第92話 天智天皇即位
敗戦後、中大兄皇子はようやく「天智」を名乗り、38代天皇に即位した。
天智天皇は唐の侵略を恐れた。
九州の筑前に「大宰府」を設置し「防人」という兵隊を組織して防衛に当たった。
敗戦のショックを癒しきれない天智天皇だが、追い打ちをかける知らせが入った。
長い間腹心として働いた中臣鎌足が危篤という知らせが入ったのだ。
急ぎ鎌足邸に駆けつけた天智天皇は、弱り切った鎌足の姿に悲しんだ。
天智天皇は、
「鎌足よ、しばらく会わぬうち変わり果ててしまい、朕は悲しいぞ。鎌足よ、朕はまだやり遂げねばならんことがたくさんあるのだ。鎌足よ、起きてくれ、朕と一緒に働いてくれ」
「ミカド、楽しゅうございましたな…… 私の人生、悔いはございません。ミカド、この国のゆくすえを、盤石なものにしてください。私はもう動けません。ですが、せがれの『不比等』を徹底的に教育しました。どうか私の代わりに盛り立ててやってください」
「分かった。あとのことは心配するな。そちはこれまでよう働いてくれた。そちを冠位十二階の最高位、大徳のさらに上の冠位を設けて『大織冠』といたす。
さらに氏名を『藤原』に改めるがよい」
中臣鎌足改め藤原鎌足は翌日、息を引き取った。享年55歳である。
大切な腹心を失った天智天皇は、政治そっちのけで、毎日酒浸りの生活を送っていた。
そのため国の治安はみだれ、各地に騒乱がおこるありさまになってしまった。
その騒乱を鎮めるのは、税を徴収する朝廷の役割だが、何も動かない。
しかたなく各地の豪族が私兵で鎮めるしかない状況だった。
各地の豪族たちの不満は徐々に増大していった。
そんな事態を苦々しく見ているひとりの男がいた。
大海人皇子である。




