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第96話 藤原不比等による大宝律令

さて、天武(てんむ)天皇崩御後、既に十年が過ぎている。

この間、実質的に誰が政治を取り仕切っていたのだろう。

持統天皇とは考えにくい。

実は、この間政治を取り仕切っていたのは藤原(ふじわら)不比(のふひ)()である。

不比等は壬申(じんしん)の乱において、不比等の父、鎌足(かまたり)の主筋である天智(てんじ)天皇の皇太子、(こう)(ぶん)天皇に味方した。

したがって天武天皇からは冷遇された。

これで藤原家も日の目を見ることはなくなったと思われたとき、思わぬ救い主が現れた。

ウノノサララ皇后である。

ウノノサララ皇后は、不比等の聡明さをいたく気に入っていた。

不比等を草壁(くさかべ)皇子(おうじ)の教育係に抜擢したのである。

これによって不比等は、ウノノサララ皇后および草壁皇子から、絶大な信頼を得たのである。

()(とう)天皇即位以降、藤原不比等は摂政のような形で政治を執り行ったのである。

藤原不比等は、父の作り上げた「公地(こうち)公民(こうみん)」や「班田収授法(はんでんしゅうじゅのほう)」や税制の「()(よう)調(ちょう)」などをさらにしかも包括的に改善すべく、法律を作ろうとしていた。

律令(りつりょう)」である。

律は刑法である。

誰でも悪いことをすれば刑に服さねばならない。

しかし、今まで各豪族が勝手に罪を決め、勝手に裁いていたのである。

それを統一したのだった。

罪が軽い順に、百叩き、懲役、島流し、死刑と決めた。

このうち死刑は、貴族のみお金を払えば減刑とした。

ただし、国家や天皇に対する反逆は減刑の対象とはならなかった。

令は行政法および民法だ。

最も大きな話は、豪族の廃止だ。

豪族が地方で勝手に政治を行っていると、天皇中心の統一政策はできなくなる。

そこで豪族を貴族と改め、土地と人民を天皇に預け、天皇は位に応じて土地と人民を給料として提供する政策を取った。

そこで重要なのは位だ。

正一位、従一位、正二位、従二位…… 正八位、従八位、大初位、小初位の計十八階位だ。正一位から従三位までは「()(ぎょう)」と呼ばれ、太政大臣、左大臣、右大臣、内大臣の役職を負った。

人数は約10人。

さら従五位までは「貴族」と呼ばれ、約百人いた。正六位から小初位までは「官人(かんじん)」と呼ばれ、約1万人いた。

ところで、左大臣と右大臣、どちらの位が上なのだろう。

答えは左大臣である。

それは天皇が政務を行う内裏(だいり)において、天皇は必ず北を背にして南向きに座る。

天皇から見て、左は日が昇る東であることから、東に座る左大臣の位が上とされたのである。

地方も「(こく)」、「(ぐん)」、「()」に分けられ、朝廷から「国司(こくし)」が、国の長として派遣され、その配下にその地の豪族が「郡司(ぐんじ)」として郡を管理し、郡司の配下に「()(ちょう)」が置かれた。

これによって天皇の命令が広くあまねく日本全国に広まることになった。

そして天武天皇崩御から15年後の大宝(たいほう)年間(西暦701年)、この律令は完成した。

大宝(たいほう)律令(りつりょう)である。

この律令制は、その後千年に渡り続いていった。

これほどの大仕事を成し遂げた藤原不比等は多忙を極めた。

それゆえ4人生まれた不比等の息子に、大切な教育を怠ってしまった。

その教育とは、千四百年前(紀元前8世紀)イスラエルを追われたレビ族の最終目的エデンの園に安住すること、および「ヤハウェ」の教えを信じ、安住先の民と共存共栄を図ることの教育である。

不比等は壬申(じんしん)の乱の後、一度没落した経緯から、息子たちにその轍を踏ませまいと、ひたすら藤原氏の繁栄の方策のみ教育したのだった。

その4人の息子とは藤原(ふじわら)武智(のむち)麻呂(まろ)藤原房前(ふじわらのふささき)藤原宇合(ふじわらのうまかい)藤原(ふじわら)麻呂(のまろ)である。

あまりに、所帯が大きくなりすぎた藤原不比等家は4人の兄弟をそれぞれ分家した。

武智麻呂は南家(なんけ)、房前は北家(ほっけ)、宇合は式家(しきけ)、麻呂は京家(きょうけ)である。

それぞれ分家になっても仲は良かった。


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