第16話 坂東武者VSオーガ
仁ノ里のオーガ達は三郎に続いて屋敷に討ち入り、守備する波ノ里のオーガ達と戦闘になった。
先程のクロスボウでの一斉射撃は確かにわざと外した物が多かったが、中には的確に仁ノ里のオーガを射殺した矢もあった。
だがそんな中途半端な攻撃は相手に致命的なダメージを与えられない上にただ怒らせるだけだ。
だから先に攻撃された仁ノ里のオーガ達は覚悟が決まって怒り狂い突っ込んだ。
対して波ノ里側は及び腰のまま白兵戦となってしまったので戦意が薄くぶつかった瞬間に崩れかかった。
「先ずはあの偉そうな事を言ってた人間を殺るぞ!」
「人間ごときが調子乗ってんじゃねえぞ!」
そんな中でも三郎とシャルディには集中的にオーガ達が群がって来る。やはり元から敵認定している人間相手の方がやりやすいらしい。
しかし2人とも戦闘能力はそこら辺の人間よりはずっと高い。
シャルディは騎士隊長を任されるだけあるし、三郎に至っては神の如きと言われる程の剛の者だ。
それを所詮は非力な人間と侮ったオーガは箒で掃かれた落ち葉の如く一瞬で弾き飛ばされた。
三郎が馬上から砲身金砕棒を振るうと5,6人が一気に吹っ飛ぶ。馬から引き摺り降ろそうと取り付いても首根っこを掴まれ人形の様に投げ捨てられた。
「何だこいつ本当に人間か!? 魔法も発動してないのに俺達を――うわぁッ!?」
種族としては人間より力のある筈のオーガが三郎一人に蹴散らされて行く。
そうやって縦横無尽に騎馬突撃を繰り返すものだからオーガ達は熱した鉄球に押し当てられた氷の如く溶けて行った。
『神の如き壮力をあらわし、敵する者は死することを免れず』
その戦い振りは正しく吾妻鏡に記された事そのものであった。
「オラァ来いや腰抜け共!! 鬼みたいな成りしてるくせに弱えぞ!!」
怒号を上げながら三郎は騎馬突撃を繰り返す。
この程度の兵では話にならない。
シャルディからオーガは力自慢と聞いていたのに、これでは鎌倉で戦った御家人の郎党達の方がまだ強かった。
坂東という蛮勇跋扈する無法の地で、鍛えに鍛え抜かれた坂東武者の力はオーガすら凌駕するものなのだ。
「無理だ!! こんなの勝てるか!!」
遂に恐れをなして逃げ出す者が現れ始めた。
そこへ仁ノ里のオーガ達まで突っ込んで来たものだからいよいよ波ノ里側は総崩れとなる。
数では有利だった筈なのに、遂には屋敷の壁際まで追い詰められてしまった。
「お、お前達、魔王様に逆らってただで済むと思っているのか!?」
波ノ里の頭領オーガが悔しさいっぱいに台詞を吐く。
「お前達こそ魔王の力に屈しおって! 誇りあるオーガとして恥ずかしくないのか!?」
チョウソ達仁ノ里のオーガ達は、戦意を失った波ノ里勢をぐるりと取り囲み武器を突き付けて、その情けない行動を糾弾する。
力を尊ぶオーガではあるが大義も何もない力に媚び諂う訳ではないのだ。
「バカが! あの力でまた暴れられたらどうするんだ! 今度こそ皆殺しにされるかもしれないんだぞ!?」
「だからそうなる前に倒してしまうんだよ! どけ! お前達に構ってる暇はない!」
チョウソ達は波ノ里オーガ達を押し退けて屋敷に押し入った。
襲撃は速さの勝負。
一応、屋敷の裏手にも兵を回しているが人数不足でがっちりと包囲できていない。だから速くカラミティを見つけないと逃げられてしまうかもしれないのだ。
オーガ達と共に屋敷に踏み込んだ三郎は、戦闘中にも関わらず日本とはまるで違う綺羅びやかな内装に一瞬目を丸くした。
「魔王の居場所は大体見当が付く。来い」
頭領のチョウソが先頭に立って突き進む。
元は彼等の族長が住んでいた屋敷だ。守衛で出入りしていた事もあるので勝手は分かっているらしい。
2階に上がるとオーガ達はカラミティが居そうな部屋の扉を次々と蹴破って行く。
そうして一際大きな扉を荒々しく開くとモアッとした血生臭い匂いが鼻を突いた。
部屋に人影が2人。
白髪の不気味な血色をした男と、趣味の悪いオブジェの様に無数の棘に貫かれ血塗れた女の姿があった。
「ッ!? アルケーか?」
赤い血で汚れたすすき色の髪とあんな状況なのに、魔王に屈していない気高く美しいは間違いなく彼女だった。
「誰が入って良いと言った」
刹那、男の腕にアーリーライフルに似たアームが装着され問答無用の一撃が放たれた。




