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007●思い出が示す道

風の谷を後にして、

精霊から授かった「風の結晶」が放つ光線が示す方向へと歩みを進めている。

地図もない、案内人もいない。

頼れるのは、互いの感覚と、風の流れだけだった。

やがて、森の奥にぽっかりと口を開けた洞窟が現れる。

入り口には、澄んだ泉が静かに、わたしたちを迎える。


「水鏡?」

しゃがみ込む、覗き込む。

「見て、なっちゃん。水の中に、わたしたちが映ってる・・・でも、ちょっと違う。」

さやちゃんが指差す。水面に映るわたしたちは、幼い。

これって、随分昔のわたしたちじゃないの!

洞窟の入り口には、また、石碑が立っている。


水は記憶を映し

過去と未来をつなぐ

ふたりの心が揃うとき

道は開かれる


「また、謎解きだね」

「うん。でも、今度は’心を揃える’って書いてある。」

ふたりは水鏡の前に立ち、同時に手を伸ばす。

水面が波紋を描き、洞窟の奥から光が差し込んだ。

奥に進めってことだよね?


中はひんやりとしていた。

壁には水晶のような鉱石が輝き、足元には靴を濡らす水が流れている。

あれれ?進むにつれて、水位が上がっていく。


「これ・・・泳がないと進めないかも?」

「でも、泳ぐのはちょっと怖い。」

不安そうに言うと、さやちゃんが手を握ってくる。

「大丈夫。スイミングで鍛えたわたしが先に行くから、ついてきて!」

ありがとう!

でも、さやちゃん、スイミング・スクールに通っていたのは6年生までだったじゃないの?


水に入る。

冷たい水が肌を刺すようだったが、互いに離れず、ゆっくりと進む。

なんだか、水流が強くなる。

さやちゃんが流されそうになってる!

「さやちゃん!」必死に手を伸ばす。ぎりぎりのところで、手がつながった!

「なっちゃん、ありがとう!」

「ううん。わたしたち、ふたりでひとつだから。」


水流が収まり、洞窟の奥にたどり着くと、そこには巨大な水晶が浮かんでいる。

水晶の中には、わたしたちの姿が映っている。

これは・・・親戚みんなで行った旅行の光景だ!

「これって・・・わたしたちの記憶?」

「うん。きっと、これが“心を揃える”ってことなんだ。」


思い出す。

みんなで行った海。

波の音、笑い声、スイカの甘い匂い。

パパとママ。ジイジとバアバはパラソルの下でくつろいでいる。

おじさん、萌香おばさんとスイカ割りの準備をしてくれて。

この日、ホテルで、わたしたち、1万円札を拾ったのよね。

あっ、夜の食事会だ。

ふふっ、みんな酔っぱらってる。

おじさんが何か主張しているの?

おじさん、会いたいな。会えないね。

さやちゃんも、思い出してるね。

ちょっと悲しいね。

あの日の空は、今よりずっと広く感じた。


水晶が輝きを増す。

うわあ、洞窟の壁が左右に分かれて開いていくの?!

道だ!よぉし!行くよ、さやちゃん!


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