023●未知との遭遇
グレッグ大佐は威嚇射撃からの発砲を命じた。
誘爆を避けるため、10光秒の間隔で布陣する機動艦隊に対し、
便宜上「ベータ船団」と名付けた未確認船団の戦闘艦は、容赦なく艦橋や推進機関部を狙ってくる。
「向こうの火器の方が、強力です!シールドは全開ですが、長くは持ちません!」
「エンジェラム星間連合に応援要請!まだ、踏ん張るでえ!根性、見したらんかい!」
人が乗ってんのは、司令艦だけや。
あとの99隻の僚艦は、司令艦からの指示で自律して動きよる。
司令艦が沈没したら、お終いや。うわ、艦に衝撃が走る!
「砲撃担当、やられたあ!戦闘座席より転げ落ちて、右手を負傷!」
「すぐ、ナースロボット出したれ!そやからシートベルトは命のベルト、っていつも言うてるやろ。砲撃系をこっちにまわせ!わしがやったる!まだ、負けへんでえ!」
そやけど、旗色悪い!
部下の命を守らんと!
ええい、わしら、ケンカするときは、
「こらあ、殴るぞお!」「殴れるもんやったら、やってみいやあ!」と堂々と宣戦布告してから、どつきおうとったで。いきなり撃ってくるって、卑怯や!
背中からスコップでガーンとやるみたいなもんやん!
「レイディ・アマンダ、緊急応援要請です。グレッグ大佐の機動艦隊からです。」
「協定を遵守。全艦隊、並びにアシュラ型18番要塞、緊急発進!直ちにワープ、当該宙域に展開するぞ!」
コユキの報告にレイディ・アマンダの指示が飛ぶ。
「全艦、並びに本要塞、ワープインします。」サクラがカウントダウンに入る。
「ワープ・イン!」
あかん、あかん!
このままやったら、時間の問題や。
司令部には暗号通信で言うとるけど、星間連合はまだけーへんか?
クドー、いけるか?よっしゃあ、その意気や!
♬われら勇猛、機動艦!空をこえて、ルルル、星の彼方!♬ 行くで!
船団ベータを包み込むように、突如それは現れた。
レイディ・アマンダ率いる800万隻の一個艦隊と、18番要塞だった。
グレッグ大佐は拡大スクリーンを見て息を呑む。
「なんやあれ。ごっついでえ。あの球体!要塞か?真っ赤っかやんか。こんなんあるんや!」
「要塞の全探査機器によるデータを僚艦と共有。仮称ベータ船団の戦闘艦を識別。推進機関部を撃ち抜く。ブラスターの使用は不可。グラビティ兵器の貫通弾としての使用を優先!爆発はさせないように気をつけてください!」
サクラの指示が各員に伝わる。
800万隻からの一斉射撃は、凄まじいものだった。
戦闘艦の推進部が次々と破壊され、動きを止めていく。
「ものすごいやん。これは・・・。」
テラ連邦として初めて観測する、エンジェラム星間連合の発砲であった。
それも、想像を絶する規模で。・・・しかし、爆発四散するベータ艦船はない。
グレッグは思った。まるで、あの時のラベンダー提督の戦術のようだ。
我々の実体弾より、遙かに高等な砲撃技術だが、と。
「ワタル、相手の反撃が完全に尽きた時点で、レベル3の武装で、艦載機3個連隊を偵察発進。反撃があれば、死なないように迎撃せよ。いいな!」
「了解!レイディ・アマンダ!スタンバってます。いつでも行けます!」
ベータ船団の詳細は、この時点では明らかになっていなかった。
エンジェラムが自責の念に駆られるのは、体感時間で、もう少し後になってからである。




