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第四話 大学のこと

 今日は、ひどく雨が降っている。

 綾瀬君はミニバンで通学し、ついでに楓ちゃんと立花さんを送っていくって言っていた。

 茉莉ちゃんは朝一の講義が休講で、二時間目の講義のみらしい。

 俺も今日はやることがなく暇なので、大学まで送っていってあげることにした。


「茉莉ちゃん、雨がすごいから送っていくよ。」

「いいよ、和にい。せっかくの時間なんだから好きに過ごしてくれて。」

「雨だしね。好きに過ごさせてもらうんでしょ?なら、茉莉ちゃんを送っていくのも自由だよね。

 ついでに茉莉ちゃんの講義が終わるまで図書館で読書させてもらうよ。」

「もう・・・。和にい。」


 俺は欧女の理事である常見の親父さんから関係者パスをもらっているので車を停めたり、図書館での閲覧貸し出しを受けることが出来たので今日は午前しか講義が入っていない茉莉ちゃんを待つことにする。。

 茉莉ちゃんは満更でない顔をして玄関に向かう。

 二人で駐車場に入る。


「今日はいつものミニバンがないからどっちに乗る?」


 俺は茉莉ちゃんに乗りたい車を聞いてみる。

 ホワイトのオープンカータイプのスポーツセダンと真っ赤なSUVがある。

 どちらも有名高級外車だ。


「出来れば、ロボットみたいな方が・・・。真っ赤なのはちょっと恥ずかしい・・・。」


 おずおずと決めてくれる。

 まあ、茉莉ちゃんからみれば真っ赤なSUVはど派手かつ高級な車らしい。

 実際はスポーツセダンの方が倍近く高かったりするが、言わないお約束だ。

 楓ちゃんも調べたのか、こう言っていたっけ。


「お姉ちゃん、色と大きさぐらいが判断基準だから、屋根のないあの車の方が安いと思っている。」


 確かに、こっちのメーカーの方が街で走っているのは少ないけど、価格は茉莉ちゃんになじみのあるこっちの方が高いんだよな。

 そんなことを露とも知らずイメージのみで決めている茉莉ちゃんが可愛らしい。

 ちなみに亜咲は喜んでSUVを乗り回していたぞ?


 俺はご指名のあったオープンカーの屋根を出して発進させる。


「いつ見ても、すごい車だよね。ロボット見たい。」

「だろ?俺はそれが好きで選んだんだ。亜咲なんて幌のついたやつでいいじゃんって言っていたからな。」

「そうなんだ。昔から和にいはこういうの好きだったよね。」


 俺はプラモやPC、機械いじりが好きだったし、よく庭でプラモの塗装をしたり、じいちゃんに壊れた農具の修理を教えてもらっていた。それを興味なさそうに亜咲と茉莉ちゃんは眺めていて、終いには二人でどっか行っていたっけ。


「ここに亜咲ねえも座っていたんだよね?」

「ああ、俺が運転するのがほとんどだったからね。この車は。

 ちなみに、あの赤い方は亜咲が好んで運転していたよ。」

「そうなんだ・・・。これ、亜咲ねえの髪の毛かな?」


 そう言って、茉莉ちゃんはマットについていた黒い髪の毛を拾い上げる。


「・・・。確かにそれは亜咲の髪の毛だね。最後はロングヘアーだったし。」


 亜咲は最後の方になると、髪を切りに行くような状態ではなかったので、ロングヘアーにしていた。

 この車も俺の友人たちが運転することがあっても、基本助手席は俺が座っていたし。髪の色は里奈は茶髪だ。間違いない。

 何ともいえない空気となる。

 茉莉ちゃんは見つけた髪の毛をじっと見つめ、ぎゅっと胸に押し付け抱きしめ涙している。


「亜咲ねえ・・・!」

「茉莉ちゃん・・・。」

「あのね・・・。和にい、この髪の毛、捨てずにもらっていいかな?

 もうお骨もお墓に入っているし、亜咲ねえの一部でも見つけられたら、傍で見守っていてくれるようがな気がするの。お守りにしたい。」

「構わないよ。亜咲もきっと喜んでくれるよ。」

「うん!!ずっと大切にする!」


 茉莉ちゃんは涙を拭って大切そうに握りしめてからハンカチに包んだ。

 しばらくして落ち着いた茉莉ちゃんが聞いてくる。


「そういえば、私は、和にいの大学時代は知らないけど、どうだったの?」

「そうだね、みんなとの出会いは話したよね。」

「うん。」

「俺と亜咲は大学は偏差値ではなく、亜咲の後遺症のこともあって大きな病院に直ぐに通える大学で選んだんだ。どうせ、大学は就職する場合は通過点だ、終着点じゃない。しっかりとした内容を持っていればどこでも取ってくれると思ってね。国立中位くらいの私立大学にしたんだ。楽に受験も済むし。そこには併設の大学病院もあったから都合がよくてね。」

「そうなんだ。」

「で、俺と亜咲はみんなと出会ってね、俺たちは亜咲のお父さんと一緒に住んでいて、他は下宿していたんだ。そのころは亜咲のお父さんも末期がんで入院しがちになってね。治療が受けられるってことも一因だったんだ。」

「そっか、おじさんは末期がんだったんだもんね・・・。」

「まあ、そういうこともあってみんなと友達になって、大学生活を楽しんだよ。

 啓介が、金欠でひもじいと言って俺たちのアパートに転がりこんできて、俺たちの料理に感動して、どうしてか進路を決めてしまったり。里奈も亜咲につきっきりでいてくれたり、一緒にショッピングとかしてくれた。常見はバイト漬けであんまり学校に来なくてな。いっつも俺や亜咲に代返を頼んで、挙句の果てに試験は俺たちに講義の内容をさらっと聞いて受ける始末だ。それも、哲学の試験で俺が冗談で言った、講義であったヒーローの与太話から、ヒーローが多人数で一人の敵を倒すことの正当性ってお題目で試験解答して満点を取りやがった時は開いた口がしばらくは塞がらなかった。」

「っふふ。あはは。みんな、らしいね!」

「だな、今とあんまり変わんない。

 ま、啓介と里奈のなれそめや、常見が何で夜のお店を開いたかもドラマがあるから機会があったら教えてあげるよ。」

「うん、そうして。和にい。本当に亜咲ねえも楽しい大学生活を送れていたんだね。」

「ああ、みんなのお陰だよ。今までもこれからもね。」


 本当に皆には頭が上がらない、学生の時から亜咲のことを親身になって手伝ってくれたし、亜咲が亡くなってからも俺のことを見放さずにいてくれた。

 本当に得難い親友たちだ。


 そんな話をしていると欧女の大学部のエントランスに着いたので、茉莉ちゃんを車から降ろす。


「あーー!!茉莉!!どうしたの!!大丈夫!!!」


 そんなことを口走って走ってくる女の子がいた。




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