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女神のさぶらい 〜逃げた勇者共に代わり武士を召喚してやった〜  作者: サムハラ
第四章 魔王襲来編

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第14話 血に染まるアルケー

 シラモに案内されとある部屋の扉を開けると、この世で一番軽蔑する顔が勝ち誇った表情で待っていた。


「ようやく来たか。料理が冷めてしまうぞ」

「カラミティ……」


 生きているのか死んでるのか分からない不気味な血色の顔をニヤけさせ、カラミティはテーブル上の料理を口に運ぶ。

 こういう時は相手が来るまで手を付けないというのがアルケーの常識なのだが、そんな気遣いもこの男には無いらしい。


「お前の為に誂えた特別なドレスだ。似合っているぞ」


 そんな事を言われても嬉しくない。むしろ1秒でも早くこれを脱ぎたい気分だ。


「食事って聞いたけど、料理が1人分しか無いじゃない」


 アルケーはお望み通りの食事をしてやろうと自分の分を探す。

 だがテーブルの上には1人分の料理しか置かれていないようだ。


「お前の分はここにある」


 そう言ってカラミティが足をトントンと床に鳴らす。

 そこにはテーブルの上と同じ、アルケーの分の料理が置かれていた。


「さあ頭を垂れて食え」

「アンタッ……! どこまで私をコケにすれば気が済むの!? ふざけるな!」


 あまりの屈辱にアルケーは目をひん剥きカラミティを睨む。

 もう我慢ならない。いっそこの皿を投げ付けてやろうとしたその時、突如両脚に激痛が走った。


「ああぁぁぁ!!」


 そのままアルケーは膝を折って料理の中に倒れ込む。

 何が起こったのか確認して見ると白く針の様な棘が脚を貫いていた。


「何よ!? この服は!?」


 その棘は彼女が着させられたドレスから飛び出ていた。棘はまた彼女の肉を抉りながら元の布地に戻り、純白のドレスに赤い穢れを作る。


「言っただろ。お前の為に誂えた特別なドレスだと。その血の花嫁(ブラッディブライド)は着用者を魔法の棘で貫き苦しませる衣装だ。ああ思った通り、血に染まり苦しむお前は美しい」


 カラミティは痛みに苦しむアルケーの頭を踏みスープに押し付ける。

 それを退かせようと脚を掴むが、次は手袋から無数の棘が彼女の腕を貫いた。


「あぁッ!!」


 棘による痛みで抵抗すら出来ない。

 傷は魔法で完治出来るとは言え、身体を貫かれる激痛は彼女の精神を削り取って行く。

 それがカラミティの狙いだ。


「お前に天界を追放された時、我は思ったのだ。我を拒んだお前を我の物とする。だがただ従わすだけでは面白くない。身も心もボロボロとなり、泣きながら我に縋り乞うお前が見たいのだ」

「ふざけんな! 誰がアンタなんがッ――!? あぁ……」


 首のチョーカーからも棘が飛び出し彼女の喉を貫く。

 もはやアルケーには喋る権利すら与えられていない。

 ただただカラミティに苦悶の表情と無様な姿を見せる事だけが、彼女に求められていた。


「さあ次はどこを貫こうか? どうせ超回復(リヴァイブヒール)ですぐに治るんだ。なら心臓を突いても問題はあるまい?」


 喉を貫く棘が元に戻る。

 アルケーはすぐに超回復(リヴァイブヒール)を発動するが、喉奥に充満した血生臭い匂いによって、むせながら血を吐いた。

 それでも彼女の目は死んでいない。


「アンタ……そうして居られるのも今の内よ」

「ん~? 面白い事を言うな。お前の用意した人間は死んだぞ? まだ何かあるというのか?」

「私はまだ諦めていない。私の世界の生命をあんなぞんざいに扱う奴に、この世界を取られて堪るもんですか」

「おかしな事を言うな。お前も魔人が率いるモンスター共を殺したではないか」

「世界を取り戻す為なら犠牲は覚悟の上よ。でもね、私はアンタみたいに無闇やたら生命を殺したりなんてしない」


 カラミティは自分が元神だった事を鼻に掛け、下界の生命を何も思わず奪うような奴だ。

 アルケーに言ったこの世界の生命を殺し尽くすというのも冗談などではない。こいつはアルケーが苦しむなら本気で下界の生命を殺戮するつもりなのだ。

 そんな奴に自分の世界を乗っ取られる訳にはいかない。

 だがカラミティはそんな女神を鼻で笑った。


「生命などマナを生み出す為だけの存在ではないか。お前がオーガを助けようとしたのも貴重なマナの発生源を失いたくないからだろう? 生命の一つや数百程度のマナなどたかが知れてると言うのに。女神だというのに意地汚い事だ」


 まるで生命を尊んでいない台詞を吐く。

 彼に取って生命とはマナというエネルギーを生み出す、燃料のような物なのだ。

 これが世界を育て力を持った女神と、世界を育てられなかった神の違いなのかもしれない。

 その時、外の方で大きな叫び声が聞こえた。

 カラミティは一瞬不機嫌そうになりながらも窓から外を見る。すると珍しい物でも見たかの様に顔をにやけさせた。


「ほほう。外が面白い事になっているな」


 屋敷の外に煌々と燃えるいくつもの松明の光。

 赤髪の集団が塀の内と外で屯し、互いに煌めく刃を向けていた。

 魔王討伐の戦いが始まった。

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