042●本当にルシファーの出撃
これは・・・。球形の要塞だが、あの赤いものとは違う。
黒い。闇のように暗く、魔のように深い。
鏡面仕様なのか?恒星が写っている。
あらゆる探知機でも感知しないぞ。消えた!全く見えん。
そうか、最新鋭の光学迷彩とステルス機能か。
背景の宇宙空間と同化しているのだろう。
あのデカさでか。これは、探知できん、わからんぞ。
万一にも、こちらが衝突しないように、わざと姿を見せたということだな。
「大佐、信じられないです。あの大きさ、きっと、すごい質量ですよね。多分、近づくと何か仕掛けてくるんでしょうが。」
「味方でよかった。敵に回したら、連邦宇宙軍が束になっても、敵わん。」
俺の声にクドーが頷く。通信が入る。
「こちらヴィーナス型0番要塞ダークエンジェル、指揮官ルシファー。銀河連邦テラ機動艦隊、応答どうぞ。」
「わたしが司令艦長のグレッグだ。よろしく頼む。」
「グレッグ艦長、こちらこそ、よろしくお願いします。間もなく、ワープに入ります。転移座標の最終確認をします。暗号化したデータを送ります。コード13でお願いします。」
「了解。どうだ、開いたか?」
「はい。事前のものと変更ありません。」
「こちら、グレッグ。確かに受け取った。出発時間も指定通りで了解!」
「無事に帰ってきましょうね。では。」
「なんだか、綺麗な声でしたな。映像は送られてきませんでした。ちょっと残念です。」
「いや、クドー、見なくて良かったのかもしれん。」
「なぜですか?きっと凄い美形に違いありませんぞ。」
「伝説では、ルシファーは確かに最も美しい大天使だ。しかし・・・堕天使となったと言われている。」
「堕天使?そう言えば聞いたことがあるような。神に使える、一番の長だったとか。」
「そうだ。堕天使となり、サタンとも呼ばれるようになった。輝く12枚の翼を持つとも、一目見れば魂を喰い尽くされて、命を落とすとも伝わっている。わたしの故郷では、な。」
ワープに入る前の暗黒の間を見ながら、グレッグは思い出す。
そうだ、もう1つ、伝承があったな。
堕天使となったのは、神との合意だったという。
大天使たちも、承知していたと。
すると、それは遠大な計画の一部だったということなのか?
彼は感じる。
なぜか、ルシファーの声を聞いた時、提督のお顔が浮かんだ。
普段、穏やかで温厚な、あの方が、あの時見せた不退転の表情を。
グレッグが思いに浸る時間はなかった。銀河連邦テラ機動艦隊は、ワープに入った。




