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第13話 お前らの所為だ

 今日も1日が終わるといった夕暮れ時、宿舎の入り口で騒がしい声が響いた。


「おい! 三郎のおっさん居るか!? もう二日酔いも治っただろ!?」


 こんな時間に来るなんて本当に非常識な奴だ。世間はもう仕事終わりの時間だと言うのに。

 アルケーは目配せをして対応しないように指示を出す。どうせ明日にはこっちから訪ねるつもりだ。今からあのめんどくさい奴の相手なんかしてられない。ここは居留守をするに限る。


「何だよやっぱり居るじゃん」

「ウソでしょ!? 何で入って来てるの!?」


 だが不屈は悪びれる事なく勝手に宿舎に入って来た。


「居留守なんか使いやがって最低な奴らだな。社会のルール分かってないんじゃないか? まあどいつもこいつも社会の厳しさなんか知らないんだろうけどな。とりあえず謝れよ。ちゃんと斜め45度で謝罪しろ!」

「勝手に上がり込んで来る不法侵入者に言われたくありませんっての」


 笑亜がぼそりと文句を言う。

 それを聞いた不屈はぎょろりと彼女を睨見つけて脅して来た。


「おい未成年だからって調子に乗るなよ? この世界じゃ日本みたいにSNSもネットもないんだ。ムカつく奴を晒し上げて痛めつける事なんて出来ないんだからな!」

「つまり直接ブン殴れば良いんですか!?」

「あ~もう、やめなさいやめなさい!」


 一触即発の所でアルケーが割って入る。

 笑亜は嫌いな相手にはとことん冷たい娘だ。

 不屈の性格もあるだろうが、昨日彼に言われた事がよっぽど頭に来ていたのだろう。今にも本当に殴りかかりそうな勢いだった。

 そんな彼女を抑えつつ椅子を指差す。本当は明日言うつもりだったけどこの際だ。


「不屈、ちょっとそこ座りなさい!」

「話を逸らさないでくれますか女神様? まずは謝って――」

「うるさい!! とにかく座りなさい!!」


 不屈は舌打ちをしつつガンッと手荒く椅子を引き言われた通り座る。

 アルケーはその向かいに座るとまるで取り調べるように肘を付くと語りだした。


「貴方、何故ラミが出て行ったか知ってるの?」

「は? そんなの知りませんよ。ある日突然居なくなったんだから。どうせあの親衡ってのに誑かされたんだ」

「あ~、やっぱりそうなのね」

「何だよ? 女神様は知ってるんですか?」

「そりゃあ昨日ラミ本人から聞いたもの」

「な、んだとぉ!?」


 ここで不屈の表情が一変した。今までの捻くれた顔が崩れて必死にラミの事を聞き出そうとする。それはもう身を乗り出して、今まで何とか取り繕っていた女神への態度が吹っ飛ぶような慌てようだ。


「おお教えてくれ! 何でラミはオレの前から姿を消したのかを!」

「あぁもう、そのつもりだから座りなさい!」


 すがってくる不屈の手を振り払い座らせる。

 やっぱりこいつはラミの真意を知らなかったようだ。ならここからは上手く彼女の事を諦めるように仕向けなければ良い。

 アルケーはそれとなく笑亜達に目配せをして作戦開始を合図する。そして今日、本人から聞いた不屈が森に籠もって全く人と接しない不満や、不屈が立身出世する事が彼女の望みであること、そしてその為に魔王軍やドラゴンと戦わせた事を伝えたのだ。


「……嘘だろ? ラミがそんな事を……」


 ラミの真意を知った不屈は呆然としていた。まさかこれほどまでに自分とラミの将来願望が違っているとは思っていなかったのだろう。


「正直言って、貴方にちょっと同情するわ。貴方は静かに暮らしたいだけなのに色んな困難を仕組まれて」


 本当は微塵も同情なんてしてないのだが、こいつとラミを別れさせる為なら心にない事だって言ってやるとアルケーは女神らしい慈悲深い声で囁く。

 それに輪を掛けて周りも同調した。


「もうさぁ この際ラミっちの事は諦めたら~?」

「より戻したってどうせまた拗れるだけ」

「いやー、おれもこれを聞いて酷いおもたなー」

「ヒドイヒトデスヨネー」


 一部下手くそな芝居の2人が居たがまあ良い。ラミの本性を知った衝撃で不屈はそれに気付いていない。


「何だよそれ……。オレはただ静かに暮らしたいだけなのに、何でそうさせてくれないんだ……ッ!」


 俯き怒りと悲しみが混じった顔をして不屈は身体を震わせる。

 彼にとってはラミと一緒にスローライフを送りたかったのだろうが、当のラミがそれを望んでいないどころか、それをぶち壊す為に暗躍してたなんて思っても見なかったようだ。

 これなら案外簡単に諦めるんじゃないだろうか。何ならこの感情を別方向に向けてやれと、アルケーは更に言葉を続ける。


「ラミを連れ帰ったって貴方の望むスローライフは望めないわ。アンジェの言う通り彼女の事は諦めなさい。何なら私達と一緒に魔王討伐をして見返してやりなさい」

「うわぁぁぁぁぁ!!」


 だが突然、不屈は狂ったように喚き散らし、手当たり次第に辺りの物を倒しまくると、真っ赤な泣き面をしながらブンブンとアルケー達に指を差し怒鳴り始めた。


「お前らの所為だお前らの所為だお前らの所為だぁぁ!! お前らが余計な事するからだ!!」

「はぁ!? 何でそうなるのよ!?」

「うるさい!! あぁぁぁぁ!! 何でこうなるんだよぉ!! うわぁ~!! ギャー!!」


 感情に任せて奇声を上げて暴れ回る。

 笑亜達が「やめて」「落ち着いて」と言ってもまるで聞かない。もう論理的な事柄なんて彼には通じないのだろう。

 だがそれもすぐに終わった。

 三郎が不屈の髪をグシャッと掴むや乱暴に引っ張りながら連れ出すと道に叩き付け、間髪入れず斬り捨てた。


「ちょお!? 何してんの!?」

「面倒だから斬った。安心しろ峰打ちだ。殺っちまって良いなら今から首を刎ねるぜ?」

「やめぇい!」


 見れば不屈は本当に斬られたと思って気絶している。

 まあ何にせよ一応は彼を大人しくさせる事が出来た。すると笑亜がちょんちょんと伺いを立てる。


「川に捨ててきましょうか?」


 何で私のお供ってこんな物騒なんだろうとアルケーは頭が痛くなった。

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さすがサブちゃん様はやるときはやるお方…
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