第17話 新しい仲間
「お前等、大事ないか⁉」
しばらくして三郎が合流した。
アルケーは魔人を倒した彼を労おうとしたものの、ふと彼が持っている血の滴る布袋に目が行った。
「何? その袋?」
「首」
「首……」
「見る?」
「見ない」
三郎は誇らしげに討ち取ったベリョーネの首を包んだ袋を持ち上げる。控えめに言ってドン引きだ。労う気も失せた。さっさと話題を変えよう。
「ああそうだ。アンジェとミュンネイが仲間になってくれたから。これからは一緒に戦ってくれるって」
それを聞いた三郎は目を丸くして2人に目を向ける。
「さぶちんよろ~」
「よろしくお願いします」
いつもの様な軽い感じのアンジェリカと畏まった感じのミュンネイ。
「何でどいつもこいつも戦に出たがるんだ?」
呆れた様子で呟く。
しかしアンジェリカの覚悟はさっき聞いたし、ミュンネイも相棒に負けないくらい強い覚悟を持った顔をしている。
こういう頑固な目をした女傑を三郎は知っていた。たぶん何を言っても引かないだろう。
「後で後悔しても知らねえぞ」
「貴方はまたそういう事を言う」
アルケーに文句を言われるが、そんな彼女に三郎は手を差し出した。
「ところでよ。奴がこんな物を持ってたんだが何か分かるか?」
そう言って黒い石の様な物を渡す。一見すると黒曜石の様であるが、その中には禍々しい力が光を放っている。
その不思議な石を覗き込んだ笑亜達は綺麗と言うが、アルケーの顔は険しかった。
「これデーモンウェッジだわ」
「デーモンウェッジ? モンテドルフでぶっ壊したあれか?」
デーモンウェッジ。それは魔人の力を弱体化させる聖女の結界を無効化する為の魔法楔だ。
だが以前見た物は数メートルはある大きなサイズだったのに、これは掌サイズまで小型化している。
「なるほど。だからこんな結界の中に現れたのね」
「不味いですよ! デーモンウェッジがこんな小さくなっちゃったら魔王軍が押し寄せて来ちゃいます!」
これまでは侵攻の橋頭堡となるデーモンウェッジを破壊すれば、魔王軍の侵攻を防ぐ事が出来た。
しかしそれが持ち運べるサイズになったという事は橋頭堡を築く必要なく、直接アルケア王国に攻めて来るという事だ。
「どうしよう! 早く何とかしないと王国が!」
「慌てんな! この国にも兵は居るんだろ? ならそいつ等がまず何とかすんだろうよ」
「でも!」
「笑亜。何でもかんでも気負うのはお前さんの悪い所だぜ。相手が大軍で来るなら王国軍に任せろ。どの道、俺達の人数じゃあどうにもならねえよ」
笑亜は返す言葉が見つからず悔しそうに黙り込んだ。
強力な力を持ってたって数千、数万の大軍で来られたら例え女神の勇者と言えど勝てる見込みはほぼ無い。
鎌倉での戦いで数の暴力で負けた三郎はそこら辺を十分に理解していた。
「いやぁ、さすが坂東武者。言う事が違うわ〜」
その冷静沈着な大人の余裕にアンジェリカが感心する。
「そう言えばライブとか言うのに行かなくて良いのか?」
その問いにアンジェリカはしまったと慌て出した。
「そーだった!! アラクネのドタバタで忘れてた!! ヤバい、馬車も壊れちゃったしどうしよ⁉」
「まあライブは明日だし今日中に着けば良いじゃない」
「ええ〜まさか歩くん〜? ちょっち嫌だな〜」
うんざりした顔でミュンネイを見る。彼女を見たってどうにもならないのだが。
そんな彼女に三郎は助け舟を出した。
「仕方ねえ。ほら乗れ。送ってってやる。おい笑亜、そっちにミュンネイを乗せろ」
「はい」
笑亜は指笛を吹いて馬を呼び寄せる。
三郎に引き上げられて那古に乗せられたアンジェリカは感激した。
「うおぉ、凄え!! 朝比奈三郎と相乗りしてるよコレ!! ヤベえ、歴オタとして嬉死すぎる!!」
「振り落とされんなよ」
興奮するアンジェリカを前に乗せ三郎は那古を発進させる。笑亜もそれに続く。
新たな仲間を加え、魔王の脅威が迫る中、それでも三郎達は恐怖に捕らわれる事なく駆け出すのだった。
「……え? ちょっと待てぇ!! 私は⁉」
置いてけぼりを食らったアルケーの叫びが木霊した。




