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第12話 めんどくさい事

 ラミから一通りの事情を聞いたアルケー達は帰路に付いていた。

 別れ際に彼女から「不屈の事、よろしくお願いしますね」と念押しのように頼まれはしたものの、正直この案件をどう処理したら良いか凄く迷っている。


「ラミも……大概だったわね……」


 事情を聞いたら彼女も中々の曲者だった。


「わざと魔王軍を誘い込んだり、ドラゴンと戦わせたって……そこまでやります!?」


 言うなれば彼女は社会的地位の高い男が好きなハイスペ主義だ。

 しかも出世の為なら手段を選んでいない。恋人だろうが平気で危険に送り出してるらしい。

 最初はどうせ不屈が暴力でも振ってたから逃げられたんだろうと思っていたが違った。蓋を開けて見たら単にラミが勝手に見限ってるだけだった。何ならいざこざの発端は彼女にあるんじゃないかと思えてきたくらいだ。


「アルちどうする~? うちのミュンミュンはもうどうでも良いみたいな顔してるけど?」


 見ればミュンネイはこのどっちもどっちな案件にうんざりした顔をしていた。

 整理するとラミは不屈に偉くなって欲しい。でも不屈は目立ちたくない、静かにスローライフしていたいと思っている。

 完全にお互いのやりたい事がすれ違っており、ラミの方は見切りを付けて親衡に乗り換えたが、不屈はまだ彼女に未練タラタラと言った状態だ。

 正直めちゃくちゃめんどくさい。何でこんなめんどうな事に巻き込まれてしまったのかこの状況を呪いたい気分だが、悔やんでも仕方ない。


「とりあえずは不屈の方を止めるわ。あっちの方が実害ありそうだし」


 やっぱり親衡を殺そうとしている不屈の方をどうにかすべきだとアルケーは判断する。とりあえずそこまでは決める事が出来たのだが、


「そんでその後は?」


 この質問に「むむむ」と悩み込む。

 隠遁生活を送りたい不屈と世間で出世して欲しいラミ。送りたい生活が真逆過ぎてよりなんか戻せそうにないし、だからと言って別れたまんまじゃ不屈のストーカー行為は続いてしまう。


「……一番手っ取り早いのは不屈を魔王討伐に連れて行ってラミと引き離す事だけど……」

「え、私あの人と旅とか嫌なんですけど……」


 笑亜は心底嫌な顔をして拒否する。

 何回も言うがあんな性格の奴と一緒に居たらストレスが溜まって仕方ない。

 でもそれはアルケーも同じだ。


「例えばの話よ。私だってちょっと、いやだいぶキツいと思ってるんだから。でもこのいざこざを丸く収めるにはそれしか無いでしょ?」

「はぁ~。何だかすっごくめんどくさいですね。……いっそ首刎ねちゃいません?」

「笑亜!?」

「黒い! 黒いよ笑亜りん!」

「冗談ですよ」


 そう言って誤魔化すが目が怖い。たぶん3割くらい本気で思ってそうだ。何だか段々と誰かさんに似てきた気がする。

 するとここでアンジェリカが案を出した。


「いっその事ラミっちがやった事をバラす? ラミっちと居るとスローライフなんて出来ないよって。そうすれば『なんて酷い女だ!』ってなるかもよ?」

「それはアリね。不屈がラミを諦めてくれさえすれば万事解決だし」


 もうこの際、2人が別れようが縒りを戻そうがどっちでも良い。とにかく他人に迷惑が掛からないようにしなければ。その為なら多少ラミの事を悪く言っても仕方ないと思えた。


 宿舎まで戻ると、ちょうど那古に跨った三郎とばったりと出会った。出会ったのだが何故か彼の顔は赤く気持ちよさそうに笑っている。


「お、帰ってェ来たか~」


 アルケー達を見かけた三郎は身体を揺らしながら上機嫌に片手をゆらゆらと上げた。どっからどう見ても酔っ払いだ。


「貴方、私達に面倒事押し付けといて酒場でお酒飲んでたの!?」

「ちげぇよぉ。ゲンベのところに行ってただけで飲んでねえ。飲んでねえよ。……飲んだうちに入らねえ」

「飲んでるじゃない!」

「っていうか飲酒運転じゃないんですか!?」


 まさに笑亜の言う通りで現代日本なら乗馬状態は軽車両扱いだ。

 まあ鎌倉時代に飲酒運転の概念なんてないので、指摘されても「大丈夫大丈夫。落ちねえって」と落馬を心配されたと思って気持ちよさそうに笑っている。


「んでぇ? 何か進展あったか? 不屈とぉラミのアレ」

「気になるなら貴方も動きなさいよね!」

「だって今日の俺、仮病だもん」

「思いっ切り出掛けてんじゃない! あとその顔可愛くないから!」


 酔っぱらいおじさんがプン顔したって気持ち悪いだけだ。とっとと那古を厩舎に入れて来いと言って向かわせた。


 宿舎で全員集合したところでアルケー達はこれからどうするか作戦会議に入る。

 ラミから聞いた事を要約して説明し、アルケーなりの考えを再確認させた。


 まず第1にこの件をなるべく穏便に解決する事。当然、親衡殺害なんて認めない。

 第2に解決の方向性だが、これは不屈にラミを諦めさせる事に決めた。理由はこれが一番現状維持で手っ取り早く後腐れないし、その方がワンチャン魔王討伐に力を入れてくれるかもしれないからだ。

 第3にその方法だが、これは先ほどアンジェリカが提案したラミの狙いやその為に行なった無茶を全部不屈に暴露し、如何に自分が望むスローライフが彼女の望みと合ってないか教える。

 そうすればあの自分勝手な性格だ。思い通りに行かないと分かって諦めるに違いない。


「って訳だから三郎。親衡を殺すのは無しよ。無し。何とかして不屈にラミの事を諦めさせるの」


 最後にどさくさに紛れて親衡の首を狙っていた三郎に釘を刺した。

 が、三郎は何か考え込む様子を見せ――、


「そんなねんどくせぇ事せず、不屈の首刎ねちまった方が早くねえか」

「アンタも言うか!」


 師弟揃って、めんどくさいからと人の首を刎ねようとする碌でもない者達だった。

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