感覚でかっ飛ばしていたから、生きた心地がしなかったよ。」
「和にい、それ、不安を煽ってるよ・・・。がんばる・・・。」
そうして、何とか無事に温泉旅館にたどり着くことが出来た。
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次回は温泉回です。




