第3話 武士と騎士の共闘
騎士達はその光景に驚愕していた。
ディバインジャベリンすら弾いたゴーレムを魔法強化もしてない矢で怯ませている男がいるのだ。
シャルディは思わず感嘆の言葉を漏らす。
「奴の放つ矢は上級魔法並みの威力があるのか!?」
一方、三郎は那古を疾走らせながら矢を射る。そして刺さりこそはしないが、直撃した矢はゴーレムの身体を少し怯ませた。
「クソッ! 鎮西八郎殿ならぶち抜いてたろうによ!」
三郎は一矢で軍船を沈めた武人と比較して、己の至らなさに舌打ちする。
次に山を7巻半する大ムカデを倒した俵藤太を真似、矢尻に唾を付け射た。
ガンッ!!
だがそれでも奴を僅かに怯ませるだけで倒すまでには至らない。
そうこうしていると体勢を立て直したゴーレムがガトリング砲を三郎に向けた。
ダッダッダッダッダッ!!
三郎はすぐに馬首をめぐらせ魔弾を回避する。
バイコーンである那古の脚はこれまで三郎が乗って来たどの馬より速い。まるで飛んでいるかの如く駆ける。
ゴーレムは那古を追ってガトリング砲を旋回させるが、三郎の放った矢によってまた銃身を弾かれた。
三郎もガトリング砲を見た瞬間、あれがアルケーの持つアーリーライフルと同じ類の物だとすぐに理解していた。
(要はアレの正面に立たなきゃ良いんだ!)
そんな単純な思考と直感と持ち前の騎乗スキルだけで、三郎は魔弾の雨を回避して見せる。地形の稜線や岩に隠れ、隙を見ては矢を射掛けた。
だがいくら矢を射掛けても、奴の鎧は固く弾かれてしまう。
ダメージを与える為には、もっとゴーレムに近付く必要があるのだ。
三郎が囮になっている一方で、騎士隊は態勢を立て直していた。
「全員下馬しろ!! 盾を組め!! ノーブル・イージスだ!!」
シャルディの指揮で騎士達は盾を構えて隊列を組む。
並べられた盾が魔力で強化拡張され、城壁の様な防御魔法を展開した。
ノーブル・イージスは仲間達と魔法を掛け合わせる事で出力を上げる防御魔法だ。
騎士達の動きに気付いたゴーレムは、今度こそ彼等を殲滅すべくガトリング砲を向ける。
「来るぞ!! 踏ん張れ!!」
シャルディの怒号と共に騎士達は歯を食い縛り身構える。
飛来した魔弾が防御壁にぶち当たり、けたましい衝突音が響く。だが幾人もの騎士達によって強化されたノーブル・イージスは魔弾の雨に耐えて見せた。
「よおし!! このまま前進だ!!」
攻撃を受けつつ、まるで古代の重装歩兵がやったファランクスの様に、騎士達はジリジリとゴーレムへにじり寄って行く。
さらにこれは好機と三郎もまた那古を駆けさせた。
このままゴーレムが騎士隊を攻撃すれば三郎が、三郎に狙いを変えれば騎士隊が奴に襲い掛かるだろう。
攻撃を弾かれたゴーレムはガトリングを停止させ魔弾での攻撃を諦める。
「今だ!! 突っ込め!!」
騎士達は一斉に駆け出した。
この距離なら走ってでも奴に肉薄出来る。仲間の仇を取るべく騎士達はゴーレムへと殺到した。
だがその時、ゴーレムは凡そその巨体には似つかわしくない跳躍で後方に飛んだ。
いやそれをただの跳躍と呼んで良いのか分からない。
飛び跳ねた時、脚や胴からは魔力が噴き出し跳躍を助けていた。よって跳躍と言うより浮遊と呼んだ方がいいかもしれない。
「くそっ、また距離を取られた!」
せっかくの攻撃のチャンスを逃しシャルディは苦い顔をする。
騎士隊は急いでまた盾を並べて奴の攻撃に備えた。
その防御魔法の厄介になろうと、ちゃっかり三郎は騎士隊の後ろに隠れた。
「おい君! 何をしている!?」
「別に良いだろ? 守ってくれよ」
「ふざけるな! 何で僕達が君の盾にならないといけないんだ!?」
「さっき助けてやっただろ? これであいこにしようぜ」
そう言われてシャルディはバツの悪い顔をする。どう言われようとこの疫病神的人物の言う事を素直には聞いてやりたくないらしい。
だがそんな我が儘も言ってられない。
「隊長! 奴が!」
盾を構えた部下が叫ぶ。
見るとゴーレムは8本の脚を地面に深く突き刺し、身体の各所からヒレの様な物を出していた。
更に蜘蛛の胴が割れ、中からアーリーライフルに似た砲身が現れる。
何か来る。
この場に居た誰もがそう思った。
だが逃げる事は出来ない。もし隊列を崩そうものなら、間違いなく後ろから魔弾の雨を受ける。迎え撃つしかないのだ。
ゴーレムの一角が輝き、同時に胴の砲身にも光が集束する。
「まずい……まずいぞこりゃ!」
三郎はこの光景に見覚えがあった。
デーモンウェッジを破壊した時にアルケーが使った破壊光線と同じなのだ。
女神の奥の手と同じ魔法を放つ事が出来るモンスター。
いや、あの腕の武器と言いここまで来れば考えられる事は一つだ。
「あいつが魔王カラミチか!!」
刹那、破滅の光が彼等を包んだ。




