第6話 冒険者登録
今日もギルドの酒場は活気に溢れている。
まだ日が高いのに飲んでいる者、仲間達と次のクエストの話をしている者で様々だが、そんな中に仏頂面したアルケーの姿があった。
「なあ、機嫌直せよ~」
それをうんざりした顔の三郎が宥める。
昨日の交渉の結果、菊子の協力を得る事が出来たのだが、その為には彼女の運営するギルドに入る必要があった。
アルケーはそれが不満なのだ。
「誰の所為だと思ってるのよ。菊子に良いように丸め込まれちゃって情けない」
「丸め込まれてねえよ。これが一番良い落とし所だったんだ」
「何が落とし所よ! 結局菊子は戦わないじゃない! それなのにギルドに入って冒険者として働け? 舐めてんの!?」
「戦う気のない奴を仲間にしたって役に立たねえだろうが。それならあいつのワープスキルで助けてもらった方がマシだ。これで誰かさんの所為で旅が遅れる事も無くなるしな」
「何? 私の所為だっての?」
売り言葉に買い言葉。
だんだんとヒートアップして行く2人の口喧嘩にいつしか周りの視線も集まっていた。
「まあまあアルケー様落ち着いて下さい。ここのギルドは他と比べて色々サポートが充実してるんですよ。入るだけ入ってても損はありません」
既にギルドに入っている笑亜がフォローを入れて宥める。
それでもアルケーはツンとしてテーブル上の料理を摘んだ。
「それで笑亜。冒険者登録って何をすれば良いんだ?」
「簡単ですよ。水晶を握ってステータスを測定して書類を書くだけです」
「ステータス?」
聞き慣れないワードに三郎は聞き返す。
「あー、簡単に言えば力ですね。それによって冒険者としての初期ランクが決まります。ステータスが高ければいきなり上位ランクからスタートする事も出来るんです」
「なるほど。要は力を見せれば良いんだな。やってやる」
そう言う事ならと三郎は自信満々に気合いを入れた。その時、
「おいオッサン」
いきなり後ろから声を掛けられる。
振り向けば若い冒険者2人が三郎を侮る様な目で見ていた。歳は20歳にもなっていないのではなかろうか。
「もしかして今から冒険者登録するつもりなのか?」
「そうだが、何か用か?」
若い冒険者は2人してマジかよと小馬鹿にする様な溜め息を吐いた。
「はぁ~、困るなあオッサン。冒険者を舐めてもらっちゃあ。悪いけどアンタみたいな年寄がやって行けるほど甘い世界じゃねえんだよ」
「畑がモンスターに荒らされてダメになったのか? 日銭稼ぎなら商人の下人にでもなった方が良いぜ」
明らかにこの冒険者2人は三郎を生活に困窮して冒険者になろうとしているオッサンと見ている。
確かに周りを見てみると冒険者達のほとんどが血気盛んな若者で、年輩者はいずれもそこまで生き残って来た実力者ばかりだ。三郎みたいなのは浮いている。
「何だお前等。俺を舐めてんのか?」
下に見られ坂東武者スイッチの入った三郎は噛み付く様な眼光で睨み返した。
「いやいや、俺達はオッサンを心配してるんだ。よく居るんだよなあ。今でも現役だって勘違いしてる年寄りが」
「なら試してみるか小僧ども! 表出ろ! 相撲で――!」
「三郎さん、アルケーさん。冒険者登録の用意が出来ました。受付けカウンターまで来てください」
そこでタイミング悪くギルド職員が呼びに来た。
「さ、行くわよ」
アルケーはさっさと行ってしまう。
まだこの若造達を分からせていないのだが、笑亜に急かされた事もあり、三郎はせめてとがんを飛ばしながら渋々と後に続いた。
「おいお嬢。あいつら何なんだ?」
いきなり喧嘩を売って来たあの2人についてギルド職員に問う。
「最近活躍しているソワレ兄弟です」
「私、あんな人達知らないんですけど?」
「冒険者登録したのは6ヶ月程前ですので、ちょうど笑亜さんが夜逃げして行方をくらましてた時期ですね」
「言い方ぁ!」
何故かこのギルド職員の女性は笑亜に対する当たりが異様にキツい。そう言えば目も吊っててツンとした顔立ちをしてる。
それはそうとあの失礼な2人はソワレ兄弟と言うらしい。何やら先輩振っていたがまだまだ新米の冒険者だ。
「ああなるほど。一番調子に乗る時期だな。居るんだよなぁ弓でも馬でも。習い始めの調子が良くて自分を天才だって勘違いしちまう奴」
何だ大した事ねえなと三郎は鼻で笑った。それはそうと後できっちり分からせてやろうとも思った。




