第7話 冒険者登録②
「ではステータス測定を行いますので、こちらの水晶に手を置いて下さい」
そう言ってギルドの女性は菱形のキューブが入った水晶がある受付けに2人を案内した。
いつの間にか2人の後ろには、この新人がどの程度の奴なのか品定めしようと、ちょっとした人集りが出来ている。
こうやって少しでも気になる新人がいたら、自分のパーティーにスカウトする訳だ。
まあほとんどが先程のソワレ兄弟同様、三郎には期待しておらず、気品と美しさを放つアルケーが目当てなのだが。
「じゃ、先ずは私から行くわ」
皆の注目を浴びるアルケーが前に出る。
別に冒険者登録に乗り気になった訳じゃない。ただこれを乗り越えない事には次に進めないと思っただけだ。
水晶に手を置くとステータス測定が始まる。
笑亜曰く、これで魔力値や攻撃値などが鑑定魔法によって明らかとなるらしい。
その結果が1枚のカードとなって水晶が置かれた台座から出て来た。
「ッ!? 何この能力値は!? え、故障……じゃない!?」
ステータス表を確認したギルドの女性は信じられない物を見た様に、測定器の故障を疑った。だが測定器は至って正常だ。
「さて私のステータスはどんなものかしら?」
アルケーは落ち着いた様子で結果を聞く。
それとは対照的に彼女のステータスを見たギルドの女性は興奮して結果を伝えた。
「魔力値が非常に高いです! その他のステータスも軒並み平均値を大きく上回っています! これなら即上級冒険者の仲間入りですよ!」
おおっと周りの冒険者からも感嘆の声が漏れる。これはとんでもない新人が現れた。
「セーブしてもこんなもんか。フッ、隠しても溢れてしまうようね」
さっきまでの不機嫌はどこへやら。気取った様子でアルケーは髪を掻き上げる。
実はこの測定でアルケーは女神としての力を抑えていた。無論本気を出したら人間ではあり得ない数値を叩き出してしまい怪しまれるからだが、それでも人並み以上のステータスとなってしまった。
そして次は三郎の番だ。
「え? あのオッサンも冒険者登録するのか?」
「どうせ生活に困った農夫か猟師だろ。まあ採取クエストくらいなら出来るんじゃね?」
「あの服は東南諸島の出身か? いや何か違うような……」
第一印象はソワレ兄弟と同じく三郎を侮ったものだった。そんな中にあの兄弟の顔もある。
「チッ! 見てろテメェ等!!」
三郎は自分を侮る冒険者やニタニタと意地の悪い笑みを向ける兄弟に向かって叫び全力で水晶を握った。
バキィッ!!
木っ端微塵に砕け散る水晶。
宣言通り三郎は力を見せ付けたのだ。
「え!? ちょっ!? 何やってるんですかァー!?」
声を裏返しながらギルドの女性が驚愕する。
「え? 握って力を測るんだろ?」
「軽く! 軽くで良かったんです! 誰が握り潰せと言いました!?」
「いや……、そういうもんかなぁと思って……」
「アアァァ!! この水晶高価なのにィー!!」
人のステータスを測れる鑑定水晶は魔法技術の粋を集めたアイテムでありとても高価だ。
それが壊れた事による損害や業務の停滞。恐らく始末書ものだろう事態にギルドの女性は頭を抱えた。
「貴方ってほんっとバカね」
毎度問題を起こす三郎にアルケーは呆れ顔になる。
「侮られて黙っていられるか」
三郎はそう言って顔面蒼白のソワレ兄弟に見せ付ける様に、手に残った水晶の欠片をぐしゃりと握り潰した。
もう誰も三郎を侮って見る者は居なかった。
「水晶が割れるなんて2度目だわ……」
「前にも割った人居たんだ」
「そこの笑亜さんです」
お前かいと笑亜の方を見る。
「いや……、そういう物かなと思いまして……」
「この脳筋師弟は……」
ステータス測定は後日改めて行うとして、とりあえず三郎とアルケーは次の書類手続きに移行した。
クエストに関する命の危険は自己責任という誓約書にギルドの機密保持の誓約書等の書類と羽根ペンが渡される。
「ではこちらの書類に署名を」
「おう」
三郎は渡された書類をテーブルに広げ、羽根ペンをインクに浸けようとした。羽根の部分に。
「違う違う違う! 逆! 逆だから!」
「え? 逆?」
そう言って右から左手に持ち替える。
「利き手の事じゃない! 貸して!」
アルケーは羽毛ペンを取り上げると見本を見せる。
筆文化の三郎はモサモサしてる羽根部分にインクを浸ける物だと勘違いしたらしい。
「ほらこれで書けるから」
「ああ悪いな」
インクの着いた羽根ペンを渡され再度三郎は書類と向き合うが、なかなか手が動かない。
「なあ、今更なんだがよ」
神妙な面持ちで三郎はアルケーの方を向く。
「今度は何よ?」
「よくよく考えたら俺、この世界の文字の読み書き出来ねえわ」




