第10話 超再生の巨人モンスター
ダンジョンの最深部までやって来たが、そこはだだっ広い部屋でしかなかった。
「行き止まりじゃない。封印されたモンスターはどこよ?」
辺りを見渡しても、これまで来た道を思い出しても、それらしいモンスターは居なかった。
すると菊子はちょんちょんと部屋の一角を指差した。
「朝比奈様ちょっとそこの壁壊してくれます?」
菊子に言われるがまま、三郎は金砕棒を思いっきり壁に叩き付ける。すると壁は容易く崩れて隠されて奥から重々しい扉が現れた。
「見えとったら人間誰しも入りたいと思いますやろ? こう言うのは隠すに限るんです」
菊子の説明になるほどと納得する。
そしていよいよその先に居るであろうモンスターに挑もうとした時、アルケーが待ったを掛けた。
「扉に封印が施してあるじゃない」
「そうですよ? その封印を解いて奥に居るモンスターを倒して下さい」
「は!? 封印は貴方が解くんじゃないの!?」
「生憎と封印を施した人間はもう居らんのです。せやからこの封印を自力で解いて且つモンスターも倒すのがクエスト達成条件です」
「なら最初から言いなさいよ! 出来るけど!」
面倒臭いとでも言うようにアルケーはアーリーライフルを召喚し扉の前まで進んだ。
「何か手があるのか?」
「カラミティの趣味の悪いドレスの魔法を破壊したのを覚えてる? この程度の封印魔法ならアーリーライフルで壊せるわ!」
そう言うとアルケーは扉に銃口を当ててゼロ距離でアーリーライフルを発射する。
するとガラスが砕ける様に封印は光の破片となって飛び散った。
「おお、すげぇな」
感心する三郎にアルケーは「当然」と調子に乗って見せた。
一行は真のダンジョン最深部へと脚を踏み入れる。魔法光によって照らされたそこは先程の部屋より更に広い空間が広がっていた。
巨大な石柱が天井を支え、部屋の中心には大樹の如き白い何かが床から天井へと万歳をする様にそびえている。
菊子はその白い大樹を示して言った。
「あれが件のモンスターです」
その時、その白い巨体が来訪者を迎える様に動き出す。
大樹の一部がボロボロと崩れ、巨大な人間の姿となる。だがその動きはまことに奇妙だ。人間と言うより蛸とかイカの様にクネクネと身を捩らせており、顔には目玉が無くムンクの様にポッカリ開いた3つの穴が目と口を思わせた。
「再生能力を持ったモンスターだったわね?」
「左様です。ほな気いつけて討伐したって下さい」
そう言って菊子はアルケー達から離れる。何故か足元を気にしている風だったが、今はそんな事に気を取られている暇はない。
3人はそれぞれの武器を構えて巨人に相対した。
前衛は三郎と笑亜が務め、アルケーが援護射撃を行う。
「笑亜! 奴の後ろに周り込め! 正面は受け持つ!」
「はい!」
前衛の2人は巨人の注意を引き付ける役割があった。そうしないと運動音痴のアルケーが狙われた場合、彼女はまず逃げ切れないからだ。
三郎は巨人の注意を引きつつ、笑亜が速く後ろを取れる様に誘導した。
「先ずは一太刀!」
と言いつつ金砕棒の一撃を叩き込む。だがその手応えは驚く程に無かった。
まるで腐った木の様に肉が砕け散る。いや、これを肉と呼んでいいのかすらわからない。飛び散った肉からも、抉れた肉からも血が一滴も飛び散らないのだ。
そして抉れた傷から泡立つ様に肉が盛り上がったかと思うと、次の瞬間には元通りになっていた。
(なるほど。こいつは厄介だ)
反撃とばかりに巨人の巨大な手が振り下ろされるが、三郎は金砕棒をぶん回しその手を打って粉砕した。
更にそこへアルケーの援護射撃と笑亜の斬撃が巨人を襲うが、どれだけ攻撃を与えようとそれが無かった事のようにすぐに回復してしまう。
「これじゃあきりがねえ」
終わりの見えない戦いにさすがの三郎も焦りを見せる。今はまだ相手の攻撃を捌いていられるが、こんな戦闘が長く続けばさすがにすり潰されてしまう。
その時、巨人の標的が笑亜に変わった。
笑亜は盾を構えてムチの様な平手打ちに耐え、続けて彼女を捕らえようと迫る手を身軽なステップで回避して行く。
それを見た三郎が叫んだ。
「何やってんだ!? 剣で砕け!」
「無茶言わないで下さい! 師匠みたいに出来たら苦労しないんですよ!」
あんな質量の大きい手を真正面から砕ける訳が無いと文句を言う。
不出来な弟子の有り様に三郎は仕方ねえなと、金砕棒を振りかざし突っ込んだ。
前衛の2人が懸命に敵の注意を引きつけている頃、アルケーは柱に隠れながら魔弾を放ち続けていたが、全く決定打を与えられない現状にやきもきしていた。
「このままじゃ埒が明かないわね。こうなったら破壊光線で……」
と考えるがすぐに却下する。あんな攻撃をしたら遺跡が崩壊し生き埋めになりかねない。しかし、ならどうやって巨人に決定打を与えれるかだ。
今撃っている射撃魔法では明らかに火力不足であり巨人に当たってもすぐに回復してしまう。奴を倒す為にはもっと火力のある攻撃が必要なのだ。
そんな思案をしていると視界にチョロチョロとする人影が入った。
「あいつ何やってんのよ!?」
戦闘には参加しないとか言っていた筈の菊子が、餌を探すネズミの様に戦場の真っ只中を物色していたのだった。




